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【Leica】WITHIN120K -ライカ旅行記 M10-P 編-

【Leica】WITHIN120K -ライカ旅行記 M10-P 編-

2025年2月20日にLeica Boutique MapCamera Shinjukuは12周年を迎えます。
今年の連載はテーマ『Journey』と『“12”周年』にちなみ、マップカメラのある新宿から半径120キロ圏内での撮影旅行をスタッフが計画。旅の供にカメラが選ばれるようになってから100年となる今年、「旅」を通してカメラの楽しさ、ライカの面白さをお伝えするべく、マップカメラスタッフ12名が旅に出ました。その名も「WITHIN 120K」

・・・

目覚まし時計を止め、カーテンを開け、朝の光を呼び込んだら日課の絵の練習。
30分くらいするとお米の炊き上がる音がして、テーブルの代わりの洗濯機の上で朝ごはん。

狭っ苦しい7.5畳の繰り返しの風景、でも今日はその繰り返しから少しだけ外れていました。
出発前にカメラを掴んだのですから。

私の旅先は、山梨県内。
ひどくざっくりとしたくくりではありますが、魅力がこれでもかと凝縮されているこの土地を味わいたくて、そこかしこに足を延ばしました。

お供のLeicaはM10-Pにズミルックス M28mm F1.4 ASPH.、そしてアポズミクロン M75mm F2.0 ASPH. (6bit)です。まずは他スタッフに倣って所持品のご紹介をいたします。

お気に入りの白いリュックは、Peak Designの「エブリデイ トートパック 20L ボーン 」。
2024年10月より「PFASフリー」仕様へ変更となり、従来品と同等の性能を実現しながらより環境に配慮したギアへと進化しています。
屋外のベンチや岩に置いてかっこよく撮ろうと思ったのですが、せっかくの白いリュックが汚れるのは嫌だったので室内の写真でご容赦ください。


この中に2018年製のiPad pro 12.9 inchと、お気に入りのイヤホンであるゼンハイザー IE200を収め、意気揚々と駅へ・・・。

今シーズン最大の寒波到来!と騒ぐ天気予報とは裏腹に、私の発つ駅はむしろ暖かいくらいの陽気。
普段とは逆向きの電車はガラガラで、もうこれだけで嬉しくなります。
30分程で高尾駅へ到着しましたが、体感時間は10分ほど。
非日常が早く回しすぎた体内時計をリセットするために買ったのは、ちょっと贅沢した170円のココアでした。
時間も味も、上質なほどじっくりと味わいたくなります。

 

南側の山が見渡せるよう、車内の北側に座り揺られること1時間。
6両編成のガタゴトと賑やかな電車は、勝沼ぶどう郷駅に到着しました。
少しばかりくたびれたステンドグラスと、山々の稜線に出迎えられてまず一言。
「寒い・・・」。
ウォーミングアップ代わりに少し歩いて暖をとることにしました。

 

駅の北側に残る旧勝沼駅の遺構は、春に来れば桜とホームのコラボが大変綺麗なようですが、あいにく今は冬。
寒色の表現が得意なM10-Pならではの色で収めます。

 

上の二枚は決して空が主役の写真ではありませんが、それでも「この水色こそM10-Pだ」と思うのはただならぬ美しさのせい。
数あるMデジタルの中でこの世代だけが持つ最高にして最大の美点、水色と黄色の鮮やかさを感じたくて、次は空に向けカメラを構えます。

 

山あいの雲はさまざまに形を変え、そこからのぞく水色も刻一刻と変化していく。
もう見上げることすらなくなった都会の空とは違い、そこには心惹かれる何かがあるのでしょう。
本当はしばらく物思いにふけりたかったのですが、身震いが現実に引き戻したので歩き出すことにします。

 

旧勝沼駅の反対側に静態保存されている電気機関車に軽く挨拶を済ませて、足早に向かうのは大日影トンネル遊歩道。
1903年に開通したこのトンネルは、日本ワイン発祥の地である山梨から各地への輸送になくてはならないものでした。
長きに渡り補修のため閉鎖していましたが、2025年2月現在は開通し遊歩道として利用されています。
「歩ける廃線」としてはこの上ないほどの環境に胸を躍らせ、カメラを握りしめいざ中へ。

 

意気揚々と線路の真ん中を歩き始めると、大きな石や枕木に足を取られやむなく横へと退散することに。
レールの上を歩くのもいいかと思いましたが、バランスを崩しカメラごと転倒したら大事と考え直しました。
湧水に踊る光を眺めていると不思議と心が落ち着き、決して明るい雰囲気の場所ではないのにもかかわらず居心地の良さを感じます。
とはいえそれは「終わった場所」を見る旅人の立場だからこそ。
この湧水をいなすため、掘削当時の人々は大変な労力で水路を作ったことを思うと頭が下がります。

 

昔日に思いをはせながら進むこと数分。
2月の昼下がり、陽光の届かないトンネルの中はひどく冷たく、寒さが身を刺すようです。
入り口付近では構図を考える余裕がありましたが、進むにつれて指先がかじかみ、もはやマニュアルでフォーカスを合わせる手にもぎこちなさが。
自然と速くなった歩みのおかげで、ゴールはほど近くです。
とはいえもちろん帰りもまたこの道のりを歩くのですが。

 

