
APS-Cからフルサイズへ。広がる世界を手にしませんか?
カメラを始めて数年、マイクロフォーサーズやAPS-Cセンサーのカメラで撮影を楽しんでいるうちに、ふと感じることがありました。
「もう少し広く撮れたら。」「あと一歩下がれれば全体が入るのに。」「この風景の迫力をもっと表現したい。」
「もっとボケが大きくしたい。」「夜や屋内でも撮影を楽しみたい。」
そのような経験はありませんか。
室内での集合写真、壮大な風景、建物の全景を収めたい時。APS-Cでも十分楽しめるのですが、どこか物足りなさを感じる瞬間があるのも事実です。
その答えの一つが、フルサイズセンサーへのステップアップかもしれません。
今回は、フルサイズセンサーへの乗り換えを検討されている方に向けて、実際の撮影体験を通じてフルサイズセンサーの魅力をお伝えしていきます。
-スタッフNの場合-
カメラを初めて手にしたのが約10年前、旅行のためにAPS-Cセンサーの一眼レフカメラのレンズキットを購入したことが始まりでした。
とはいえ旅行は頻繁にするたちではなく、気付けば日常スナップがメインとなり、きっかけは忘れましたがここ数年では野鳥など季節の動植物の撮影ばかりになっています。
機材もはじめのレンズキットからマイクロフォーサーズミラーレスカメラ、コンパクトデジタルカメラと変遷し、現在はマイクロフォーサーズミラーレスカメラ、フルサイズミラーレスカメラの2台体制となっています。
個人的にはマイクロフォーサーズセンサーカメラでも十分に楽しめていますし、特に野鳥撮影では機材の小型軽量な部分や対候性に大いに助けられています。
とはいえそれはそれとしてフルサイズセンサーカメラへの憧れのようなものは頭のどこかにあったように思います。ピンポイントでここがいい!というものではなく、言ってしまえば浪漫に近いものです。各社からフルサイズミラーレスカメラが登場して数年、後継機の登場により価格的に手にしやすい機材やデザイン性にこだわった機材など選択肢の幅も増えてきました。今だからこそフルサイズセンサーカメラへのステップアップがしやすい環境が整ってきたのではないでしょうか。
今回使用している機材は『 Nikon Z f ボディ』、レンズは『 NIKKOR Z 50mm F1.4 』と 『NIKKOR Z 28-400mm F4-8 VR』 です。
▍フルサイズでボケを味わいたい
一般的にスマートフォンに搭載されているセンサーのサイズの約13倍がAPS-Cセンサーなら、フルサイズセンサーは約30倍です。より多くの画像情報を取り込めるため、高画質な撮影が可能となります。また広角が得意なフルサイズセンサーは被写体に近付いて撮影するとき背景がボケやすいです。
ここからは『NIKKOR Z 50mm F1.4』を使用して撮影した画像を続けて紹介します。
大きなボケ描写を気軽に楽しめる、明るくコンパクトな標準単焦点レンズである『NIKKOR Z 50mm F1.4』は質量約420g。大きく柔らかなボケで被写体を印象的に際立たせられます。
湿地に張り巡らされたロープで一休みしているオオシオカラトンボ。
ここではほぼ最短撮影距離である0.37mほどまで近づいています。ゆっくり息をひそめて近づいたとはいえもうこのままカメラを置いて素手で捕まえられそうでした。嚙まれそうなので実際にはやりませんが意外と警戒心がないのかもしれません。
この時期定番の被写体である紫陽花。
青やピンク、白と様々な種類がちょうど見ごろをむかえていました。
前後ともとてもボケてくれるので風が強ければシャッタータイミングもシビアになります。
毎年のように撮影する被写体だからこそどういう風に撮影するか悩むものですが、普段と違うレンズを使用するのもいいものだと感じた瞬間です。
うつむきがちにひっそり咲く姿が奥ゆかしいこちらはホタルブクロ、ちょうど初夏から咲き始める花ですが木陰にぽつんと咲いているのをはじめて見かけました。提灯に似ているや、子どもが花の中に蛍を入れていたなど名前の由来には諸説あるようです。
