【CarlZeiss】オールドレンズ選びの伏兵 Carl Zeiss C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM
現代のレンズでは表現され難い風合いを求めて、日夜我々レンズマニアの探索が繰り返されるオールドレンズの沼地。種類ごとの差はおろか、長い時間を経て獲得した同種異個体の差までもが検討の指針に含まれるため、こだわり始めれば候補は星の数。もはやその中にゴールがあるのかすら分からない沼、もとい霧の中をさまようことにもなりかねません。
そこでひとつ差し伸べられるのが「Carl Zeiss C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM」の存在。
2006年にCOSINAから発売されたCarl Zeiss銘のこのZMレンズが掲げる“C”の称号はコンタックスレンジファインダーカメラ用のクラシックレンズをZMマウントとして新たに設計したシリーズ。すなわち写りはクラシック、でありながら新品で買える安心感も備えた救世主なのです。
クラシックとは言えどもピントはシャープ。外周は緩く、最短は0.9m。フォーカスシフトも残されたレンズですが使っていて不便と言えるほど強すぎるものではありません。むしろピントの解け始めが心地よい描写のこのレンズ、ほんの少し意図しないボケがあったとしてもそれが気付きになり得るくらいの余裕を持って臨む選択なのです。
またこのレンズは中距離が良いレンズでもあります。現代レンズ的なピントの立ち上がりとじわりとした癖を伴って広がる前ボケ、後ボケが目で見ている景色よりもはるかに非現実感を増した絵に仕上げてくれるのです。この特徴は名玉とされたオールドレンズに多いもの。より強い効果としてはズミクロン50mmの第一世代でも近い傾向の味わいを感じられます。
遠景もなんのその、さすが現行機。
本来であれば絞って解像感を上げたうえで撮るべきシチュエーションですが、今回は意地悪にも開放で挑戦させました。全体的にガチっと固い描写とはいきませんが、どこか絵画的な優しさまたは余裕ともいうべき雰囲気を残したまま嫌味なく仕上げてくれました。
開放で味わいを、絞って描写を。どちらも楽しむことができるのがクラシックな写りを持つレンズの魅力。
今回このレンズの撮影に用いたボディはLeica M11-P。
6千万画素の余裕をもとにしっかり見せるところは強く、反対に緩んだ描写の部分は優しく表現。M10シリーズまでのボディで強く感じた色の個性はM11で少し落ち着きましたが、この色合いとも相性は抜群。
ちなみに最短焦点距離0.9mは片手で持ったカメラでもう一方の手が写せないくらいの距離。正直50mmでこの距離だと少し寄り足りない事があるかもしれません。そんな時はM11のデジタルズーム。あとちょっとを欲しいがままに。
・・・
今まさにオールドレンズの霧の中をさまよっている私からすれば棚から牡丹餅...と言いたいところですが実際にはさらに検討候補が増えたに過ぎないのかもしれません。もし「クラシックな写りが欲しい」「でも個体差の判別が難しい。新品の安心感が欲しい」というご要望の方がおられましたら是非ともご検討ください。意外とこれがアリなんです。