突き当りにはトンネル内の環境を利用したワインカーヴがあり、それを見学したのち復路へ。
そういえば行きは地面ばかりを見ていたと思い出し、天井を見上げながら歩きます。
かれこれ100年近く前にトンネルを焦がした煤の黒さはそのままに、様々な汚れがこびりついた小宇宙。
遠く耳をすませば、蒸気機関車の音がきこえるようでした。

 

写真を撮りながら往復で1時間。
そう長い時間ではありませんが、日差しの下に戻るとまるで長い旅でもしてきたよう。
小一時間前より雲が増えた空に目を細め、昼食に向かうことに決めました。

 

・・・
さて、食事の写真がない言い訳をしてもよいでしょうか。
トンネルの往復でいい感じにカロリーを消費した腹には、「焼肉定食を食べる前に写真を撮る」という選択肢はなかったようなのです。
代わりに塩山駅正面の旧高野家住宅 (甘草屋敷)の巽蔵をお送りいたします。

 

そこから振り返れば、懐かしい公衆電話に出会えました。
西日が差し込む電話ボックス内にカメラを差し入れ、パシャリ。
この色味の渋さこそLeicaの特権と感じます。

 

 

・・・
次の目的地となる山梨県笛吹川フルーツ公園へは山梨市駅よりバスで向かうのですが、少しばかり空き時間ができました。
駅前のベンチに座る人よろしく、スマホをいじっても時を進めることはできます。
しかしこの時間こそ旅の醍醐味、せっかくカメラがあるのです。それも、とびきりの。
限られた時間内で、どれだけきれいな光に出会えるか・・・。
直感や気分で曲がる道を選んだら、あとは一期一会を楽しみましょう。
そうこうしているうちに良い頃合い、少しばかり得をした気分とともに、電車とバスを乗り継いだのでした。

 

・・・

 

山梨県に通いなれた方なら、この写真を見ただけでどの場所か判るかもしれません。
あと少しで夕方という時間帯、地球儀の中から見上げる空はまだ青。
それでも子供たちの笑い声が遠ざかり、公園内の人もまばらになってきました。
外に出てみます。

 

高低差を活かした作りになっているこの公園は、一通り巡ろうとするとなかなかの距離がありました。
そこかしこに見られる樹を眺めながら歩いていると、自然の雄大さと人々が拓いてきた営みの両方が息づく場所だと感じます。

歩き疲れるまで景色を満喫した後は、自販機で暖かいミルクティーを買って一息。
高台へ続く階段のそばに陣取り、しばし眼下の世界を独り占めしてみました。
手の中でゆっくり温度を失ってゆくペットボトルとは裏腹に、あたたかなオレンジに染まって輝く道端のワインボトル。
そろそろ黄昏時・・・、帰りの電車もあるので写真を残せる最後のチャンスかもしれません。
もう一度気合を入れてカメラを構えたら、ここからは頑張る時間です。

ライブビューを使用することに若干の抵抗を感じつつも、その恩恵にあずかりシビアに構図を組んでみる。
心地よい緊張感が体をめぐり、単なる旅から撮影旅行に自分が切り替わったのだと強く感じました。
3つ並んだ盃、それに今にも雨を注ぎそうな雲模様。もしや夕立・・・?

そうして振り返れば西の空はまだ晴れ。
少し安心感を覚えながら、生垣越しに先ほどの盃を狙いました。

斜面を下り、階段を上り、そこかしこに伸びる道、路、未知。
足取りは速く、気持ちは軽く、絞りは開いて貪欲に。
刻一刻と変化する光を逃さぬようにカメラを向けて、ただ撮り続けます。

素晴らしく美しい水色の双眼鏡を見つけ、硬貨を投入しようか迷いましたが撮影するだけにしました。
この時は1分1秒が惜しかったのです。
しかし今思えば、コリメート撮影をするのも面白かったかもしれません。

堂々と枝を伸ばす大木は、季節を違えば見事に葉を茂らせていたのでしょう。
もしも木に感情があるなら、「もっと美しい時に撮ってくれればいいのに」と思っていたかもしれません。
一番奇麗な姿が見られる時期を狙ってまた来よう。願わくばそれが毛虫の時期に重ならぬよう・・・。

気が付けば出発地点まで戻ってきていました。
町に戻り夜景を狙うならそろそろ良い頃合いかもしれません。
先程より水平線に近づいた太陽にせかされながら、バス乗り場へ急ぎます。

・・・

この後町に戻り様々な場所を歩いたのですが、フルーツ公園の写真を超えるようなものが撮れず悔しい思いと共に帰路につきました。

WITHIN120K。
6両編成のノスタルジックな電車に揺られ、たどり着いた山梨県。
120km以内で探しに行った非日常は、様々な輝きに満ちていました。
挑戦と発展の歴史に触れられたことが嬉しい。
次々と変化する空模様が美しい。
山肌に磨かれ、澄んだ風が喉においしい。
お昼の焼肉定食も・・・おいしい。

普段は車で各地を巡ることが多い私にとって、電車の旅は新鮮かつ大満足の内に幕を閉じました。
さて、次はどこに行こうか。
オンラインマップの「行ってみたい」リストを更新しながら、狭っ苦しい7.5畳の繰り返しに一度戻ることにしましょう。
またそこから外れる日を夢見ながら。

 

現在マップカメラでは「Leica Boutique MAPCAMERA Shinjuku」12周年を記念してフォトコンテストを実施しています。
ライカ製品以外のカメラで撮影した写真でも参加可能!ぜひみなさまの「旅」の写真をお待ちしております。

 





[ Category:Leica | 掲載日時:25年02月18日 19時00分 ]

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