
【Carl Zeiss】A Piece of PREMIUM COLLECTION -Sonnar 50mm F1.5 Limited-
MapCameraで取り扱う中古品の中で、流通数や生産数が少ない希少品や限定モデルなどに与えられる名称、「PREMIUM COLLECTION」。
本シリーズでは、A Piece of PREMIUM COLLECTIONと称し、そんな製品たちを一つずつ紹介いたします。
第一弾は「Carl Zeiss (カールツァイス) Sonnar T* 50mm F1.5 Limited Edition (ニコンS)」。
2000年以降に発売されたレンズとしては珍しい「ニコンSマウント」の本商品がどのようなものか、解説いたします。
1.ゾナーについて
有名なレンズ構成の一つに、ゾナーという著名なレンズタイプがあります。
カールツァイス財団の光学部門であった「ツァイス・イコン」のルートヴィッヒ・ベルテレ博士が、エルノスターと呼ばれるレンズ構成を改良し、1929年に発明しました。
エルノスター型は、中~望遠レンズ設計において優れたレンズ構成とされましたが、その改良版となるゾナーについてもまた、標準~望遠域の光学設計において大変重要なレンズとなりました。
ゾナータイプの優れている点はいくつかあり、比較的小型でも大口径化しやすいことや、当時のハイスピードレンズでよく見られたような、コマ収差を良好に補正することで、明瞭な画像を得られる点などがありました。
一方で、構成レンズが重いため結果的にレンズ本体の質量も重くなったり、非対称構成から歪曲収差が発生しやすかったり、バックフォーカスが長くなりがちで、標準レンズなどではミラーボックス分の空間を有する一眼レフのシステムなどに採用が不向きだったこともあり、特に後年発展する一眼レフにおいては、プラナーなどのダブルガウス構成のレンズがよく採用されることとなりました。
とはいえ現在でも、中~望遠レンズの設計ではしばしば採用されるレンズで、発明からまもなく100年経つ現在でも、優秀で汎用性に富んだレンズ設計ということは間違いありません。
そんなゾナータイプのレンズは数多く存在しているのですが、とりわけライカ向けやコンタックス向けのレンズのうち、標準域のレンズとして多く販売されているものでは、1932年に発売されたボディ「Contax I」と、それに適合するレンズとしての「Sonnar 50mm F1.5 」(いわゆる旧コンタックスCマウント)が個人的にはなじみ深いです。
当時、このSonnar 50mm F1.5は、携帯式カメラの交換レンズの世界では最高速(もっともF値が明るい)レンズとされ、1949年ごろにLeicaからズマリット M50mm F1.5が登場するまで、ながらく最高速の地位であり続けました。
こちらが一般的にContax Cマウントと呼称されるタイプの、「Sonnar 50mm F1.5」です。
ヘリコイドはなく、ボディ側に搭載されたヘリコイドでピント合わせを行います。このようなレンズタイプを一般的に「内爪」と言います。
2.現代のゾナー
そんな発売から90年以上経過したSonnar 50mm F1.5ですが、現在でも精神的な後継品ともいえるレンズが販売されており、それが「Carl Zeiss (カールツァイス) C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM(ライカM用)」というレンズ。
レンズ構成は典型的なゾナータイプを踏襲しつつ、コーティングは現代のツァイス独自の「T* コーティング」が施されており、描写性能が底上げされています。
今でも新品で手に入る本レンズは2006年から販売されるロングセラーで、国内外のユーザーからも定評があります。
そして、そんなC Sonnar T* 50mm F1.5 ZMをモディファイした、さらなる変わり種として次のような限定モデルが発売されました。
それが、冒頭にご紹介した「Carl Zeiss (カールツァイス) Sonnar T* 50mm F1.5 Limited Edition (ニコンS)」です。
本レンズは、光学設計は Sonnar T* 50mm F1.5 ZMと共通ですが、「ニコンSマウント向け」として設計されてたものとなっており、同一の取り付け部形状を持つ、オリジナルの旧コンタックスCマウントと大変よく似たレンズに仕上がっています。
同じくゾナー型でSマウントである、1949年発売の NIKKOR S・C 50mm F1.4と並べてみました。
類似したレンズ構成や、どちらも内爪式ということも相まって、よく似た外観になっています。
Limited Editionの名の通り、一説によると200本にも達さない本数を受注生産とされたため、流通数が大変少ない逸品となっています。
なぜオリジナルのような旧コンタックスCマウントではなく、ニコンSマウントなのか?という点についての推測ですが、タイミング的に、2000年、2005年に相次いでニコンS3、SPの復刻が行われた為、その流れだったのではないかと想像します。
一応、カールツァイスではなくフォクトレンダーブランドとしては、Bessa R2SやR2Cといったカメラが2002年に発売されており、そちらもそれぞれニコンSマウントやコンタックスCマウントの設計となっていますが、やや時期が離れているため、このカメラが考慮に入っていた可能性は低いかもしれません。
また、非常にContaxの名を関するカメラのうち、旧コンタックスCを採用するカメラボディは1954年発売のContax IIIaが最終となり、ニコンSマウントではなくコンタックスCマウントの採用は、メーカーサポートが難しい範囲として断念した可能性もあるかもしれません。
こちらはレンズ構成を同じとする C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM(ライカM用)と並べた様子。
Limited Editionと異なり、フォーカスヘリコイドを内蔵している為、比較すると太めの鏡筒となっています。
さて、そんなSonnar T* 50mm F1.5の写りについてですが、レンズの設計上、コマ収差は良好に補正される一方、球面収差と非点収差により、開放では柔らかな描写を楽しむことができます。
特にアウトフォーカス部のハイライトでは、軸上色収差も伴いドリーミーな印象。
とはいえ甘すぎて使いづらいということもなく、クラシックテイストで多少実用的なレンズの選択肢としては、まさにオススメなレンズと言えましょう。
実際に触ってみた印象としても、コントラストの高い光源などの部分は緩めな描写である一方で、画面全体で見た時には不思議とまとまりのよい感触を得ます。
なお、今回ご紹介したCarl Zeiss (カールツァイス) Sonnar T* 50mm F1.5 Limited Edition (ニコンS)については、内爪タイプに対応したマウントアダプターを用意すれば、現代のミラーレスカメラでも使用可能です。
1930年代から脈々と受け継がれてきた、ゾナータイプの源流の一辺。その目で確かめてみるのはいかがでしょうか。
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