【Premium Collection】Leica A型 新・旧エルマー
今回ご紹介するのはLeica A型 エルマー付き。
呼び方は様々あり、海外ではLeica I Model Aなどと呼ばれています。
距離計は無く目測、シャッタースピードはZ・1/20~1/500(時期により1/25~)、レンズは固定式で交換不可という非常にシンプルな構成です。
Zは今で言うB(バルブ)です。
しかし、その潔さが多くのファンを魅了し、特に旧エルマーについては「ライカの終着駅」とも言われるモデルです。
そんなA型ですが、中でもいくつかのバリエーションがあることはご存知でしょうか。
まず付いているレンズは5種類で、
アナスチグマット、エルマックス、新・旧エルマー、ヘクトールが存在しています。
今回はA型の中で最も製造台数が多いエルマーのモデルをご紹介します。
まず、エルマーは先代に当たるエルマックスの貼り合わせガラスの製造コストが非常に高かったため、ちょうどゲルツ社から発売された高性能な新種ガラスを使い新たに設計され、1925年頃に誕生しました。
エルマックスから1枚ガラスを減らし3群4枚になり、テッサーに似ましたが、マックス・べレクが独自設計したものです。
そんなエルマーですが、途中でガラスの供給元が変わっています。それを境に旧エルマー、新エルマーとが分けられています。
旧エルマーは先述の通りゲルツ社からガラスの供給を受けていましたが、ゲルツ社が当時から数社と合併しツァイス社となったため供給を受けられなくなってしまいました。
そこで、ショット社よりガラスの供給を受けると同時に若干の構成変更を行いました。
これが新エルマーと呼ばれる物になります。
旧エルマーの性能はずば抜けてよかったようで、後年の赤エルマーと比べても遜色がなかったという記録が残っています。
そんな高性能で、更に生産台数も少ないプレミアムな逸品というわけです。
また、一部のエルマーは通常1mのところ、0.5mまで寄れるものがあります。
これは一般に近接エルマーと呼ばれています。
さて、レンズにもバリエーションがあるA型エルマーですが、ボディ側にも様々な違いがあります。
写真上が40000台、1930年に製造された近接の新エルマー付き。写真下が4000台、1926/27年に製造された旧エルマー付きです。
かなり近しい年代の新旧ですが、巻き上げ・巻き戻しノブに注目すると、下の旧エルマーにのみ回転方向の矢印に羽根がついています。
これが「矢羽根」というもので、初期のA型にしか見られない物です。
中でもこちらの巻き上げ、巻き戻し両方に矢羽根がついた個体は非常に希少です。
また、シャッターボタンには3種類あります。
本日ご紹介している、写真下の旧エルマーについているマッシュルーム型、写真上の新エルマーのカラー型と、
マッシュルーム型の中央に凹みを設けたエクボ型というものがあります。
これらの変化は当時のレリーズに対応するためで、バルブ(Z)で撮影するときにマッシュルーム型では押し棒が滑ってしまうため、山の中央に凹みがあるエクボ型に改良されました。
そしてその後のバルナック型にも長く採用されたカラー型と呼ばれるタイプになります。
シャッターボタンの周囲にある円筒型のカラーを外すと現れるネジにレリーズをねじ込む事で安定して仕様することができました。
余談ではありますが、マッシュルーム型とエクボ型の世代では巻き戻し時にシャッターボタンを押し続ける必要があります。
横から見ると違いは一目瞭然です。
また、巻き上げノブが旧エルマーの方が低いのが見て取れます。
これは旧来低く製造していましたが、手の大きい撮影者から使いにくいとの意見があり少し高めに改良されたそうです。
ローレットに関しても旧エルマーが平面的なのに対し、新エルマーではより溝が深くエッジが効いています。
シャッタースピードダイアルにもその違いが表れています。
逆側のフィルム巻き取りノブはギザの目が明らかに異なります。
写真左の新エルマーのものはよく見かける綾目状のもの。M3でも同じような形状です。
一方で写真右の旧エルマーは目が真っ直ぐになっています。
これも恐らくは巻き戻しを行いやすく滑り止めの効果を高めたのでしょう。
ネジの有無も確認いただけるかと思います。
底蓋にも違いがあります。
写真上がM型にも共通する一般的なタイプ。対して下はカンヌキ(閂)型と呼ばれるタイプです。
矢羽根と並び、旧エルマー探しの醍醐味といえる象徴的なパーツでしょう。
良く見るとネジの数も異なっています。
左:近接の新エルマー、右:旧エルマー
先程簡単に説明した近接エルマーは通常のエルマーよりもヘリコイドの繰り出し量が多く、従来の無限遠ストッパーピン5.4mmではストッパーを通り過ぎてしまうため8mmのストッパーピンが採用されています。
今までの写真を見返してみると…確かに言われてみれば少し長いです。
レンズ銘板の文字フォントも少し異なっているようで、左の旧エルマーはどこか手書きのような丸みがあり愛嬌があります。
本日紹介した特徴はほんの一例でしかありません。
バルナックは特にですが、発売後にライカ自身の手で純正改造・アップグレードが施されている個体も多く、本当の純正の姿というのが分かりにくいモデルでもあります。
皆様のお手元にある個体はいかがでしょう。間違い探しのようなA型の旅はまだまだ続きます。