
山へ向かう日、ザックを詰める手をふと止めて考えることがあります。
「今日はどのカメラを連れて行こうか」と。
登山は身体も時間も拘束されますが、そのぶん“写真と向き合う密度”は街中とはまったく違うものになります。
光の移ろい、空気の厚み、風の匂い。
フィルターを通さずに、感情のままに撮りたいと思ったとき、私が手に取ったのは FUJIFILM『X-Pro2』と『XF35mmF1.4 R』でした。

ズームでもなく、最新のAFでもなく、手ぶれ補正もない。
でも、この組み合わせでなければ撮れなかった写真が確かにあった──。
昨年の初秋、大菩薩峠で撮影した写真とともに、その“理由”をゆっくり紐解いていきたいと思います。


X-Pro2を山に連れていく理由
大菩薩峠の登山口に立ったとき、X-Pro2を手にした瞬間にすっと気持ちが整うのを感じました。
レンジファインダーライクなデザイン、必要な情報だけが並ぶファインダー。
スペックより “撮るときの感覚” が優先されるカメラだからこそ、山ではちょうど良い相棒となります。
最新のAF速度や手ぶれ補正を求めるなら他の選択肢があるでしょう。
それでも「写真を撮る行為そのものが楽しくなる」。この体験価値がX-Pro2の大きな魅力であり、
山の静かな空気ともよく馴染み、リラックスして撮影を行えました。


X-Pro2というカメラを山で感じる
2016年登場の『X-Pro2』は、現代の最新スペックと比べると控えめな性能かもしれません。
しかしこのカメラには、数字では計れない“唯一無二の魅力”があります。
感覚が研ぎ澄まされる山で使うからこそ、その魅力が引き込まれるのです。
特徴的なのがハイブリッドビューファインダー。
光学ファインダーを覗きながら電子的なフレームラインで画角を把握できるため、
動きながら構図を探す登山で驚くほど扱いやすいのです。
「被写体を直接見ている感覚」と「写真のフレーミング」が同時に成立する心地よさ。
そして物理ダイヤルによる操作。
ISO、シャッタースピード、露出補正がカチッと動くたびに、
撮影のリズムが整い、写真に“理由”が生まれます。
大菩薩峠の早朝、木漏れ日に合わせて速度を一段変えただけで、
自分の中で風景との距離感が近づき、まるで吸い込まれるような不思議な感覚がありました。



35mm単焦点で歩くと、景色が丁寧に見えてくる
『XF35mm F1.4 R』は“神レンズ”と呼ばれるほど人気の高い一本。
開放で生まれる柔らかな滲みと、しっとりとした階調は山の光と影をすくい取るように写してくれます。
ズームが使えないからこそ、足を運び、身体を動かし、構図を探す。
35mmは広すぎず狭すぎず、登山道の空気感から足元の草花まで、様々なものを写してくれます。
35mm判換算53mmの画角はまさに自身が見たそのままの感動をそのままに残してくれました。
手ぶれ補正が無い点も、開放F1.4ならあまり気になりません。
木陰でもシャッタースピードをしっかり稼げるため、登山中のスナップも軽快でした。


開放F1.4が捉える“山の空気”
『XF35mm F1.4 R』の魅力は、解像感よりも“空気の描写”にあります。
ピント面はしっかりと芯があるのに、周囲のボケは柔らかく、どこかフィルムのような雰囲気を纏います。
大菩薩峠の山肌に差し込む光、木々のざわめき、湿り気を含んだ風。
その場で感じた温度や匂いまで一緒に写っているように感じられました。


35mm単焦点一本で歩く贅沢──大菩薩峠が教えてくれたこと
大菩薩峠は、樹林帯から稜線、草原まで風景の幅が広く、ズームが欲しくなる場所です。
しかし、あえて35mm一本で歩いたことで、
写真の“解像度”ではなくカメラ、レンズに対する自身の解像度が高まる体験をしました。
ズームがないことで、構図は自分の足で探すことになります。
どの高さに構えるか、どこに立つか、どれだけ寄るか。
そうした一つひとつの行動が写真へ必然性を生み、
「撮らない自由」と「撮る理由」が自然と明確になっていきました。
このような環境で写真を撮ることは、風景と対話する行為だと感じます。
単焦点一本で歩くと、会話のテンポがゆっくりになり、
その場の空気をごまかさずに受け取れる。
それが何よりの“贅沢”でした。



おわりに:山は“好きなカメラ”が似合う場所
登山に最適なカメラは、必ずしも最軽量でも高性能でもありません。
「持っていて気持ちがいいか」「撮りたいと思わせてくれるか」——
山ではその要素がとても大切だと感じます。
山で写真を撮る行為は、装備の重さ以上に、
自分がどんな風に風景と向き合いたいかを問われる時間だと思います。
『X-Pro2』 と 『XF35mmF1.4R』 は、スペックでは測れない“撮る理由”を思い出させてくれる組み合わせでした。
最新機材ではないけれど、便利さより、感性が勝つ日があってもいい。
そんな道具と一緒に歩く山は、いつもより少しだけ優しく、少しだけ深く見えました。
そして、そんな気持ちに寄り添ってくれる相棒とともに、次の山へ向かいたくなります。
いずれも発売から時間が経ったモデルですが、写真の“味わい”という観点でいえば色褪せない魅力があります。
中判とはまた違う、APS-Cならではの距離感と軽快さを楽しみたい方におすすめの組み合わせです。

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