Tessar(テッサー)はパウル・ルドルフが考案し、Carl Zeissから発売された3群4枚のレンズです。非常にコンパクトなレンズでありながらとてもよく写るので「鷹の目」の愛称で呼ばれる人気者。その優秀なレンズ構成は後に様々なレンズに使われたため、現代では数え切れないほどたくさんの「テッサー型」を楽しむことができます。そう、何も意識していなくても“気がつけば”テッサー(型)レンズを使っていた、ということもあり得るのです。
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始めにご紹介するのは、ヤシカコンタックス用レンズの「Tessar 45mm F2.8」です。
第一回なのでせめてCarl Zeiss製の当時のレンズを使った方が良いのだろうと思っていましたが、残念ながらまだ持っていないのでご容赦ください。さて、このレンズは言わずとも知れた名玉。テッサーの特徴であるコンパクトな鏡胴はご覧の通り、写りに関してもピント面はシャープで背景のボケ感は嫌なクセを感じさせません。
今回ボディはCanon EOS 5Dを選択しました。
SONY αボディも持っているのですが、「Tessar 45mm F2.8」はヤシカコンタックス用レンズ、つまり一眼レフ用のレンズですのでミラーレスのボディで使用する為には、それ相応の厚みがあるマウントアダプターを挟まなくてはなりません。せっかくレンズが小型で「こんなにコンパクトなのだ」とお伝えしたいのにその見た目では本末転倒なので、ボディも一眼レフを選んだと言う訳です。あとで調べてみるとCanon EFマウントとヤシカコンタックスマウントのフランジバック差は僅かに1.5mm。マウントアダプターは最近人気の道具ではありますが、本来想定はされていなかった使用方法でありますので、使用できない、または使用にリスクを伴う組み合わせが多く存在している事はくれぐれもご承知おきください。例えばメーカーが純正で販売しているような組み合わせを除いて、ほぼ自己責任行っていただく使用方法となります。
ちなみにアダプターを使って専用外のカメラに装着する場合、センサーとレンズの距離自体は変えられないため全体のサイズ感はそんなに変わりません。ミラーレスカメラのレンズマウントはミラーが無い分レフ機よりもボディ側に引っ込んでいるというだけの違いです。念のため。
前置きが長くなりました。
テスト撮影として家の中から庭を撮ってみました。MFでのピント合わせは想像していたよりもずっと苦労しましたがその結果には期待が持てます。思わず「お?」と声が漏れるほど合焦面はシャープというか滑らかで、視線を逸らせば少し輪郭の残る綺麗なボケ。期待していなかったわけじゃないんです、本当に。ただ、この組み合わせは未知数であったこととシビアなフォーカスで、ちょっと臆病になっていただけ。このレンズに及び腰は似合いません。
玄関を出て確信に変わる期待感。
海へ行きます。
海と言えば和歌山の浜だった私にとって、小田原はかなり表情が違います。海岸線と町が近く、磯のにおいは少なめな印象。それはいつ行っても例に漏れず強気な海風が空気を掻き混ぜているからかもしれません。今日はよく晴れた空に一段と強い風。沖の方まで白く波立っている様子が見て取れ、水平線ははっきりと空と海を隔てています。ここまで深い青の海を見たのは久しぶりな気がしました。
このレンズの得意分野は、無限遠に届かない10数メートルくらいを写すことだと思っています。普段は何か特定のレンズに対して「これが得意だな」とひとつひとつ認識しているわけではないのですが、「Tessar 45mm F2.8」に関してはこう思わずにいられないような迫力があります。ジャキっと太い線で描くでも、細い線で裂くように表現するでもないのですが、目で見る以上に“そこに在る”感を感じ取っていただけましたら嬉しいです。
梅雨入り直前の、珍しい6月の晴れ間でした。
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私はコンパクトなサイズのレンズに目が無いため、今回のように別にボディが小さいわけでもないのについ使ってしまいます。この性分だからこそ“気がつけば”テッサーを手に取っているのかもしれません。皆さまもぜひ、気になるレンズや小さいレンズをみかけましたら「これはテッサーかもしれない…」と調べてみてください。写りは(大抵)最高のはずです。
思い付きで始めてみました「気が付けば Tessar」第一回はこれくらいでおしまい。
梅雨入りした関東のモノクロ写真でお別れです。
それではまた。