久しぶりにフィルムカメラだけで撮影に出かけようか。普段はミラーレスにズームレンズを装着し、たまにサブ機で単焦点のコンデジを携帯するくらい。気付けばフィルムカメラの出番が減っていました。デジタルカメラのみを鞄に詰めている視界の片隅で、いくつかのフィルムの小さな箱、筆者にしては整然と並べたフィルムカメラとオールドレンズ達……心なしか寂しそうに見えた早春のある日のことです。
使用する電池はCR2が2本、選んだフィルムは黄色と赤のツートンカラーが主張するKodakのColor Plus 36枚撮り。一度鞄に詰めたデジタルカメラとそっくり入れ替えて出かけます。
公園の入り口では円柱状の柱に様々な色合いのパンジーが植え付けられていました。枯れたように見える庭園内でそこだけが色彩に溢れています。ファインダーを覗きながら前に後ろに、右に左に。一番カラフルな部分が収まるようにしてシャッターをきります。
木漏れ日のなか樹々の足元で俯くように控えめに咲くのはクリスマスローズです。冬から早春の花の少ない時期に咲いて目を楽しませてくれるこの花は、日本では1990年以降から盛んに品種改良が行われ、今では様々な色や形の花が生まれています。ここではスタンダードな黒と白のクリスマスローズが咲いていました。
公園の入り口周辺を抜けた先、歩いている視線の向こうに白と赤の花が見えてきました。どうやらここ最近の暖かさで梅が一気に花開いたようです。背景に青空が写るように、現像した時のことを考えながらシャッターを切ります。
公園内はなかなか広く、花壇や池のあるエリア、梅や桜の木が多く植えられているエリアなどがあり、周囲を山が囲っています。桜の気配はなかったので山の上の方へ向かうことにしました。途中の小道で見かけた「No.23」のプレート。何を表した数字なのか分からない点と、引っ掛かっていればいいとばかりの傾き具合が気に入っています。
階段脇には樹皮がはがれて複雑な模様になっていた大樹。頭上を覆う葉を透かした光が細かな丸ボケとなり、お気に入りの1枚となりました。
登りきった先では伐採された丸太が綺麗に積まれていました。林の手入れの結果でしょうか、なかなか見かけない光景です。作業員の姿はなく、乾燥させているのか、この後は何かに利用するのか予想を立てながら撮影。しばらく気持ちのいい風やかすかに聴こえてくる野鳥の鳴き声に癒されながら、池のあるエリアに向かいます。
池もいくつかあるのですが、いつでものんびりとした風情の釣り人の姿や、三脚に望遠レンズを装着したカメラをのせて水鳥の姿を待つ人たちを見かけます。野鳥や水鳥に関しては想像がつくのですが、釣りに関しては一体何が釣れるのかいつも釣果が気になります。
釣り人のいない大きな池ではヒドリガモが泳いでいました。水面の反射と風とカモたちの立てるさざ波がフィルムの質感と相まって油絵の絵画のようになりました。
そのまま上を向いて撮影した空。雲の濃淡、空の青が想像以上に綺麗に表現されていました。
限られた撮影可能枚数の中、のんびり散策しながら気になる被写体を見つけ、ゆっくり絞りやピントを合わせる作業は心地よくも贅沢な時間の使い方のように感じます。これからはフィルムカメラの持ち出し回数を増やそうと決意した午後でした。
▼▼使用した機材はコチラ▼▼
▼▼関連機材はコチラ▼▼