
フォクトレンダーの中でも特に高性能な製品に与えられる「アポランター」という称号。
詳しくはこちらの記事で言及しておりますが、軸上色収差を徹底的に抑えたアポクロマート設計による高い描写性能を有しているのがアポランターというレンズです。

そんなアポランターですがZマウント向けにはこれまで50mmと35mm、そしてマクロの65mmが発売されていましたが、今年の1月末に新たに広角の28mmが仲間入りしました。これまでもライカMマウント用で同じ構成のレンズが発売されていましたが、デザインを新たに、そして電子接点を搭載し更に使いやすくなった28mmのアポランター。
その最高性能を証明すべく、クラシカルな見た目のNikon Zfに装着して旅に出ました。

普段専ら単焦点レンズを使うことの多い筆者。とりわけ50mmを使用することが多く標準域は複数本所有している一方で広角レンズには苦手意識がありましたが、この一枚だけですっかり虜になってしまいました。レンズの素性を見たいので普段からまずは開放で撮影することが多いのですが、開放での描写があまりにも魅力的だったので、結果的に今回の旅を通じてほとんどのカットを開放で撮影しました。

旅行に出たのはちょうど関東が梅雨入りした頃。東北は少し梅雨入りが遅いということで雨から逃げるようにして山形へ飛びました。
今回の目的は山に登ること。とはいえ登山の経験がほぼない筆者は、往復およそ5時間ほどのコースを組みました。
カメラとレンズは出発前相当悩みました。体力にも自信がないのでなるべく軽く、それでいて画質に妥協はしたくない。そこで選んだのが今回の組み合わせです。
結果的にこの判断は大正解でした。レンズの性能は前述したとおりですが、ボディに関してもZfはクラシカルな見た目でありながら操作系も良好で軽量。外観はもちろん使い心地も写りもとても良いものでした。

山の天気は変わりやすいと聞いたことがありましたが、ここまでとは思いませんでした。雲の流れが非常に速く、数分前まで見えていた道が見えなくなることもしばしば。写真を撮る上では光の状況は何よりも大事といって差し支えないので、目まぐるしく変わる光線の状態を逃さないためには高い操作性も重要です。マニュアルフォーカスのレンズは一見不向きに聞こえますが、APO-LANTHAR 28mm F2はピントが立つような高い解像性能のおかげでピント面が掴みやすいです。またボディについてもフォーカスピーキングや画面拡大、そしてファームウェアアップデートで追加されたシャッター半押しでの拡大解除を併用することでほぼノータイムでピントを合わせることができるようになりました。

貴重な晴れ間を狙って撮影した写真。絞り込んでさらに画面全域にわたって均質な描写を求めました。
クリアな描写は、ここを歩いていて気持ちが良かったという思い出を鮮明に思い起こしてくれます。

この時期の登山の楽しみといえば高山植物。こちらはイワカガミという植物の花だそうです。絞り開放で最短に近い近接域を撮影しても描写力は落ちません。
ボケも素直で綺麗な印象です。

目的地の火口湖に辿り着きました。ここまでの行程がおよそ2時間、カメラを持っていることによる疲労は全く感じませんでした。むしろ時折止まりながら撮影をすることでいい休憩になったと思います。運動不足の筆者ですが疲れを忘れるほどの絶景でした。

2日目は山あいのお寺へ。RAW画像から思い切ってシャドウを持ち上げましたが、ここまでパラメーターを上げても破綻しない写りは流石です。

Zfはクラシカルな見た目ですがバリアングル液晶を搭載しており、ローアングルからの撮影も簡単です。
解像度の高いレンズはその代償としてボケが硬くなることがありますが、このレンズは前ボケも自然で綺麗です。

露出をアンダーに振ると、フォクトレンダーのレンズはさらにその魅力を増すと思っています。
ほどよい周辺減光も相まって、山の中の静かな空気が伝わります。

さて、広角レンズが苦手な筆者が28mmという画角のレンズをここまで愛用するようになった理由ですが、私なりに理由を3点考えました。
まずは圧倒的な解像性能。28mmでワイドに被写体を捉えながらも、色収差を抑え込み画像を拡大すればどこまでも破綻なく写るその描写が私にとってちょうど良かったのだと思います。
2点目に程よく周辺減光が出ること。周辺減光が嬉しい場面、嬉しくない場面両方があると思いますが、個人的には写真の雰囲気として周辺減光が光学的に出てくるのはむしろアリだと思っています。そして周辺減光の額縁効果によって自然と中央に視線が向かうという効果もあります。普段標準レンズを愛用している筆者としては、主題を一意に定めやすく使いやすいのです。もちろん絞り込めば周辺減光は無くなるので、風景撮影時には絞ってあげれば癖のない広角レンズとしても使用できます。

そして最後、おそらくこれが一番効いているのですが、モノとしての質感の高さです。フォクトレンダー製レンズ全般に言えますが、撮影していて楽しいということが結局何よりも大事にしたい点です。見た目でも操作性でも楽しむことができます。特に今回装着したZfとの相性は抜群です。同じアポランターの35mmや50mmと比較してレンズ全長が短く、より一体感があるのもお気に入りのポイントです。
またコンパクトなので今回のような登山でも邪魔にならず、旅行の際も標準レンズのお供として1本忍ばせておくこともできます。
筆者のように広角に苦手意識を持っている方にこそお試しいただきたいレンズ「Voigtlander APO-LANTHAR 28mm F2 Aspherical」。広角レンズの概念すら変えてくれる1本、是非一度お試しください。
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