【マップカメラ情報】PENTAX 645D レポート
これまでの常識を覆すカメラが現れた
ペンタックスの中判デジタルカメラは今から遡ること5年前、2005年3月のPIEで初めて開発が発表された。 発表と同時に多くのカメラマンや写真愛好家から注目を浴び、その後幾度となく仕様の変更や見直しが行われ、その発売を心待ちにしている声も次第に増えていった。 その後、一時は開発中断という事態にまで至ってしまったものの、2009年に開発が再開して2010年6月、満を持して645Dが発売された。 気付けば、発表から5年が経っていた。
発売が正式に決定し、まずその価格設定に驚いた。35mm判フルサイズのフラッグシップ機とほぼ同等という、中判デジタルカメラとして他に類を見ない価格。これで確実に中判デジタルカメラへの入り口が広がったに違いない。
現場で発揮される妥協の無い機能
撮像素子にはコダック社製のCCDセンサーが使われており、有効画素数約4000万画素、大きさは44mm×33mmで、35mm判フルサイズフォーマットの約1.7倍の面積だ。 デジタルカメラの高画質化が著しい昨今、これだけの画素数と面積を誇るセンサーはいったいどんな世界を見せてくれるのか。撮影前からいやがうえにも期待が高まる。
撮像素子が大きくなると、やはりどうしてもに気になってしまうのがセンサーのゴミ問題だが、本機についてはそれほど心配しなくても良いようだ。 CCDユニット表面のUV・IRカットフィルターを超音波振動させるゴミ除去機能(DRⅡ=Dust RemovalⅡ)と、万が一ホコリが付着してしまった場合、その位置を背面液晶に表示して清掃をしやすくするダストアラート機能が、撮像素子をゴミやホコリから守ってくれる。 もちろんこれらを過信しては良くないが、屋外で風のある日など普通ならレンズ交換を躊躇うような場面でも、レンズ交換は比較的しやすくなるはずだ。
ボディもとても良く作られている。防塵防滴仕様に加え、-10℃までの耐寒仕様、中判デジタルカメラとしては充分の耐久レリーズ数約5万回のシャッターユニットと、防護は万全だ。今回の撮影に使用したレンズ SMCP-D FA645 55mm F2.8AL [IF] SDM AW も防塵防滴仕様になっているので、この組み合わせなら更に安心だ。
重量バランスも悪くない。グリップがとても深いため、個人差はあると思うがホールド感が非常に良い。今回は渓谷を撮り歩いたのだが、足場の悪い箇所や岩場を渡るような不安定な場面でも、滑って落とすような恐怖感は感じなかった。
撮影中、便利だったのはこの電子水準器。液晶パネル自体の視認性がとても良いので感覚的に使いやすかった。更にファインダー内の露出バーも左右方向の水準器に切り替えることが可能。ファインダーを覗きながら構図と水平の確認が一度にできるので、リズム良く撮影することができた。
バッテリーの持ちも充分で、通常使用であれば思わぬところでバッテリーが切れてしまうという心配はまず無いだろう。予備のバッテリーも持って行ったが、結局半日撮影しても始めに入れたバッテリーの目盛りが減らなかった。
ミラーショックとシャッター音はフィルム機よりもかなり抑えられている印象だ。レリーズ時に起こるカメラブレの可能性はこれによりかなり少なくなった。もちろん、必要に応じてミラーアップ撮影もできる。
オートフォーカスは予想以上に軽快で、ピントが迷うようなことも無かった。
手ブレ補正機能は搭載されていないが、センサーの大きさと重量を考えれば、あまり望むべきではないのかもしれない。風景写真は三脚を使用するのがセオリーなので、これについては難しいところだ。
ストロボモード、カスタムイメージ、ドライブ、ホワイトバランス設定の各ボタンが独立して配置されている。ボタンの大きさも丁度良く押しやすい。速い連写を必要としないスタンスのカメラとはいえ、撮影は常にタイミングが命。設定変更はできるだけ迅速にしたいので、これは非常にありがたい。
空気まで切り取る圧倒的な解像感
本機に採用されたCCDユニットはローパスフィルターを搭載していない。それにより高い解像度を達成している。階調はとても滑らかで暗部がつぶれておらず、発色も自然でトゲが無い。 繊細な被写体も余裕で解像しており、まるで目の前にあって触れられるかのような立体感だ。
また、4000万画素ともなると写真1枚のデータ量も相当なものになる。RAWとJPEGの同時記録なら尚更だ。レリーズ後、背面液晶に画像が表示されるまでやや時間が掛かるが、続けての撮影は可能。とはいえ、メモリーカードは大容量で転送速度の速いものをオススメしたい。
中判デジタルで超高画素機でありながら、コンセプトは“フィールドカメラ”。そしてそれに相応しい防塵防滴、耐寒性能のペンタックス645D。 決して穏やかな環境ばかりではない現場のニーズに堂々と応えてくれるに違いない。
発表から5年。デジタルカメラとしては長過ぎる時間だった。 しかし、その時間は必要不可欠だったのだ。
“大器晩成”とは、こういうことを言うのだろう。
作例写真
■ 撮影機材:PENTAX 645D +D FA645 55mmF2.8AL SDM AW
(リンク先は50%にサイズを縮小してあります)
-
シャッター速度:1/50秒 / 絞り値:F8
ISO感度:100
-
シャッター速度:1/125秒 / 絞り値:F3.5
ISO感度:320
-
シャッター速度:1/15秒 / 絞り値:F8
ISO感度:100
-
シャッター速度:1/20秒 / 絞り値:F8
ISO感度:250
-
シャッター速度:1/25秒 / 絞り値:F7.1
ISO感度:250
-
シャッター速度:1/40秒 / 絞り値:F6.3
ISO感度:250
-
シャッター速度:1/40秒 / 絞り値:F6.3
ISO感度:250
-
シャッター速度:1/20秒 / 絞り値:F11
ISO感度:250
-
シャッター速度:0.6秒 / 絞り値:F10
ISO感度:250
-
シャッター速度:1/13秒 / 絞り値:F10
ISO感度:250
-
シャッター速度:1/15秒 / 絞り値:F11
ISO感度:250
-
シャッター速度:1/4秒 / 絞り値:F10
ISO感度:160
-
シャッター速度:1/640秒 / 絞り値:F3.2
ISO感度:125
-
シャッター速度:1/200秒 / 絞り値:F5
ISO感度:200
-
シャッター速度:1/640秒 / 絞り値:F8
ISO感度:200
-
シャッター速度:1/60秒 / 絞り値:F3.5
ISO感度:200
-
シャッター速度:1/800秒 / 絞り値:F6.3
ISO感度:200
-
シャッター速度:1/1000秒 / 絞り値:F6.3
ISO感度:200
PENTAX 645D のショッピングはこちら