スポーツ会場やイベント会場でスタッフが使用しているのを見かける望遠レンズ。
大きく太いその容姿から時には「バズーカ」と呼ばれることもあります。
店頭でご案内していても「プロの人が使うんでしょ?」といったお声を頂戴することもあります。
いいえ、そんなことはありません。
今では望遠レンズもバラエティが豊富で、ズームレンズから単焦点レンズ、小さいものから大きいものまで様々なレンズが登場しております。
ぜひ、望遠レンズを手にして、まだ見ぬ世界を覗いてみていただければと思います。
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8月30日に発売された『EOS R5 Mark II』。新開発のエンジンシステム「Accelerated Capture」・AFシステム「Dual Pixel Intelligent AF」を搭載し、あらゆるケースにおいて飛躍的に捕捉能力が向上していると思われます。というのも、筆者自身まだ実機に触れたこともお目にかかったこともないのです。そんな期待の1台が登場したなかで難しい立場に置かれた”初代”。全てのカメラがいつかは直面する”世代交代”。さすがにまだ早いだろうと思いますが当店の中古在庫量を見れば一目瞭然。既に”初代”が増加の一歩をたどっているのです。ということで、今回紹介する『Canon EF400mm F2.8L IS III USM』のお供には『Canon EOS R5』。まだまだ現役、忘れてもらっちゃ困ります。
先代から約1キロ、25%の大幅な軽量化に成功しながら画質・レスポンスの両面において大幅な進化を遂げた『Canon EF400mm F2.8L IS III USM』。II型の使用経験もありますが各段に取り回しが良くなり稼働率も高くなった印象です。手持ちでの撮影機会も増え、咄嗟のシャッターチャンスにもより対応できるようになりました。すでにミラーレスカメラへの一本化を表明しているキヤノンにおいて、新型の発売が十中八九ないことを考えるとEFマウント最後のヨンニッパ(焦点距離400ミリ・解放F値2.8)ということになりそうです。『EOS R5』には『EF EOS R』を併用してマウント。アダプターを介していることを感じさせない快適な操作性、高速かつ正確なオートフォーカス、高画素・高画質・8Kでの動画記録、発売当時に人々に与えた大きな衝撃は大きく、今回同様多数のご予約とお問い合わせをいただきました。1992年に世界初の視線入力オートフォーカス機構を搭載して登場した『EOS5 QD』(欧州名称:EOS5)、2005年にフルサイズCMOSセンサーを初めて搭載した中級機として話題となった『EOS 5D』。キヤノンの長い歴史の中で「5」という数字は常に特別な存在です。
海鵜/Phalacrocorax capillatus
柄長/Aegithalos caudatus
尾白鷲/Haliaeetus albicilla
鵟/ Buteo japonicus
今回のテーマは「野鳥」。小学生の頃近所の川で翡翠(カワセミ)に一目惚れして以来、河川敷で一人待ちぼうけたり、森に分け入ったり、荒波に揉まれたり。美しく力強い鳥たちのおかげで、彼らを追いかけなければ見ることのできなかった沢山の景色に出会うことができました。1カット目に写っているのは尾脂腺(びしせん)が発達していないために羽根の撥水効果が少ない海鵜。河川に生息する河鵜も同様の生態で、潜水後は陸地や留まり木の上で羽根を乾かす様子が見られます。真っ白でふわふわとした大人気のシマエナガは北海道でしか見ることはできませんが、本州に生息するエナガも負けず劣らず可愛らしい一種です。群れをなして木々を転々とすることや、その小さな体も相まって出会うことは簡単ではありません。北の大地を悠々と飛び回るオジロワシ、目を凝らすと目が白くなっています。これは瞬膜というもので角膜を保護したり目の乾燥を防ぐための役割を果たしています。鳥類以外にも両生類や爬虫類にもみられ、私たち人類を含め哺乳類では退化しているものだそうです。最後はノスリという猛禽類、美しい白と茶のコントラストと丸く大きな黒目が魅力的なタカ科の漂鳥です。樹上から飛び立ってすぐに電線が被ったものの、迷うことなく補足し続けることができました。あらゆるシチュエーションで数少ないチャンスを確実にモノにする力が今回の組み合わせには備わっています。それぞれの和名と学名を記載しておりますので、是非ご活用ください。
翡翠/Alcedo atthis
蒼鷺/Ardea cinerea
鳶/Milvus migrans
野鳥撮影に400ミリというと少々短く、600ミリ以上を選ぶ方が多い印象です。もっと寄れたらいいのにと思う場面が全くないと言えば嘘になりますが、どのような環境でどのように暮らしているかを記録したいという思いから、あえて引いた画角で撮影することにこだわっています。身体の大きさの違いこそあれ、自然環境の中では小さく脆い存在である野鳥の多くは我々人類と多くの接点を持ちながら生活しています。河川の護岸工事を行うことで巣を作る場所が失われるカワセミ、獲物を探しに田んぼにも飛来するアオサギ、人が持っている食べ物を横取りすることもあるトビ。人類の社会活動によって目まぐるしく変わる環境の中で、常に適応することを迫られながら美しく生きる彼らの一瞬を逃すまいとレンズを向けています。
このレンズが写す風景が好きです。その多くは野鳥を待っている間に撮影するのですが、何気ない景色を絵画のように昇華する力を感じます。あらゆる光の状況下においても収差や滲みが表れることはなく、最短から無限遠まで一切の曖昧さもありません。望遠レンズ特有の圧縮効果も使うことで、一般的な風景写真との差別化を図ることも可能です。
柄長/Aegithalos caudatus
瘤白鳥/Cygnus olor
百舌鳥/Lanius bucephalus
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日常的に使用するには大きすぎるし、試しに買ってみようという値段でもない。本当に限られた、それもかなり特殊な人々の為のレンズだと思います。その分、それ相応の、時には想像を遥かに越える成果を得ることができるレンズだとも思います。そして忘れてはならないのは『R5』。誰が何と言おうと、それは確実に「5」を背負った頼り甲斐のある1台。まだまだあなたのシャッターチャンスを任せるに足る1台だと思います。一眼レフからの移行、RFマウント内でのステップアップ、もしいらっしゃればお買い戻しも大歓迎です。ぜひ一度、ご検討ください。もちろんMark IIについては早期の在庫確保に努めてまいりますので、期待に胸膨らませてお待ちくださいませ。
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普段届かない距離をもグッと引き寄せる望遠レンズ。
遠くの被写体も写真内に大きく撮影することが可能です。
普段使い、とはなかなか難しいですが、何も特別では無い望遠レンズ。
ぜひ貴方の手にも、望遠レンズが届きますように。
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最初のR「5」と最後のEFヨンニッパ。
銘玉ぞろいのEFマウントレンズ群を末永く活用するためのアダプター。