【Premium Collection】Leica Xenon / Summarit L50mm F1.5 Taylor-Hobson
今回紹介するのはライカ(ライツ)がシュナイダーから供給を受けていた『Xenon L50mm F1.5』
後に進化・発展した『Summarit L50mm F1.5』
その、テーラーホブソン刻印入りと呼ばれるものたちです。
ちなみに当時ライバルのcontaxにはゾナー50mm F1.5というハイスピードレンズがあり、これに対抗してライカのラインナップに追加されたとされています。
クセノンのベースにあるのは、テーラーホブソンのH・W・リーという設計者が英国と米国で特許を取得しているダブルガウスタイプのレンズ設計です。
テーラーホブソンはシュナイダーに対して、自社設計のレンズを製造・販売する許可を出しているため、その設計を利用しているレンズでもシュナイダー独自のレンズ名称であるクセノンの名が付けられています。
その特許の関係で、ライカ用のクセノンにおいても、イギリス・アメリカ輸出用のレンズには特許番号とテーラーホブソンの社名が刻印された個体が存在しています。
刻印入りのレンズはその希少さから、現在では通常モデルの2倍以上の価格で取引されることもあります。
Taylor-Hobson(テーラーホブソン)とは?
1886年に光学機器メーカーとして創業し、現在は精密測定器メーカーとして世界をリードするイギリスの企業です。
【来歴】
・1886年 企業家ウィリアム・テーラーが彼の弟とともにレスターで『T.S. and W. Taylor』を興す
・1887年 ホブソンが加わり『Taylor,Taylor&Hobson』に
・1893年 クック&サンのデニス・テイラーが設計したトリプレットレンズを製造
・1998年 レンズ製造部門がCooke Opticsとして独立、テーラーホブソンは精密測定器メーカーに
特にザイデルの5収差(球面収差・コマ収差・非点収差・象面湾曲・歪曲収差)を完璧とは言えないものの、上手く補正することができたトリプレットレンズは「クックレンズ」と呼ばれ大きな発明となりました。
「Taylor-Hobson U.S.Pat.2019985」・「British Patent 373950 and U.S.Patent 2019985」
上の2本のような刻印が施されています。
「Pat・Patent」が特許を意味し、後に続く番号は特許番号となっています。
レンズ名に続く番号がシリアルナンバーですのでご注意ください。
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刻印が銘板に入っている『Xenon L50mm F1.5』
クセノン自体は1936年に発売され、製造本数は全体で約6,000本ほどとされています。
そのうち何本に特許番号が刻印されていたのか…。今では知る由もありませんが、希少であることは間違いありません。
ちなみに『Xenon』を生み出したレンズ設計者アルブレヒト・ウィルヘルム・トロニエが発明した代表作は以下の通り。
シュナイダー社:クセノン・アンギュロン
フォクトレンダー社:アポランター・ウルトロン・ノクトン等
その後フォクトレンダーがツァイス・イコンに合併されたこともありカールツァイスに移籍。
現在も愛される様々なレンズの生みの親である彼の最初期を飾る1本が、この『Xenon』なのです。
刻印が鏡筒に入っている『Summarit L50m F1.5』
1949年に発売されたズマリットですが、当時も米国では特許が残っていた為、初期の個体には米国の特許番号が刻印されています。(英国では期限が切れていたため、刻印が不要だったそう。)
レンズ名称に関してはクセノンではなく独自の名称を使えるようになっていたようで、ズマリットへ変更されています。
ズマリットはぐるぐると回るように写る背景ボケが特徴、美しい虹色のゴーストが出ることでも有名ですが、クセノンをベースにコーティングを施すことで大幅に画質を向上させています。
後にMマウント用も製造・販売され、オールドレンズの代名詞として今尚愛される逸品です。
コーディングと言えば、クセノン発売当時のライツはコーティング自体がまだ弱く、日常のクリーニングでも剥がれてしまうことを危惧しレンズ前面のコーティングはしない主義でした。
ズマリットに施されているのは、戦中にドイツで開発された新しいコーティング技術によるもの。
ようやくライツのお眼鏡にかなうコーティングが生み出されたわけです。
その後戦前の全てのレンズに関しても同様にコーティングを施すサービスが始まることとなりました。
こういったユーザーに寄り添う対応をしていたため、カメラにしてもレンズにしても、発売当時と異なる仕様の個体が幾らか存在しているのもライカの面白いところです。
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絞り羽根がぎこちなくどこか愛らしい六角形を描く『Xenon L50mm F1.5』
絞った時に羽根が美しい円形を描く『Summarit L50m F1.5』
ボケ味の違いが大きく、選ぶうえでポイントとなるはずです。
F値を4まで絞ると違いがわかりやすく、開放だと大きな違いは見られませんでした。
どちらで撮影したか当てるクイズがあればここを参考にしてみてください。
絞り値の周りにもデザインの違いがあります。
・『Xenon L50mm F1.5』
小さな三角形(▲)が絞りリングに入り込むように配置されています。
写真にあるのはテーラーホブソン刻印入りですが、U.S.Pat.(アメリカ特許)の刻印だけが入ったタイプのみ絞り値の間に丸(●)があるなど細部に微妙な違いがあるようです。
ちなみにこの●は初期のレンズに見られ、アグファカラープロセスの為に使うものです。クセノンが出回ったころには廃れていたため、その後のレンズでは省かれています。
・『Summarit L50mm F1.5』
前期は小さな三角形(▲)のマーク、後期は小さな丸(●)のマークが。
テーラーホブソン刻印入りのものだけが少し大きな三角形(▲)となっています。
絞り値を撮影しているとこんな違いにも気がつきました。
テーラーホブソン刻印のない『Xenon L50mm F1.5 後期』のみ、ピントリングのラインが3本あります。
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細かく違いを見ていくと6種類のズマリット・クセノン、3種類のテーラーホブソン刻印入りに分けることができました。ズマリットの後期型にはカナダ製もありますが、当店でも見かける機会はほとんどなく本記事作成の際も見当たりませんでした。
カナダ製はかなりのレア物ですので、お手元にズマリットがある方は是非ご確認ください。
これだけバリエーションが豊富で違いが僅かなのはライカならでは。
使う楽しさは勿論、見る楽しさ・集める(?)楽しさも備えています。
好みのデザインに好みの写り、もしそんな1本に出会うことができたら、もうその時が買い時。
お気に入りの1本を探してみてください。
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