
1. スペック競争の熱狂から、少しだけ距離を置いて

並べた、2つのプロダクト
下に敷いているのはヒグチユウコさんデザインの「くっつく布」で、普段カメラを包むのに使っています
カメラ専門店という場所に身を置いていると、日々、驚異的な技術革新の最前線に触れることになります。
秒間数十コマの連写、瞳を逃さないAF、現実以上に鮮やかな色彩。
これらは素晴らしい達成であり、多くの人に恩恵をもたらしてくれています。
一方で、それがどこかレールを敷いてもらっているような気持ちになることがあるのです。
機材に撮らされるような、そんな感覚です。
そこで最近の筆者の手には、「FUJIFILM X-HF1(通称:X half)」という最高にイカしたカメラがあります。
そしてその傍らには、GUCCIとヒグチユウコ氏が紡ぎ出した、特別なトランプもあるのです。
一見、関係のない二つのプロダクト。
しかしこれらを並べたとき、そこには「そのまま使わない」という、強い自己表現の意志が浮かび上がります。
筆者がカメラを、単なる撮るための機械ではなく、自分らしく「着飾る」理由。
それは、このカメラとトランプが教えてくれた、モノと人との特別な関係性にあります。
2. トランプケースを「財布」として再定義する
GUCCIと画家・ヒグチユウコ氏のコラボレーションはこれまでもあり、ファンを熱狂させてきましたが、こと今回のトランプとケースのセットは、世間の熱量がさらに特別なものでした。
事実としてこのアイテムが店頭に並ぶことはなかったと聞いています。
世に出る前に行き先が決まってしまうのです。
ブランドと顧客という共通の価値観を持つ人の間で生まれる、金銭的な価値を超えた「ブランドとの共犯関係」です。
今回の新作を見たときに、筆者の視線はトランプのカードそのものよりも、それを収めるケースに釘付けになりました。
上品なイエローに、ヒグチユウコ氏による猫のイラスト。
しっかりした重厚な仕立てで圧倒的な質感があり、ファスナーについているチャームは表現と実益を兼ねています。もしこれが「新作のカードケース」としてショーケースに飾られていたら、間違いなく高額のプライスタグが付けられていたはずです。
筆者はこれを、おもちゃを保管するだけの「箱」として眠らせておくつもりは毛頭ありません。
ミニマムな財布として、日常のコーディネートの中に連れ出します。
ブランドが「トランプ用」と定義したものを、自らの審美眼によって「財布」へと書き換える。
この「役割の再定義」こそが、ファッションにおける最高の贅沢であり、筆者が提案したい「着飾る」ことの本質です。
トランプケースに価値を見出し、自分流に使いこなすという「崩し」こそが、その人のスタイルを作り上げるのではないでしょうか。
自分の心の声を聞き、自由に取捨選択することの積み重ねは、まさにファッションなのです。
3. カメラを着飾る:ストラップ一本から始まる愛着の作法

フィルムシミュレーションのチャーム、クリアビーズのストラップ、赤いレリーズボタン
この思想は、当然ながらカメラ選び、そしてカメラとの付き合い方にも直結します。
筆者の「X half(X-HF1)」はパーツを取り付けています。
赤いレリーズボタンはコーディネートのワンポイントになっています。
フィルムシミュレーションのチャームは、実は他のフィルムのものも持っているのですが、実際に最も愛用しているクラシッククロームを付けています。
キラキラしたストラップは軽く、見た目がいいだけではなく邪魔にならないのがお気に入り。
実はすべていただき物です。
大切なのは、自分なりの「手」を加えるという行為そのものです。
同じパーツを手に入れる必要はありません。
真似をすることがゴールではないからです。なんだっていいのです。
誰かが用意した「模範解答」に対して、自分というフィルターを通した一工夫を足し引きすること。
カメラを服のように「着飾る」という行為は、その機材を「誰のものでもない、自分だけの一台」へと昇華させるための儀式なのです。
自分の意志を介在させることで、指先に伝わる高揚感が劇的に変わります。
4. 「2in1」の視点が繋ぐ、二つの風景

どちらもカラフルな花

2人の気配

3人の気配

冬のオフィス街
ピザのデリバリーの方が連れ立って入っていきました

店の入口の左右に狛犬のように対で置いてあったオブジェ
「X half(X-HF1)」というカメラが持つ魔法のような機能についても触れておきたいと思います。
筆者は二つの異なる物語を一枚のフレームに閉じ込める「2in1」を、表現手法として愛しています。
「2in1」についての記事は何度か書いてきましたが、最近旅先で発見したのは、ご当地グルメとメニューを撮って「2in1」にするのが想い出に残すのにとてもいいということです。
「2in1」をアーティスティックに捉えすぎる必要はなく、そんなメモのような使い方だってハマるのが「X half(X-HF1)」なのです。
「X half(X-HF1)」はハーフカメラから着想を得ていて、ハーフカメラといえば画質が荒いのが特徴のひとつです。
多少ブレても、ピントが甘くても、ある意味ラフな使い方でもいいのだと思います。
「X half(X-HF1)」には手ブレ補正機能がありません。
当初はそれが不思議だったのですが、改めて考えてみれば「X half(X-HF1)」らしいと感じられています。
そういう懐の深さがこのカメラの魅力です。
軽量化のためなど理由があるのかもしれませんが、もし故意であってもしっくりきます。
とはいえ、二つの素敵な風景が隣り合うことで、ブランドが提示する静謐なアートの世界と、生々しく動いている自分の日常が溶け合います。
単焦点レンズで背景を綺麗にボカすだけでは表現できない、文脈と文脈の衝突。限定品や思い入れのあるパーツを組み合わせ、自分を飾り立てる行為は、まさにこの2in1のコマ割りのように、異質な価値観を自分の中で一つにまとめ上げる作業そのものなのです。
5. 結論:完成されない、自分だけのスタイル

おしゃれなバーでも邪魔しないサイズ感
薄暗い店内でもきちんと発色してくれます

単焦点ですが店内の様子を広く撮ったり、暖炉に寄ったりと、
テーブルフォト以外の写真も撮ることができます

書棚にある本は読み放題
今日はファッション誌ならぬファッション史を選んで勉強します

本日のコーデより
どちらの写真も「GUCCI x ヒグチユウコ」
店頭に並ぶ前に完売した「GUCCI x ヒグチユウコ」、そして筆者がカメラに散りばめた小さなパーツたち。
これらは誰かと共有して誇るためのステータスではなく、自分自身の内側にある「美しい」という基準を、形にした結果に過ぎません。
最新のカメラを買えば、誰でも綺麗な写真は撮れます。
しかし、その機材をどう着飾り、どう愛でて、どう定義するか。
そこにこそ、その人の「写真の質」や「人となり」が現れるのではないかと筆者は考えています。
でもプロがデザインしたそのままの姿を楽しむのもひとつです。
相反するけれど、自分次第で何でもいいのです。
買って終わりではない、愛着、執着。
優れた道具の一歩先にあるのは、その道具がいかに「自分の一部」として馴染んでいるかという感覚です。
カスタマイズしたケースやカメラを扱うときの一連の動作が、私という人間を彩る最も美しい装飾なのです。
私たちはもっと、自由な発想でカメラを着飾っていい。
それが、退屈な日常を鮮やかに変える、あなただけの魔法になるのですから。
もし自分に魔法をかける杖がまだ見つかっていないなら、「X half(X-HF1)」をおすすめします!

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