
【Leica】A Piece of PREMIUM COLLECTION – ZUNOW 50mm F1.1 (ライカL) 後期型 –
MapCameraで取り扱う中古品の中で、流通数や生産数が少ない希少品や限定モデルなどに与えられる名称、「PREMIUM COLLECTION」。
本シリーズでは、A Piece of PREMIUM COLLECTIONと称し、そんな製品たちを一つずつ紹介いたします。
第九弾となる今回は、「Zunow ZUNOW 50mm F1.1 (ライカL) 後期型」をご紹介いたします。
根強い人気のあるレンズ。今回はそんな魅力の一端に迫ります。
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・帝国光学(Zunow光学)の始まり
帝国光学の始まりは、1930年(昭和5年)に鈴木作太氏によって設立された帝国光学研究所です。
当時世界恐慌の影響を受け、日本でも昭和恐慌が深刻化し未曽有の大不況に陥る一方で大都市(東京や大阪)では、地下鉄が開通し、家に電気、ガス、水道が引かれ始めるなど、近代化が進展している側面もありましたが、裕福な家庭に限られる贅沢品も多くありました。
そんな中、前身となった帝国光学研究所は設立24年後の1954年(昭和29年)、会社が法人化され帝国光学工業株式会社となりました。

同社は、後に「ズノー(Zunow)」というブランド名で知られる、世界的に注目を集めたレンズを開発。
このズノー(Zunow)という名前の由来は、諸説ありますが日本語の「頭脳」という言葉からきていると考えられています。
開発のきっかけとなったのは1943年(昭和18年)第二次世界大戦中、大日本帝国海軍からの要請を受け、薄暮時の航空検索と偵察活動のためにF1.1という非常に明るいレンズの開発に挑みます。
当時一般的に明るいレンズとして認識されていたのがF値1.5でしたが大日本帝国海軍からの要請はそれを上回るF1.1。
帝国光学工業株式会社の鈴木作太、技術部長浜野道三郎の両氏はレンズ開発のために五万枚の設計図を作ったと言われ十年がかりでやっと完成させたのが5群9枚構成の『Zunow 50mm F1.1(前期型)』。
1953年(昭和28年)に発売となったZunow 50mm F1.1(前期型)は、ライカLマウント、コンタックスマウント、ニコンSマウントのものが作られ後ろ玉がレンズ外部に出ていることから「ピンポン玉」の愛称でマニアの間では知られています。

その後、前期型が販売開始されたころ日本光学から国友健司氏、八洲光学から藤陵厳達氏が入社し前期型の改良点であった凸レンズを含む後群構成を新種ガラスを3枚含む5群8枚構成に再設計し、後玉が凹レンズに変更されたモデルいわゆる後期型が1955年に完成されました。
後期型の製造番号は約5400番台からとなっており、ZUNOW 50mm F1.1(前期型・後期型、およびマウント違いを含む)生産総数は約800~1000本とも言われています。
同時に前期型のピンポン玉と呼ばれたレンズの改修も開始したため、製造番号上は前期型であっても、レンズ後部がフラットになっている固体も多数存在します。
さらに1955(昭和30)年にはズノー光学工業株式会社に社名を変更。
そのため、5500番台の途中からレンズ前面のリングに刻まれた銘が「Teikoku kougaku」から「Zunow Opt.」に変更されています。

・Zunow 50mm F1.1の実力
本レンズの特徴とも言えるレンズ設計は、レンズの絞り前半はゾナータイプですが、後半は多年の研究によって生み出された「ズノータイプ」になっているところ。
当時世界一の明るさF1.1を誇り、戦後間もない日本の光学技術力を世界に示した金字塔と言える努力の結晶が伺えます。
この登場を契機に、国産の超大口径レンズ開発競争が勃発し『Zunow 50mm F1.1(前期型)』発売から数年後には、日本光学工業(現ニコン)もニッコール5cmF1.1を発売(1956年)。
大口径レンズの開発は遅れていたドイツの名門カメラ、Leicaは非球面レンズを搭載することで日本との差を埋めようと努力してきました。
帝国光学はまさしく世界の光学技術史に残る挑戦を成し遂げてきたメーカーと言えるでしょう。
今も多くのマニアの間で愛されるZUNOW 50mm F1.1 (ライカL) 後期型の描写は、F値の絞り次第で大きく変化します。
開放のF1.1ではピント面はキレの良い描写で、基本的に甘く柔らかなボケが楽しめます。
しかしF値を絞るとキレの良さは広がり、別物のレンズ付けているかのような感覚さえ覚えるほど二面性を持った一本です。
この後期型にも、鏡胴の色や仕上げにバリエーションが存在し初期のクローム鏡胴から、最後期には非常に希少な全黒鏡胴のモデルまであり実際の生産本数は不明ですが、市場に出回る機会は非常に少ないことは確かです。

いかがでしたでしょうか。
「Zunow ZUNOW 50mm F1.1 (ライカL) 後期型」をその手にすること。
それは単に50mmの明るいレンズを1本手に入れたという事実にとどまらず、時代を超えて様々な人の手に渡って受け継がれてきたレンズの思い出を、今度はあなた自身が未来へと継承していけることへの喜びを手にしたとも言えるのではないでしょうか。
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