【Leica】ズミルックスM 50mm F1.4 後期型で掬い上げる光
ライカ社のレンズの中では一般的にF1.4の明るさを持つものに与えられている、ズミルックス(Summilux)という名称。
その名称についてはラテン語でそれぞれSumma「最高のもの」Lux「光」が由来だとされています。
各社が開放F値の小さないわゆるハイスピードレンズをリリースする中、ズミルックスM 50mm F1.4は前身であるズマリット(Summarit)から光学系を改良したレンズとして1959年に生まれます。
その優れた光学性能と優美なデザインで写真家たちの心を掴み、今日でもなお称賛されています。
今回はその中でも「ズミルックスM 50mm F1.4 後期型」と呼ばれ、1961年以降に改良された第2世代に当たるレンズをLeica M11に合わせて撮影してきました。
初代よりもフレアを抑え、コントラストが向上したとされていますが、昨今のレンズの様にスッキリシャッキリとした描写ではなく、絞りを開ければフォーカスを合わせたところもヴェールを纏った様に滲む、優しい描写が特徴となっています。
今回の撮影においては全てDNG形式で行っていますが、ホワイトバランスはカメラ任せとなっています。
またLightroomに取り込み後、RAW現像を行っていますがやや暖色に寄せたカラープリセットを適用したところ、なかなかマッチしてくれた様に感じます。
シャープネスについては特に加えずそのままとしておりますので、描写の柔らかさについては素の写りをお楽しみください。
初代からコントラストが向上しているとはいえ、はっきりと描き分けてしまうのではなくちゃんと階調を残しています。
ボディ側のセンサー特性もあるとは思うのですが、ハイライトもシャドウもスコンと抜けてしまう事が無く、心地よい描写です。
今回はカラーでの撮影となっていますが、モノクロで真価を発揮しそうなコントラスト表現です。
普段は現代レンズばかり使っている為、60年以上前のレンズともなればあれやこれやと状況を整えながら使ってあげないといけないかなと思っていました。
しかしながらそんな事はなく、杞憂であった事は言うまでもありません。
少し絞って中遠距離でピントを置いてみましたが、さすがはズミルックス。
ダブルガウスに近いレンズ構成を取っているからか、アウトフォーカス部も急速にボケて拡散してしまう事がなく、量感のあるボケが画にまとまりを生み出してくれているように感じます。
斜陽によって伸びる光と影。良い光です。いただきましょう。
沈みゆくシャドウを掬うように露出を決めて一枚。パイプにまとわりつく影の滲み方が印象的です。
ついつい陰影を探してしまう筆者です。高架下に差し込む光でもう一枚。
年代を考えると光が回っている部分はもっと暴れそうなものですが、そういった気配も無くとても上品な印象ですし、改めて見てみると前ボケが非常にスムースなレンズだなと感じます。
高架の緑と、車高制限のための支柱の黄色のツートーンが印象的。
決定的瞬間でもなんでもないシーンではありますが、こういった日常の中にある対比を探してしまいます。
こちらはF4~5.6位まで絞った状態だったとは思いますが、ここまで絞るとさながら現代レンズのような写りになってきます。
画面左上に向かい青と陽、右下に黄と影を置いてみました。そこに満ちているのは車ではなく、影でしょうか。
古いズミルックス M50mm F1.4の中でも比較的手に入りやすい第2世代。
数枚の写真で綴ってみましたがいかがでしたでしょうか。強烈なクセは特になく、それでいて取り回しやすい50mmという画角ですが、
光の回り方によってはフレアを纏い、絵画的な画作りが楽しめます。
オールドレンズらしさを味わえつつも、使いづらい段階へ踏み込んでしまう事がなく、実に良い塩梅です。。
初めての1本にも、巡り巡って帰ってくる1本にもオススメのレンズ。ぜひ一度手に取ってみて下さい。