【Voigtlander】千問店の処方箋 Mボディで90mmを始める
仕事の日もお休みの日も、休むことなくライカを触り続けて数年。膨大な種類を誇る「Mマウント」レンズ群にもようやく慣れ、やっと全体の半分くらいは見渡せるようになってきました。日々自分の求めているレンズを探してみたり、お客様に沿った機材選びをご提案したり、目的と条件に応じて自ずと“これだ”というレンズが見つけられるようになりつつあります。
こんな毎日を過ごす私からレンズのご提案です。
本日のテーマは「Mボディで90mmを始める」としてお送りします。
さて今回ご紹介するのは「Voigtlander APO-SKOPAR 90mm F2.8 VM」です。
初めての90mmを検討する段階において、このレンズの“ちょうどいい感”は間違いなく検討の価値あり。
純正レンズよりお値段は低く、さらに軽い、(ちょっと)寄れる、ちゃんと写る。
ライカ製レンズでないといけないという気持ちが無い限り、そして90mmが欲しいという思いが強いほど、きっとこのレンズは最適解。
しかし肝心の写りは見てみないと分からないこと。ぜひご判断いただければと思います。
※今回の写真は全て開放F2.8で撮影しています
空を覆う雲のおかげで人間にとっては涼しさが大助かり。カメラに関しても絞らなくていいので大助かり。
8月の空もたまにはこんなもんでいいなと思う8月初旬、べた塗りの雲にも表情が見え隠れするような気がします。
咄嗟で写したので少しピントは外していますが、90mmで捉える10メートル前後の被写体が心地よく放つ存在感。
レンズ鏡胴は軽く、ヘリコイドトルクもすーっと滑らかで軽やか、そのお陰で撮れる写真はこのレンズの本質的な価値と言ってもいいはずです。
首から提げたカメラを衝動的に持ち上げることができるか、そのハードルを下げることに一役買っています。
最短の写真です。
今回は全て開放で撮影していますが、ここまで写れば必ずしも写りを気にして絞る必要はなし。
ちなみに最短焦点距離は0.9m。Leicaの現行90mmであるアポズミクロンとズミルックスは最短1mで、サイズ感の近いテレエルマリートも1m。
たった10cmと思われるかもしれませんが、この10cmの意味は想像以上に大きく、個人的には“近い”と“遠い”のボーダーはここで隔たれています。
重く固い表現も、苦手と言うには苦しいほど表現出来ているでしょう。
2枚目の様に遠近感の出る切り取り方であれば絞り込みたくもなりますが、開放の被写界深度を見ていただきたいので敢えて開放で。
ほぼ無限遠で撮影し、目立ちすぎない前ボケで全体の印象が引き締まった感じがします。
帰り際に不忍池の蓮を見て帰路へ。
もう日暮れに近かったので開花した状態は期待していませんでしたが、意外とそれらしいものを見ることができ満足です。
全く想定していなかったにもかかわらず、運良く持っていた90mmでちょうどよく写せたのではないかと思っています。
「ライカの90mmってちょっと重いし、そんなに使わないかもしれないし、ちゃんと写すものを買うには勇気がいるお値段だな…」と感じている貴方。
純正をご検討いただいているのであればアポスコパーは幾分かお手頃なはず。ぜひ90mmの一本目にいかがでしょうか。
そしてステップアップする先にオールドレンズや、アポズミクロン、ズミルックスがきっと待ち受けています。
思っていたより意外と広くて、それでいて意外と寄れる。
まずは「気軽に楽しい90mm」をぜひ。