【Voigtlander】APO-LANTHARの描写をSL2で堪能してみる
「フォクトレンダーのAPO-LANTHARはすごいレンズだ!」
それは多くのライカユーザーにとってよく知れ渡った事項です。
2021年1月に発売されたAPO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VMは、ライカの究極レンズAPO-SUMMICRON M50mm F2.0 ASPH.の10分の1ほどの価格ながらAPO-SUMMICRONに匹敵する描写性能を誇るレンズとして一躍話題になりました。
アポクロマート設計により、軸上色収差をはじめとする各種の収差を徹底的に排除。解像力やコントラスト再現性においても、究極の性能を誇ります。
「もう、これで良いんじゃない!」
正直、そう思っていました。
…ところがフォクトレンダー・コシナはそれだけでは終わりませんでした。
2024年8月、新たにAPO-LANTHAR 50mm F3.5 VMを発売。
開放絞り値をF3.5に抑えることで無理のない設計に変更。コンパクトさと高い描写性能を併せ持つレンズを作り上げました。
外装デザイン・最短撮影距離の違いなどでType I、Type IIの2タイプを用意。
さらにType Iにはアルミ素材のマットブラックペイントと真鍮素材でブラックペイントとクロームのツートン、Type IIには一部にアルミ素材を用いたブラックペイントと真鍮素材のシルバーというように、計4種類も取り揃える熱の入れよう。
と思ったら、さらにさらに限定モデルとしてType Iのツートンにオリーブ・グレー・ネイビーまで発売するなど、もはや販売スタッフ泣かせのラインナップです。
これにさらに限定色3種が加わります。
価格は、通常モデル4種がだいたい7万~9万円と、APO-SUMMICRON M50mm F2.0 ASPH.よりさらに低い設定となっています。
今回撮影に持ち出したのは、Type I ブラックペイント。ラインナップ中で最も安価、かつ最軽量150gのモデルです。
装着するボディは、SL2。マウントアダプターを介しての使用となります。
ブラック同士の組み合わせが全くもって自然で、もともとSLマウントのレンズなのではと錯覚してしまいます。
SLシリーズのレンズはどれも大柄で、軽量のSUMMICRON SL50mm F2.0 ASPH.でも約450gありますから、いかに取り回しの良い組み合わせか分かっていただけるかと。
ちなみに他のモデルだとこんな感じ。
いずれも甲乙つけがたい、魅惑的なフォルムです。
2024年3月に新型機SL3が登場し生産完了となったSL2ですが、4730万画素と十二分な高画素性能を備えています。
中古の価格帯も現在50万円前後と、新品SL3の半値程度。
ライカ SLシリーズを一躍メジャーな存在に引き上げた名機も、大変お手頃感の高い機体となっています。
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この組み合わせで向かったのは、渋谷区の代官山。
正直私には不似合いな街ですが、首から提げたLeicaロゴを心の拠り所にして闊歩してみました。
Leica SL2 + Voigtlander APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM Type I(以下、同じ。)
まずは「BW Nat モノクロ」モード、F5.6で。
絞り優先AEにすると、モノクロでは明るめに写ることが多いので、僅かにマイナス補正をかけるようにしています。
石畳の描写の緻密さが半端ありません。この1枚だけで解像力の高さがうかがい知れます。
かなり強い斜光を受けていました。
それでも葉のハイライト部もシャープさを損なうことなく表現されています。
こちらの白壁も、飛ぶことなく細かな部分まで再現されています。
ついついモノクロモードが多くなってしまいました。「STD 標準」で。
大口径レンズのようにボケで遠近感を出すのではなく、物体を立体感豊かに描写し解像力で遠近感を表現してくれるレンズだと感じました。
絞り開放F3.5で。
青空を撮ると、画面周辺部の光量落ちが見られました。
近くの旧朝倉家住宅にも足を運んでみました。
紅葉の頃など大変賑わう所ですが、この時期は閑散としています。いるのは外国の方ばかりでした。
どちらも絞りF3.5で。
バックが樹々だとさすがにボケが目立ちますが、自然なボケ具合で乱れを感じさせません。
撮影中、外国人男性に「良いカメラですね!」と声を掛けられました。
「セ、センキュー…」
突然のことで、なんとも情けない返しになってしまいました…
大通りに面した、ひと際目を引くお店の前で。
冬の午後の強い斜光を浴びた車体が鮮やかな色味で表現されています。
さらに、車体の錆や周りを囲む蔦の葉一枚一枚まで緻密に描写された解像力。
眩しくて人の目では見極められないところまで細かく再現されています。
F3.5で。近距離でわざと奥行きを持たせて撮影しました。
この距離だとどこにピントを合わせたのかがはっきりします。
ピント合焦部がひと際シャープに、そこからなだらかにボケていくのが分かります。
モノクロだとそれがさらに際立つことに。
被写体のどこに主眼を持っていこうとしたのか、撮影者の意図が出来上がった写真で如実に分かってしまいます。
軽く取り回しの良いことから、気の向くままに被写体にレンズを向けていました。
しかし、描写力が高いゆえに撮影者の力量をかなり反映するレンズとも言えます。
もっともっと使いまわしてみたい1本となりました。