
カメラを始めたての頃、フルサイズ一眼はあこがれの対象でした。 部活の先輩が使っていたカメラを触らせてもらったり、カメラ屋に行って実機を試したりと、学生の頃の私には手の届かない価格帯だったこともあり、今でもあの頃の気持ちは鮮明に覚えています。時は流れ、時代はミラーレス一眼の環境になったとしてもそれは変わりません。
今回はNikonから発売されている「D780」を使用して、これまたあの頃にあこがれだった「AF-S NIKKOR 35mm F1.4G」と「AF-S NIKKOR 58mm F1.4G」をつけて撮影させていただきました。ミラーレスに慣れ親しんだ今の私にとって、一眼レフで覗く世界の景色はどう見えたのか、是非ご覧いただければと思います。
今回の撮影地は小江戸の愛称で親しまれる川越です。もう何度となく訪れているこの地も、一眼レフを通して見たら、普段とは違った見え方がするのかと思い選びました。
途中にある商店街ののれんやショーケースのミニチュアに風情を感じて撮影。氷川神社までの道中は「AF-S NIKKOR 35mm F1.4G」を使用しています。ピントの合った部分からなだらかにボケていく描写が特徴的で、被写体をより際立たせてくれます。最短撮影距離も30cmと寄れるため、より大きなボケを作ることができ、こうして道端で気になった被写体にクローズアップすることが可能です。一眼レフでの撮影ではファインダーを覗いて撮影することが多いため、つい距離感を忘れて近づきすぎてしまうこともしばしば。気を付けて撮影します。
道端になぜか梅干しの入った壺がありました。梅干しづくりの工程には詳しくないのですが、天日干しの最中でしょうか。梅の実に入ったしわまでしっかりと描写しています。
掲示板に貼られたラジオ体操の案内に、幼い頃の夏のにおいを感じました。ガラスに写りこんだ木漏れ日がキラキラしていて、その場の雰囲気を再現してくれており、光の捉え方が巧妙だと思います。
町行く人のスナップ撮影では、2~3m前の被写体を浮かび上がらせるように絞り開放で撮影してみました。周辺減光も相まって、独特な雰囲気を醸し出してくれています。
この日は強い日差しが差し込んでくる日でしたが、Nikonの誇る「ナノクリスタルコート」のおかげで絞り開放でもコントラストの低下やフレア・ゴーストの発生を防いでくれています。日中でも安心して絞りの表現を追求することができ、撮影により集中できる一因となっています。
こちらはF2~2.8辺りの作例です。木材や金属といった異なる質感の被写体でも、しっかりと描き分けるあたりレンズの素性の良さを感じます。少しにじむようなボケも、夏の空気感とマッチしていてより臨場感を増してくれています。
大通りから路地に入るところで、とっさに撮ったスナップです。惜しくも背景にピントが合ってしまいましたが、旅行に来たであろう方の可愛らしいポーズを収めることができました。一眼レフはミラーレス機と比べて「大きい・重い」イメージが先行して、こういったスナップには不向きかとお思いの方もいるでしょう。
ミラーレス機でのEVFを使った撮影では、シャッターを押す瞬間わずかにブラックアウトしてしまうため、一瞬を切り取る感覚にわずかなズレが生じてしまいます。慣れてしまえば問題ないのですが、個人的にはそのほんのわずかな一瞬がスナップ撮影では重要だと感じているため、一眼レフのOVFでの撮影がしっくりくるのです。もしかすると上の写真も、ミラーレス機で撮っていたらまた違った写真になっていたかもしれません。
目的地に近付くにつれて、風鈴の音が聞こえ始めてきました。カフェの軒先に風鈴が一つ、短冊には「おいでませ」と書かれています。なんだか風鈴に呼ばれて来たみたいです。
今回使用した「D780」は、2020年に発売された、現状Nikon最後の一眼レフです。とはいえ、画像処理エンジンは「EXPEED 6」が搭載されており、ミラーレス機の「Z6・Z7」と同等の性能となっております。特に進化したのがWBで、新たに「自然光オート」を搭載しました。上の写真でも使用しましたが、日差しの強い中で青空の正確な色味を捉えています。またライブビュー撮影に切り替えることで、位相差AFとコントラストAFを組み合わせた「ハイブリッドAF」が使用でき、タッチパネルでの操作を含めてミラーレス機と遜色ない快適な操作性を実現しています。
