
【HASSELBLAD】東京景~X2D 100Cで発見する都市の記録~
ストリートスナップという言葉を聞いて、皆様どんな写真を思い浮かべるでしょうか。
人物を主体とした荒々しいものか、人と瞬間のユニークなものか、それとも特定の共通した対象を集めたものなのか…
実は一言では言えても実際どんな写真なのかと定義が難しいカテゴリであるのは間違いありません。
今回HASSELBLAD X2D 100Cとレンズ2本を使用してみました。
1億画素の中判ミラーレス機ともなるとこれが適しているのかと一見考えてします。
しかしコンパクトだけど、ずっしりとした存在感。そしてファインダー越しに初めての街を見るような感覚。
使っていくうちに都市の風景と向き合うことに最適な1台であると感じました。
XCD28mm F4Pは換算22mmと非常に広角なレンズです。ただ使ってみると中判の広角レンズは従来の3:2の構図とは
少し印象が異なります。今回のX2Dは44×33、所謂4×3の対比で高さが変わるだけで建造物や空間を切り出す撮影方法では
非常使いやすい1本です。シャッター音も非常に静かな事やXCDレンズでも屈指のコンパクトさは中判レンズとは
思えない程に取り回しのしやすいモデルです。撮影地は新宿。特に南側の一体は新たに開発された商業ビル群の中に、
古くから存在する場所も残されています。
広角レンズの良さというのは周囲の情報を全て捉える事ができる。光と影、色彩のバランスが完全に一致した瞬間と思いました。
AFも流石にフルサイズ程はキビキビ動く…とはいかないものの、スッと合焦して正確なフィーリングは撮影していてなんだか
気持ちのよいものです。線もシャープネスの誇張感がなく、見たままの自然な描写がより撮影に集中させてくれます。
逆光と赤に惹かれて気が付いていたら撮影していた1枚。光と影のコントラストが際立っているのが分かります。
遠近感の強調効果を活かせるのも広角の面白さと言えるでしょう。普段は撮影しないような冒険を、少ししたくなるものです。
このような場面で空間を全て捉える。中判カメラのスナップは傍観するように全体を捉える撮影方法が一般的です。
場所と人の関係であったり、空間系の思考で撮影する。これは私も以前Makina67やPENTAX67等の中判機でも同じ事をしていました。
その感触をX2D100Cは使っていると思い起こさせてくれます。使ってて本当に気持ちが良いのです。
街の中を歩きながら町を見つけることがあります。昔から残り続けている風景が現在と混じりあう場所を求めて、
一路本郷まで足を運んでみました。ここには歴史と現在が交差する空間が歩いていると所々に点在しています。
東京という場所は「都心」と揶揄される事も確かではあるものの、歩いて見ると違うの時間の流れ方をする場所も多いのです。
その面白さを写真を通して感じた20代の時は1人で歩いて撮影し続けていました。
思わず赤の色と夕日の色で撮影をした1枚。データを見た時に大判のポジフィルムのような写りが現れてきた時に
感動した写真です。この深い赤と潰れないシャドーの階調はこのカメラでしか撮れない理由を感じさせてくれます。
此処はご存知の方も多いはず。樋口一葉旧居跡と呼ばれる場所です。
手前にあるのは「一葉の井戸」と呼ばれる井戸。現在もそのまま残されています。
なかなか探そうと思わないと見つけにくく、うっかり通りすぎてしまうことも…来訪の際は民家に囲まれている為、
節度を持って見学しましょう。周辺も歩いて見ると所々歴史を感じる場所を楽しむことができます。
中判や大判ならではの写真ともいえます。解像度の高さは歴史の刻印を写し取るには最適です。
石元泰博の「桂離宮」が頭に過って撮影したものです。長い年月を越えて存在し続けてきた時間の流れを1億画素のセンサーは
しっかりと記録してくれました。しかも一眼レフを扱うようにここまでの写真が撮影できてしまう事は、驚いてしまいます。
続いてはXCD90mm F2.5Vです。35mm換算71mmに相当する1本。
少しシャッター音が大きめなので、スナップというよりはポートレートや静物撮影が適しているかもしれません。
開放で撮影。見たままの忠実な色を再現したHNCS(Hasselblad Natural Colour Solution)によって、撮影されたものも
実物とほぼ同じ色で記録されています。開放でこの解像力は流石の一言。ボケ味もスムーズで安定した描写です。
静物撮影を目的とした方にはこの1本はとても魅力的ではないでしょうか。
歴史が残る場所と言えば銀座も同様です。
こちらはF3.5で撮影。ハイライトが一部飛んでいるのが確認できるものの、ここまで写れば大したものです。
シャッター速度は1/60秒。1億画素ともなると心配なところですが5軸7段手ブレ補正を内蔵しており、
レンズシャッター方式も相まって想像以上にスローシャッターも簡単に撮影する事が可能です。
ライカと同様にHASSELBLADのデジタルシステムも自動車撮影がやはり得意なのです。
金属の質感や艶のようなものを、撮影するとしっかり引き出してくれます。反射する黒の微細なニュアンスもご覧の通り。
今度はX2D 100Cでクラシックカーの撮影をしてみたい…と考えてしまうほど。
使ってみると非常にボディデザインが良く、カメラを持って撮影している事を忘れてしまう程、身体に馴染んでいました。
撮影するまでの一連の動作が非常にスムーズである事もX2Dの大きな特徴です。
「ファインダーを覗いてピントを合わせ、シャッターボタンを押して撮影する」という行為そのものを無意識に行えるように
余計な引っかかりやテンポを乱す要素が無いという体験は実はなかなか珍しいことなのではないかと感じます。
そのおかげで都市の中を歩いて、向き合えるとても紳士的なカメラなのかもしれません。
人の中をかきわけて一瞬を撮影する…という撮影スタイル以外にも「眺めていたら気付く違和感」を撮影する。
これもまたストリートスナップの1つだと思っています。そんな写真を撮りたい貴方に、このX2D 100Cはとても頼もしい存在
になってくれると思います。是非このカメラで様々な東京を探してみませんか。