【SONY】母艦機日記 Kern Macro Switar 50mm F1.9
これはSONY α7RⅢを軽量性だとかAFだとかを無視して古いレンズの母艦機として運用している筆者の日記です。
母艦機とは本来燃料や航空機などを輸送する船のことを指す言葉ですが、カメラボディに対してこの言葉を使う場合は様々なレンズを付けるための「レンズを使うためのボディ」という少々ややこしい意味を持ちます。
フランジバックの問題でレフ機ではアダプターがなく楽しめなかったあのレンズもこのレンズも、ミラーレスならすべて楽しめるというわけです。
大昔の聞いたことがないレンズから一度は耳にしたことがあるレンズまで、α7RⅢに付けて楽しんでいきたいと思います。
今回使用したのはKern Macro Switar。
ここ数年で有名になり、中古市場での価格が高騰しているレンズの代表格と言っても過言ではない一本です。
当時アポレンズといえば望遠だったところ、50mmという標準域で初めてアポクロマート設計を施されたシネレンズです。後年には今回使用したマクロ機能を追加したマクロスイターもラインナップされ、当時としては超高級ブランドだったようです。
マウントはアルパ。聞いたことがない方も多いのではないでしょうか。
アルパは調べれば調べるほど面白いメーカーで、初期にはレフレックス機構とレンジファインダー機構を同時搭載したアルパレフレックスというボディを製造していました。その後一時的にレフレックスを排したレンジファインダー機を作ったかと思えば、何故か中盤からはレフ機の方面へ舵を切るというなんとも面白いブランドです。
当店でもアルパのボディは年に数回見る程度で、快調に動く個体は今では非常に珍しい逸品です。
さて、そんなアルパマウントで製作された銘レンズ、スイターシリーズですがいくつかのバリエーションがあります。
マクロが付かない無印のスイター、マクロスイターの中でも何度かのマイナーチェンジを繰り返したマクロスイターF1.8やF1.9、長野に本社を置くチノン社がOEMしたマクロスイターCHINON等があります。
今回使用したのは比較的後期に製作されたMacro Switar 50mm F1.9。当時唯一だったアポシネマクロレンズはどのような写りを見せてくれるのでしょうか。
前評判でなだらかなボケと美しい描写と聞いていたので期待しつつ一枚。
フリンジが出ない・・・?
いや、かなり厳しく見れば発生はしているものの拡大してようやく分かる程度です。
開放逆光でここまでの光学性能、おそるべし。
サムネイルにも使用した一枚。
美しい前ボケ、ようやく顔を出してくれたフリンジ、ピント部のシャープネスの高さが調和しこの日最も気に入った一枚になりました。
α7RⅢは約4000万画素と比較的高画素なのですがレンズ側にまだ余裕が見られます。
レンズ内にクモリ等は無いのですが、斜めからの日差しにはめっぽう弱いらしく盛大にハレーションが出ました。
仕方ないのでハレ切りをしつつもう一枚。中央部に若干のコントラストの低下が見られますが許容範囲。
レンズフードももう単体では数万円単位で取引されているプレミア物、ご購入を検討される際はレンズフード付きの個体をおすすめいたします。
森の中のカフェへ。
F1.9と極端に明るいレンズというわけではありませんが、それでもこの立体感はクセになる気持ちもわかります。
テーブルフォトが撮れるオールド50mmレンズというのもなかなか珍しいと思いつつ一枚。発色の美しさに目を引かれます。
近年では動画需要の増加に伴いバリアングルの機種も増えてきたようですが、個人的には視点を変えずにさっとアングルを変えられるチルト式の方が使いやすく感じます。
最後は派手にフリンジを出してくれた1枚。
全体を通して高コントラスト・高解像力・美しいボケと現代レンズに匹敵するような描写を見せてくれた本レンズですが、周辺部に残る収差は時代を物語り、このレンズが当時としてはずば抜けた超高性能だったことがうかがい知れます。
価格の高騰が止まらぬ本レンズ、見つけたら取りあえず買っておいて損はない一本です。