
【Leica】これが、もう一つのMの形。レンジファインダーを離れた『M EV1』が驚くほど触りやすかった話
M型ライカに新たな1ページを刻む『Leica M EV1』が発売され、早くも3週間が経過しようとしています。
既に入手された方や、お手に取って試された方、気にはなっているけどまだ考えている方など様々な方が居られると思います。
今回は作例と共に所感などお伝え出来たらと思いますので、よろしければご覧ください。
ボディは『Leica M EV1』にレンズは『Carl Zeiss C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM』と『Leica Summilux 28mm F1.4 ASPH.』です。

Leica M EV1 + Carl Zeiss C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM
分かりやすくEVFである利点を挙げるならば、コサイン誤差を気にする必要がなくなったという事でしょうか。
レンジファインダーシステムのカメラはファインダー内中央部の二重像でピントを合わせる必要があるため、例えば三分割構図の交点に被写体を置きその交点でピントを合わせたいと思っても、交点に被写体を置いたままピント合わせが出来ません。
一度中央の二重像でピントを合わせた後、カメラを振る必要があり特に大口径レンズなどではコサイン誤差を計算しながら撮影してあげるか、日の丸構図で撮影を行う必要がありました。
1枚目の写真についても三分割線に合わせて被写体を配置してファインダーを覗きながら撮影を行っていますが、この辺りはEVFならではの体験なのではないでしょうか。

Leica M EV1 + Carl Zeiss C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM
また、何故このレンズを選んだのかというところですが、『C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM』については製品的な特長として、絞り値によってピントがズレていくフォーカスシフトという現象が発生するレンズとなっており、設計上F2.8以降で正しいピント位置になると言われています。
つまり、F1.5-F2.4の間では絞りは絞り値によって厳密なピント位置が少しずつずれていくのですが、EVFでの撮影であれば常にプレビューを行っている状態での撮影となりますので、フォーカスシフトについても気にせず撮影できるという事です。

Leica M EV1 + Carl Zeiss C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM
レンジファインダーで撮影をする場合、ブライトフレームで撮影範囲を確認する必要があったため実際に撮ってみたら意図しないものが写り込んでいたとか、思っていた通りの露出になっていなかったという事があったと思いますが、
EVFではレンズからセンサーに取り込んだ光を液晶を通してそのまま見る形になりますので、構図決めが行いやすいというのも魅力的。
露出についても撮影しながら決めたい形を詰められるのである意味ユーザーフレンドリーなカメラであると言えるでしょう。

Leica M EV1 + Carl Zeiss C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM
レンジファインダーはレンジファインダーで撮影範囲の外側が見えるカメラとして特にスナップなどには絶大な力を発揮するカメラだとは思いますし、露出に関しても感覚を覚える事による想像力の向上という点はとても大事な要素だとは思いますが、ライカとしてより取っ付きやすいのはどちらか?と言われたら『Leica M EV1』と答えるかもしれません。

Leica M EV1 + Carl Zeiss C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM
こちらは左のドアノブにピントを置いてみました。特にこのくらいの近接撮影になった場合、レンジファインダーの撮影ではコサイン誤差を避ける事がほぼ不可能です。
コサイン誤差が発生する事を見越して、ピントを少しずらしたりする必要があったかと思いますが、これだけ画面の端でも問題なくピント合わせが行えるようになりました。

Leica M EV1 + Carl Zeiss C Sonnar T* 50mm F1.5 ZM

レンズについてももう少し触れておきましょう。銘に入った『C』は往年のコンタックスレンジファインダー用レンズとして名を馳せたオリジナルのレンズ、『Sonnar T* 50mm F1.5』をZMマウントに装着できるよう新たに設計されたレンズとなっています。往年のコンタックスI/II/IIIなどで使われていたマウントは、『旧コンタックスCマウント』などと呼称されておりそこからの『C』とも考えられますし、Classicの頭文字を取ったものかもしれません。
コーティング等はもちろん現代のものが使われていますが、絞りを開ければ柔らかく、絞りを絞ればシャープになっていく二面性の楽しめるレンズです。こちらは絞り開放最短付近の撮影です。Sonnarタイプらしい溶けるようなボケが印象的。

Leica M EV1 + Summilux 28mm F1.4 ASPH.
続いて『Summilux 28mm F1.4 ASPH.』での撮影です。関東平野部の紅葉は本格的とは言えずまばらな状態だったので、敢えて木々にピントを合わせず前景の柱にピントを置いて、ボケで絵を作ってみました。
左の柱にピントを置くようなコントロールを行っていますが、準広角域のレンズでもこれだけの明るい開放F値を持つレンズの場合、被写界深度がかなり浅くなります。

Leica M EV1 + Summilux 28mm F1.4 ASPH.
また、フレーミングのし易さも嬉しい誤算でした。普段眼鏡をかけながら撮影しているのですが、レンジファインダーでの撮影の場合28mmのブライトフレームというのは最も外側にあるブライトフレームとなっています。
眼鏡をかけながらとなると接眼距離が離れるため、28mmの枠というのは見渡す事がなかなか大変な画角です。
サンルームに差し込む西日に美しさを感じカメラを向けましたが、ピントは椅子の背もたれの辺りに置いてあります。見切れているテーブルには物を置かないよう注意書きが添えられていましたがEVFで撮影出来た事で確実なフレーミングが行えました。

Leica M EV1 + Summilux 28mm F1.4 ASPH.
Summilux 28mm F1.4 ASPH.についても触れておきましょう。単体での販売がされ始めたのは今から10年前となる2015年6月ですが、元々はライカ100周年を記念した『ライカMエディション100』というボディ2台とレンズ3本が同梱された限定セットが2014年に発売されており、最初はこの限定セットにしか同梱されていない大変レアなレンズでした。7群10枚というレンズ構成の中に7枚もの異常部分分散ガラスを用いており、高い色収差補正力を持ち合わせながらアポズミクロンなどでも採用されているフローティング機構を搭載するなど、近距離撮影時の収差についても高い補正力を持っています。光学設計としては既に11年前のものですが、28mmF1.4というスペックでは現在においてもこのレンズが最新モデルとなっており、今でも第一線で活躍する高性能レンズです。光の機微を繊細に捉えるレンズであると感じます。

Leica M EV1 + Summilux 28mm F1.4 ASPH.

Leica M EV1 + Summilux 28mm F1.4 ASPH.
こちらの写真は傘の受け骨辺りにフォーカスしていますが、こういった連続した縦線のような被写体についても本来のレンジファインダー機あればピント合わせに難儀するところではないでしょうか。まだ合わせやすい被写体だとは思いますが、どの縦ラインに対して二重像で合わせようか迷ってしまう事もあると思います。

Leica M EV1 + Summilux 28mm F1.4 ASPH.
Mマウントレンズがネイティブに楽しめるボディ、という意味ではライカのエッセンスを感じますが従来のレンジファインダーとは大きく異なる特性を持ったカメラ『Leica M EV1』。
既存のシステムを置き換えるものではなく、それぞれの得手不得手があると感じでいます。特に撮影範囲外も見渡すことができるというレンジファインダーならではの特性はEV1が出ても覆る事はなく、真の意味でスナップに適しているのは往年のM型システムだと感じられます。
それに対して構図の確実性や、コサイン誤差を気にすることの無い撮影など、今までのM型ライカでは考えられなかった事が出来るようになりましたし、何よりミラーレス一眼が普及した今、Mマウントレンズがネイティブに使えるという意味で初めてのM型ライカには持ってこいの機種かもしれません。




