ライカの35mmフルサイズセンサー搭載ミラーレスカメラ SL2。
高精細4730万画素CMOSセンサー、高い精度を誇るAF機構や強力な5軸ボディ内手ブレ補正機構を備えた、伝統あるM型ライカと双璧をなすSLシリーズの主力機です。
初代SL(Typ601)が発売されたのが2015年11月。それからまだ8年ほどですが、標準域50mmの画角をカバーするレンズとして「ズミルックス SL50mm F1.4 ASPH.」「アポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.」「ズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.」という3本の単焦点レンズと「バリオ・エルマリート SL24-90mm F2.8-4.0 ASPH.」「バリオ・エルマリート SL24-70mm F2.8 ASPH.」の2本のズームレンズがラインナップされるという充実ぶり。ライカの力の入れようがうかがい知れます。
それぞれ撮影の目的・用途に合わせて選ぶのがベストなわけですが、今までSLシリーズをお使いの方やご購入を検討されている方からよく聞かれるのが「とにかくレンズが大きくて重い…」。
特に高齢のお客様からは「写りが良いのは分かっているのだけど、持ち歩くのはちょっとしんどい…」という声が。
実際、SL(Typ601)発売当初からラインナップされ、SL2の登場でその評価が爆上がりした「バリオ・エルマリート SL24-90mm F2.8-4.0 ASPH.」が質量 約1140g、大口径を誇り他にはないボケ味が魅力の「ズミルックス SL50mm F1.4 ASPH.」が約1065g。
SL2ボディが約835g(バッテリー含まず)ですから、合わせたら…
若い頃はアルミバッグにカメラ2台・レンズ数本入れて闊歩していたのですが、最近は特に非力になったなぁと…
普段はM型ライカを首から提げて街を練り歩いていますが、やはりSL2を手にするのはちょっと躊躇いがありました。「写りが良いのは分かっているのだけど…」
そんな私が今回手にしたのは「ズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.」。2023年3月に発売された上記ラインナップの中では一番新しいレンズです。
驚くべきは、その重さ。レンズフード無しだと約402g、「ズミルックス SL50mm F1.4 ASPH.」の半分より更に100g以上軽くなります。
単焦点SL50mmの3本。左から「ズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.」約402g、「アポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.」約740g、「ズミルックス SL50mm F1.4 ASPH.」約1065g、ズミクロンのコンパクトさが際立ちます。
SL2ボディに装着してもフード込みで1300g弱、これなら首から提げていても苦にはなりません。
また、ボディに大型のグリップを備えているのでホールドしやすく、数値以上に軽量に感じます。
「SL2ってこんな軽かったんだぁ…」と、今まで口にしたことのない感想が漏れてしまうほどです。
今まで食わず嫌いだった私に、俄然撮影欲が湧きあがってきました。
私にとって50mmというレンズは、自然の風景を撮影するより街中の情景を切り取るのに適した画角。
どうせなら普段撮影に行かないような街に繰り出してみようと向かったのは「代官山」。おしゃれな街の代名詞とも言える所です。
意気揚々と東急東横線「代官山駅」に降り立ち、改札を出た途端に感じたのは強烈な違和感… 「やっぱ、違ったかなぁ…」
でも、ここまで来たら後戻りも出来ません。首から提げた今回の相棒、ライカ SL2 とズミクロン SL50mmを唯一の拠りどころとして、いざ撮影に。
午後2時過ぎ、冬の強い斜陽に照らされながらも白飛びせずに写ってくれました。バックの白壁のグラデ―ションも絶妙です。
ちょうど私の目線の高さにきた横枠に、つい拒絶されているように感じてしまうのは意識のしすぎか…
さずが代官山、ハイセンス(?)な感じの店とそれに見合った人たちが行き交っています。
せめて学生時代に服飾を学んでいた妻をお伴に連れてくるべきだったか、心細さが募ります。
特に目的地があるわけでもなく、最初にざっくり地図を見ただけだったので、すぐに迷子になりました。
とりあえず大きな通りへ出て、気になる方へ歩みを進めます。
路駐の自転車もビアンキか、なんて変なところで感心したり… いえ、やっぱりいけません。
強い日差しが建物の壁に街路樹の影をくっきりと映し出していました。
ドアのガラス越しですが、花一つ一つの輪郭も鮮鋭に描き出してくれました。絞りF3.2と1段半ほど絞っていますが、ボケ味は自然な感じに。
こちらもショーウィンドウのガラス越し。露出補正はかけていませんが、実際よりアンダー目に写りました。そのぶん落ち着いたトーンになりました。
革の朽ち具合や南天の実一つ一つに入ったハイライトの具合などを見ると、質感描写にすぐれたレンズであることが伺ええます。
高解像のアポズミクロン、大きくボケるズミルックスも良いですが、身構えず気軽に撮ったスナップがこれだけの描写をしてくれるのですから、ズミクロンも十二分に選択肢に入ります。
あちこちにある雑貨屋さんなどは、いかにも― な感じ。
折角ならおしゃれなカフェで一休み、なんてことも考えましたが、そもそもどれがカフェなのか、開いているのかもよく分からん…
あてどなく彷徨うことになりました。
ひと気の少ないような道にも様々なショップがありましたが、何のお店だか分からず、ただ前を通り過ぎるばかり…
画面右上の店名のところが鏡のようになっていました。映り込みをマニュアルフォーカスで。
絞り開放にしたら、こんな具合になりました。
流れているわけではないのですが、細かい葉っぱがボケたのでオールドライカのような描写に。
陽もだいぶ傾いてきました。
この日は朝から北風が吹き、日差しのわりに体感温度は低い一日。
撮影の合間はカメラを首から提げたまま、手はコートのポケットに。それでもさほど首に負担を感じませんでした。
手を外していることで「LEICA」のロゴが強調され、すれ違う人の視線を感じることに。なんかこそばゆい…
冷たい風がだんだん強くなるなか、でも撮影はやめられず… 気がつくとSL2とズミクロンの組み合わせにすっかり魅了されていました。
M型ライカを始める時に、まずズミクロンからスタートされた方も多いと思います。かく言う私もその一人。
その確かな描写力は、ライカを知るうえで外せない存在です。
「ズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.」も、M型ライカにおけるズミクロンと同じ位置づけにあります。
何故かSLシリーズでは一番後発になってしまいましたが、SL2・SL2-Sの良さをもっと構えずに体感したいという時に、ズミクロン SL50mmは最適のチョイスと言えます。