▍暗所で撮影してみたい
センサーサイズが大きければそれだけ光も取り込みやすくなります。つまりは暗所での撮影も得意でノイズの少ないクリアな画像を得ることができます。
この日は朝こそ天気雨がちらついたもののすぐに日差しが強くなり快晴となった日でした。それでも撮影場所は木々の多い自然公園、直射日光を避けるように木立の中へ向かえば意外なほどに薄暗くなります。
もうひとつ、センサーが大きいことでダイナミックレンジが向上します。明るい部分と暗い部分のより広範囲の情報を得られるため諧調表現が豊かになります。このように光が差し込んだ部分の植物、陰になった植物と明暗差が多くともディティールがよくわかります。
▍便利ズームも使いたい
ここからは『NIKKOR Z 28-400mm F4-8 VR』を使用して撮影した画像を続けて紹介します。
NIKKOR Z レンズ初の約14.2倍の軽量な超望遠高倍率ズームレンズでありながら全長約141.5mm、クラシカルなデザインのボディにつけても扱いやすいレンズです。
筆者の背丈を超えるほどに成長した見ごろの紫陽花をまずは広角側で撮影してみました。このあたり一帯の紫陽花はピンク一色、みずみずしい濃緑の葉との組み合わせは目を楽しませてくれます。
ここで一気に望遠側にズームリングを動かしてみます。葉と花に挟まれるように被写体に選んだ一株以外はすべてぼかしてみました。望遠レンズも周囲をボケさせることが得意ですが、1本のレンズで様々な表現が可能ないわゆる便利ズームと呼ばれるようなレンズは持っていると本当に便利で撮影が楽しくなります。
ハーブ園を通り過ぎようとしたら耳元を大きな羽音が通り過ぎました。4cmくらいはありそうな大きな蜂は迫力十分ですが望遠レンズなら遠くから撮影可能なので助かります。強風に煽られて揺れる植物に合わせて細かに飛ぶ蜂がとまった瞬間を撮影しました。
じりじりと肌を焼くような日光を遮ってくれている葉も、強い日光に透けていました。重なり合う部分だけ影ができていてその不規則な陰影が気にいっています。
浅い川の岸壁に張り出すように咲く紫陽花。よく見れば水面にリフレクションしています。この紫陽花の左側に歩道がありますが、日差しの問題なのか歩道側ではなく川の向こうに向かって葉も花も伸びていて歩道側からだと撮影できません。毎年こっち向きに咲いてくれたらいいのにと思っていましたが、この紫陽花のおすすめ撮影場所を見つけたかもしれません。
基地から飛んできたのか、基地へ向かっているのか、頭上を飛行機が横切っていきました。低空飛行のためすぐに木に隠れてしまうので急いでカメラを向ける必要があります。
湿地帯のハナショウブ、カキツバタ園は意外と花の時期が長いようです。前回は黄色い花が多かったですが黄色い花が見当たらない代わりに白や紫の花が多く咲いていました。
湿地帯の周辺は本当に小さく浅い小川があり、周囲を大きな岩が囲っています。日差しの強さにもしかしたらいるかと目を凝らせばやはり日を浴びに小さなトカゲたちの姿がありました。のびのびと長い尾のトカゲたちはするする岩の間を通り抜けてはベストポジションを探しているようでした。
水面にはアメンボ、水中には小さな魚の姿をよく見かけます。こういった小魚をカワセミが捕っているんだろうと思いつつ、この日は残念ながらカワセミの姿を見ることはありませんでした。
冒頭でフルサイズセンサーカメラの選択肢が増えたといいましたが、まさに浪漫を感じていたフルサイズセンサーカメラを入手したきっかけとなりました。
そしていざ手にしてみればその描写は美しく満足感の高いもので、今では次にどんなレンズを使いたいかと考えを巡らせる日々です。
機材のステップアップに足を踏み出してみれば新しいレンズ沼が待ち構えていたようなものですが、いまの機材にプラスしたい、いまの機材を変更したいと検討しているならば手にしてみればさらなる世界が開けるに違いありません。