
【Voigtlander】APO-LANTHAR 50mm F3.5。色収差を極限まで抑えた圧倒的な解像力をレビュー
Voightlander製の一部レンズに名付けられた「APO-LANTHAR」この名前が付けられているレンズたちはVoightlanderが製造するレンズにおいて「史上最高性能」を冠するいわばフラッグシップレンズになります。今回はそんな史上最高峰のAPO-LANTHARシリーズである『APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM Type I』をご紹介いたします。使用したカメラは「Leica M11-D 」と「Leica Mモノクローム 」になります。

まずは「Leica M11-D 」を使用した作例からご紹介いたします。『APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM Type I』は製品名にAPOが付く通り、アポクロマート方式を採用したレンズになります。アポクロマート方式とは光の3原色の軸上色収差を限りなくゼロにする設計になります。より簡単に説明するとフリンジがほぼ発生しないレンズ設計になっています。それに加えて6群8枚のレンズ構成のうち4枚に異常部分分散ガラスを採用しており開放F値から解像度・コントラスト高く撮影する事ができるレンズです。そして同じ光学系を採用したAPO-LANTHAR 50mm F3.5 VM Type IIも存在しますが、「外観デザイン」「最短撮影距離」「フィルター径」の3点が主な違いでレンジファインダーユーザーであれば外観の好みで選んでも全く問題ありません。筆者は沈胴式のような見た目と現代ではあまりない小口径が好きなので、今回はType Iを選択しました。もし、マウントアダプター経由で使用される場合はType II の方が最短撮影距離が短いので、実際に試してみる事をおすすめします。 
周辺減光が若干あるものの、画像のどこをとっても均一して非常にシャープに写っています。とてもクラシカルな外観から吐き出す絵とは思えないほどです。
開放F値が3.5スタートなので背景を大きくぼかした写真や暗いシーンは苦手としていますが、光を確保できる場所であればこれ以上ないと思うような描写性能を誇ります。もしより明るいF値や大きなボケ感が必要であれば、「APO-LANTAHR 50mm F2 Aspherical」のラインナップもあるので、そちらも要チェックです。

『APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM Type I』は「ツートン」「マットブラックペイント」の通常ラインナップと限定色の「オリーブ」「グレー」「ネイビー」の計5種類のカラーバリエーションがあります。1つのレンズにたいしてこれだけのラインナップが存在するのも非常に珍しく感じます。残念ながら現在新品で入手出来るのは通常色のみになります。ちなみにツートンは鏡筒に真鍮を採用していますが、マットブラックペイントにはアルミを採用しています。そのためカラーによって重量も異なります。アルミを採用したマットブラックペイントは約150gを達成しており、この描写性能からは考えられない重量です。外観の素材の違いだけで、描写の差異はないのでレンズ本体の質感を重視するならツートンを、とにかく総重量を減らすならマットブラックペイントを。という具合で選んでみるのも良いでしょう。

夕暮れに1枚撮影しました。海面に反射する夕陽も色がおかしくなることもなく非常に自然で再現性が高い色味です。シャドウ部の情報量も非常に高く、各種編集ソフトを使用してHDR風の写真にする事も容易です。特に夕陽と青空のグラデーションが非常に美しく価格以上の性能を有していると確信しました。

夕陽が差す薄暗い室内を撮影しました。画像中央部に1つゴーストが確認できます。フィルター径はコンパクトですが、他のレンズと比べると若干逆光性能は弱いかもしれません。撮影時は専用フードをつけていなかったのでその影響もあるでしょう。無理していない開放F値のおかげで開放で撮影してもピント面だけが誇張されることなく、前後のボケ味へと緩やかに溶け込んでいくような、非常にナチュラルで立体感のある空気感を演出してくれます。

さて、カメラを変えて「Leica Mモノクローム」で撮影した作例をご紹介いたします。カラーフィルターが物理的に存在せず、画素数に対して解像感が高いカメラとの組み合わせは、『APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM Type I』が持つ本来のポテンシャルと、線の細い緻密な描写力をこれ以上ないほど限界まで引き出してくれました。とても2012年発売のカメラから吐き出される絵とは思えないほどしっかり描写してくれました。

元々解像度とコントラストが高いレンズですが、CCDセンサーが醸し出す独特の質感との組み合わせは、被写体の輪郭をただシャープに見せるだけでなく、その場の温度や湿度までも閉じ込めたような立体感をもたらします。ハイライトからシャドウへ至る豊かなグラデーションは、このカメラとレンズのコンビだからこそ成せる業でしょう。


ビルの外壁を覆う無数の窓枠や、グリッド状の構造が、画面の隅々に至るまで非常にシャープかつ緻密に描写されています。レンズの極めて高い描写性能が完全に合致し、線の潰れが一切ないソリッドな写りになっています。レンズ補正がない状態でこれだけ歪まずに写る補正力は近年のレンズでは非常に珍しい部類でしょう。

最後に雨上がりの紫陽花を撮影しました。近距離での撮影も十分過ぎるほど解像します。
いかがでしょうか。今回は簡単ではありますが『APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM Type I』を2つのカメラを使用してご紹介いたしました。これ以上ないと言っても過言ではない非常に優れた解像性能はVoightlander製レンズのトップと言っても過言ではないでしょう。下記に同じレンズを紹介したレビュー記事があります。実際のレンズの写真も多数掲載していますので、ぜひご覧ください。