そんな中ミラーレス機との明確な違いは、やはりバッテリーの持ちでしょう。1回の充電における撮影可能枚数は、CIPA基準で2260枚とミラーレス機を大きく引き離しています。旅行や1日を通した撮影の際はなるべく荷物を減らして行きたいため、スナップ派の私には強い味方となってくれました。実際に今回の撮影でも400枚程度撮影して、メモリは1つも減りませんでした。
氷川神社に着くと、多くの風鈴たちが出迎えてくれました。色とりどりの風鈴たちが風に揺られて、見ているだけでも涼しげな気分にさせてくれます。
こちらは最短まで近づいて撮影したもの。さすがに盛大なボケ量となっていますが、表現によってはこれも上手く作品に生かすことができそうです。
Nikon Zマウントは解放からシャープな描写のレンズが多いので、絞りや被写体との距離で描写が変わる本レンズもまだまだ活躍の場がありそうです。
ここからは「AF-S NIKKOR 58mm F1.4G」での撮影です。銘玉Noct Nikkor 58mm F1.2を引き継いだ、58mmという標準と中望遠の間をとったような絶妙な焦点距離。そして三次元の被写体を限りなく再現するという「三次元ハイファイ(高再現性)」を設計思想とした、ピントの合掌部分からアウトフォーカス部へのなだらかなボケの連続性。Fマウントを使用していた身としては、まさに憧れのレンズでした。
被写体はたまたま通りがかった木に吊るされていた鯛みくじ。開放で撮影したところ、背景から被写体が大きく切り離されるようなボケが生まれ、まさにとろけるような描写に思わず感嘆してしまいました。
先ほども撮影した氷川神社の夏の風物詩、縁結び風鈴を「AF-S NIKKOR 58mm F1.4G」でも撮影してみました。「AF-S NIKKOR 35mm F1.4G」の広角特有のパースを感じる絵作りとは打って変わって、一つの風鈴をピックアップするようなポートレート的な写りに。後から見返してみると、もう少し絞っても良かったと思うくらいです。後ろの木漏れ日も玉ボケとなって、全体の雰囲気づくりに一役買っています。
モノクロでの撮影もしてみました。ファインダーを覗いた瞬間から光をきれいに捉えるレンズだとは思っていましたが、色を無くすことでアンダーからハイライトまでの微妙なコントラストの移り変わりを写真に落とし込むことができました。デジタルデータなのに、妙になまめかしさを感じるこの写りは、ミラーレス全盛期の今でも十分通用すると思います。
58mmという焦点距離、個人的にはスナップ撮影にも向いている焦点距離だと思います。人物を写すのはもちろんのこと、こういった立体感のある被写体を収める場合に、50mmよりも中望遠よりになることで生まれる圧縮効果が上手く働き、写真にまとまりが出やすいと感じました。
いかがでしたか。
最後は帰り道に暑さに負けて買ったジェラートを一枚。皆さんも熱中症にはお気を付けください。
ミラーレス機に慣れ親しんでしまった今だからこそ、一眼レフを使ったらどんな景色が見えるかと思い立って撮影した今回。露出や色味がリアルタイムで反映されるEVFとは違い、見える景色から仕上がりを想像して撮影するという、一見不便に感じるOVFの撮影スタイル。ですが、撮影に没頭する、より集中して撮影するという意味合いでは、今でもOVFに分があるように今回の撮影を通して実感しました。
実は今回使用したD780は、キャッシュバックキャンペーン対象商品で50,000円のキャッシュバックがございます。以前一眼レフを使用していて、お手持ちのFマウントレンズを再利用されたい方や、ミラーレス機から始められた方で、一眼レフに興味のある方などにぜひご利用いただきたく思います。またレンズの方も、中古商品の値段がかなり落ち着いてきたため、あの頃手が出せなかった筆者のような方にはぜひご一考いただければと思います。
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