【マップカメラ情報】RICOH GXR レポート
■「ユニット交換式カメラシステム」が示した解答
2009年12月18日に発売されたRICOH GXRはレンズと撮像素子及び映像エンジンを一体型にしたレンズユニットを被写体や撮影環境に合わせてフレキシブルに選択できる「ユニット交換式カメラシステム」をはじめて採用した新製品です。
しかしなぜ「ユニット交換式」なのでしょうか。現に昨今OLYMPUSやPanasonicのマイクロフォーサーズ機、つまりミラーレスにより実現した小型軽量のレンズ交換式デジタル一眼がコンパクトデジカメのステップアップや他社レンズとの高い互換性により注目を集めています。そんな中「ユニット交換式」というシステムには少なからず違和感を覚える方もいるはずです。筆者自身、GXRの発表を知った時には少々きわもの的なカメラに感じてしまったことも事実です。しかし、この「ユニット交換式」のGXRを知るにつれて、他機種には無い多くのメリットと可能性を実感しました。
まず、ボディとともに発売したレンズユニットが2つあります。その一つであるRICOH LENS S10 24-72mmF2.5-4.4VC は手ぶれ補正とともに1cmまでよれるマクロを搭載し、GX200に似たコンパクトデジカメのような使い方ができます。また、約1230万画素のAPS-CサイズのCMOSセンサーを搭載したRICOH GR LENS A12 50mmF2.5 MACROを使えば、ボケ味や低ノイズ感を重視したデジタル一眼のような使い方もできます。まさに、ユニット分だけカメラを所有しているような感覚で、これにより被写体や撮影環境に合わせて、極めてフレキシブルに持ち回すことができるのがGXRの大きな魅力です。
また画質面においてもレンズ、撮像素子や映像エンジン、つまりは画質をつかさどるすべてのシステムを交換する為、常に最適な相性で作り出された画像を得ることができます。時代とともにスペック的に見劣りしてしまうデジタルカメラのジレンマともいうべき課題を、RICOH GXRはユニット交換という形で一つの解答を示しています。
まだ、仮定の話ですが、フルサイズのCMOSセンサー搭載タイプやマウントアダプターを取り付けられるユニットが開発されれば、画質や互換性といった部分まで大きくカバーする唯一無二のカメラに化ける可能性を秘めています。今後のレンズユニットの開発には非常に大きな期待と注目が集まることでしょう。
■カメラユニットGR LENS A12 50mmF2.5 MACRO
ボディと同時発売したカメラユニットGR LENS A12 50mmF2.5 MACROはGRレンズの名に恥じない高品位な描写力です。開放F2.5から非常にシャープで周辺部まで乱れの無い卓越した描写性能を実感できます。また、APS-Cサイズの大型CMOSセンサーを搭載していることもあり、暗部やハイライト部にはねばりがあり、逆光時のようなコントラストの差が激しいシーンにも絵が崩れることの無い余裕のあるダイナミックレンジが伺えます。さらに、ISO1600での低ノイズ感もすばらしく、暗い場所でも立体感のあるクリアな描写が可能です。
何より、GRレンズの素直でやわらかいボケ味とくっきりシャープな画像処理もあいまってか、レタッチ作業の必要性を感じさせない完成度の高い画質が目を引きました。そして口径わずか40.5mmの小型レンズとGR DIGITAL IIIより一回り大きいだけのこの小型ボディが作りだしたとは思えない高画質に感動すら覚えました。
■GRの意匠を受け継いだ外観と操作性
新システムが採用されたとはいえ、外観と操作性はあくまで「GR」なのがGXRの良さでもあり、機動性を重視するコンパクトカメラへのリコーのこだわりすら感じさせてくれます。
外観はユニット交換式であることを感じさせないボディとレンズの一体感がすばらしく、ぐっと持った時のたわみやきしみも感じられません。しっかりとしたマグネシウム合金の剛性感にとても好感が持てます。また、GR DIGITAL IIIよりも少し突き出た形状のグリップ部も指の引っかかりがよく、良好なグリップ感です。多少重みのあるGR LENS A12 50mm F2.5 MACROでもしっかりとバランスをとってくれました。
操作系は2つのFnボタンやADJレバー内に好みのカメラ設定を割り当てることができ、撮影シーンへの即応性はGRシリーズから引き続きとてもよくできています。ちなみに筆者は背面方向キーの右と左に割り当てられた2つのFnボタンには「AF→MF」と「JPEG→RAW」への切り替えを割り当てていますが、どちらの切り替えもまさにワンプッシュでできるので大変気に入っています。ADJレバー内の複数の設定項目も含め、この割り当てを決めるカスタマイズ作業は悩ましくも楽しいものです。
さらに、GXRから新設された「DIRECTボタン」でも主要設定を切り替えることができるようになりました。いわゆるコントロールパネルが液晶画面に開き、少ないアクションで設定変更ができます。しかもこのコントロールパネルは透過式なので背面に画像が見えたまま設定変更が可能です。透過率も変えることができ、色味や明るさなどの変更がダイレクトに画像に反映されるので視覚的にもわかりやすく便利です。このボタンの新設により、GRユーザーはもとより初めて使うユーザーにも配慮された軽快な操作性を実感できました。
■作例
(元画像を50%に縮小)
使用機材:RICOH GXR/GR LENS A12 50mm F2.5 MACRO
絞り:F4
シャッタースピード:1/330
ISO感度:200
画像設定:ビビッド
■GR LENS A12 50mm F2.5 MACROは素直なボケ味で単焦点レンズならではの魅力が存分に活かせる一本です。