
【Nikon/PENTAX】定番オールドレンズが定番である理由。Zf×SMC-TAKUMAR 55mm F1.8
Nikonのミラーレス一眼カメラ、Zシリーズ。
Zマウントには数多くの高性能レンズが存在し、ZレンズがあるからZマウントを選ぶ、という方も多いでしょう。
ですがZマウントにはもう一つの楽しみ方があることをご存じでしょうか。
それが、マウントアダプターの使用です。実はZマウントボディは、マウントアダプターを介したレンズの使用にも最適な設計なのです。
そこで今回は、古今東西様々なレンズをZマウントボディに装着し、ボディ、そしてレンズの魅力を再発見していこうと思います。
目次
ボディについて
まずは今回使用したボディを紹介いたします。
今回使用したのは「Nikon Zf」。2023年に発売された、フルサイズセンサーを搭載したミラーレス一眼カメラです。
その特徴はクラシカルな外観と操作系。往年のフィルムカメラ「Nikon FM2」にインスピレーションを受けてデザインされたボディは、オールドレンズとの相性も抜群です。
そしてただ見た目がレトロなだけでなく、その中身は最新世代の性能が詰め込まれていることも特筆すべき点です。特にファームウェアバージョン2.0にアップデートをすることで、レンズのExif情報をより詳しく残したり拡大表示機能が拡充されたりと、オールドレンズを使用するにあたって便利な機能が多く追加されました。
レンズについて
第一回となる今回ご紹介するレンズは「PENTAX SMC-TAKUMAR 55mm F1.8」。
まずは簡単にレンズのスペックを見ていこうと思います。
・発売年:1971年
・レンズマウント:M42スクリューマウント
・最短撮影距離:45cm
・重量:約200g
TAKUMARの55mm F1.8は長年にわたりPENTAXの一眼レフの標準レンズとして製造され続けてきました。それに伴って、いくつものバージョンが存在しています。こちらのモデルは1971年の発売ですが、同じスペックのレンズを遡ると1956年ごろから製造がされています。その間いくつか変更点があり、今回使用したモデルは「Super-Multi-Coated」、つまりマルチコーティングがされている比較的後期のモデルになります。
こちらのレンズはしばしば、オールドレンズ最初の一本におすすめとして紹介されます。
あまた存在するオールドレンズの中でなぜこのレンズが定番と言われるのか、その理由を探っていきたいと思います。
作例
それではこの組み合わせで撮影した作例を紹介いたします。
SMC-TAKUMAR 55mm F1.8のボケ味
このレンズは、拡大して確認するとわずかに線が柔らかいものの、写真全体としてはバランスが保たれた描写をします。スペックとしては標準域で開放F値が1.8ということで、ボケはかなり大きく出てきます。花壇に植えられた花の1輪にフォーカスすると、他の花々は柔らかくとろけるようにボケてくれます。
もう一つの特徴が、点光源を撮影した際に見られる玉ボケにあります。木漏れ日などの小さな光源を撮影すると円形のボケが発生するのですが、これが輪郭を保ったいわゆるシャボン玉ボケになりやすい傾向があります。ボケがざわざわするという風によく表現されますが、これが写真に独特な雰囲気を生み出してくれます。
ですが、実はこのシャボン玉ボケに関してはより強く出てくるレンズも多く存在します。このレンズは、違和感の出すぎない程度に程よく輪郭が残るので通常撮影にも使いやすいのです。
SMC-TAKUMAR 55mm F1.8の解像力
F値開放で遠景を撮影すると、線がわずかに滲んで写ります。最近のレンズであれば開放で撮影しても線はシャープに出てきますが、オールドレンズではベールを1枚まとったような、柔らかな写りとなります。
また画面中央付近に比べて、周辺部から四隅にかけて流れるような描写となります。遠景でF値開放を使う際は、主題を画面中央近くに配置するとより印象的に仕上がります。
もちろんF値を絞り込むことで遠景でも周辺まで線の細い均質な描写になります。
ちなみに、周辺減光についてはオールドレンズとしては小さめの部類になります。とはいえ全く発生しないわけではないので、構図によっては周辺減光を活かした撮影もこなせます。
SMC-TAKUMAR 55mm F1.8の画角
55mmという焦点距離は、一般的には標準レンズに分類されます。人間の注視した視野に近いとされている画角で、被写体にフォーカスした構図で撮影することが可能です。フルサイズセンサーを搭載したカメラなら、本来のレンズの画角をそのままに使うことができます。
モノクロモードで使うSMC-TAKUMAR 55mm F1.8
夜になったので、カメラの設定をモノクロモードに切り替えました。
Nikon Zfではモノクロモードに設定する際、シャッタースピードダイヤルと同じ軸にあるレバーを使い、写真と動画を切り替えるようにカラーモードとモノクロモードを切り替えることができます。
今回はモノクロモードの中でも、Zfに標準で搭載されている「ディープトーンモノクローム」を使用しています。比較的コントラストが高く出るモードで、オールドレンズとの相性も良いです。
強い光源があると、その光を受けた被写体の周囲に滲みが出てきます。モノクロ撮影ではこのような光の明暗をより敏感に捉えることができます。
夜空に向かってそびえるクレーンを撮影しました。
これからの街を作り出している最中の一期一会の出会い、ついカメラを向けたくなる被写体です。
こちらの写真は中央の赤いライトが光った瞬間で、まるでクレーンを生かす心臓の鼓動のようです。
Nikon Zfのボディ内手ブレ補正は最大8段分の効果があり、電子接点のないマニュアルフォーカスレンズでもレンズ情報手動設定から焦点距離を設定することで、恩恵を受けることができます。スローシャッターを使い、その分ISO感度を落として鮮明な画を得ることができます。
まとめ
今回「Nikon Zf」と「PENTAX SMC-TAKUMAR 55mm F1.8」の組み合わせで撮影をしてみて、オールドレンズ界のまさに標準レンズがこのレンズなのだと感じました。
柔らかなボケとざわざわとしたシャボン玉ボケが共存し、十分な解像度を持ちながらもわずかに光がにじみ、画角も人間の注視したときの視野に近い。オールドレンズは数多くあれど、SMC-TAKUMAR 55mm F1.8はその中でも極めて標準的な性能を有している。これがオールドレンズ定番の1本として多くのユーザーから愛される所以だと思います。
そして、金属製の絞りリング、フォーカスリングは質感が高く、マニュアルフォーカスのピントの合わせやすさと同時に、レンズを操作しているという所有欲も満たしてくれます。
個性豊かなオールドレンズと、選択肢の豊富なZマウントボディたち。
是非あなただけの”ベストコンビ”を探してみてはいかがでしょうか。
次回もお楽しみに。
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なお今回、マウントアダプターはSHOTENのヘリコイド付きアダプター「LM-NZ M EX」とK&F Conceptの「KF-42M2」を重ねて使用しました。
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