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【FUJIFILM】X halfの「縦2枚」という大喜利

富士フイルムが現代に蘇らせたハーフサイズカメラの精神を持つコンパクトデジタルカメラ「X half」。このカメラが提案するのは、スマートフォン時代に馴染み深い縦位置撮影を基盤としつつ、さらに一歩踏み込んだユニークな写真表現です。その核となるのが、縦長の写真を2枚撮影し、それを横長の1枚の画像として提示する「2in1」機能です。

「X half」の基本となる縦長の構図は、単なるスナップ写真を超え、その隣にもう一枚の縦写真を迎え入れることで、まるで写真同士が対話し始めるようなクリエイティブな空間を生み出します。これは、往年のハーフサイズカメラがそうであったように、ユーザーに対し「この2枚の縦写真で、どんな新しい物語やユーモアを生み出すか?」という、写真の「大喜利」のような遊びを仕掛けてきます。本記事では、この「X half」の「縦2枚」フォーマット、すなわち「2in1」機能がどのように新しい表現の可能性を切り開くのか、具体的な作例を通して探っていきます。

1. 分割して撮る:意図的に「差」を見せる

「X half」の「2in1」機能は、単純に2枚の写真を並べる機能ではありません。それは、同じ被写体や場所、あるいは同じ瞬間の「断片」を意図的に並置することで、2枚の写真の間に「時間差」「視点差」「ディテール差」といった明確な「差」を強調して提示するのに最適なフレームを提供します。この手法により、見る者に対して、一般的な単一の写真では伝えきれない情報量や、より深い物語の背景を感じさせることができます。このセクションでは、同じテーマ内の異なる側面を対比させることで生まれる表現の豊かさを見ていきましょう。

座る馬

お手て(前足)を折りたたんで座る馬。
一枚の横長写真で撮るよりも、被写体のユーモラスなディテールが強調されています。
全体の表情とお手ての魅力を同時に伝えます。

 
ヘリコプターを2分割で撮る

思いのほか横長だった、東京消防庁のヘリコプター。
機体に書かれた「東京消防庁」のロゴや、機体下部の複雑なディテールを左に配置。
右は丸みを帯びた透明カプセルのようなコクピット。
2枚を1枚にすることで、視覚的な情報量が全く異なるのです。

 
ヘリコプターのコクピット

かっこいいヘリコプターのコクピット。
一方でシート、もう一方で計器類を見せています。
まるで一枚の横長写真のようでありつつも、しかしながら見せたい部分にきちんとフォーカスできています。

 
綺麗なコキア

左端に黄色く咲き誇る花の鮮やかな生命力、右に秋の深まりを示すコキアの密度の高い質感を配置。
右の写真はコキアに寄って撮ることで、鮮やかな赤が右にずっと続いているかのような印象を与えます。

 
恐竜の木馬がある珍しいメリーゴーラウンド

これも分割という意味ではこのカテゴリ。
左にメリーゴーラウンドの恐竜の木馬という珍しい被写体を配置。
右には天井の鏡に映り込む木馬を捉えることで、現実の被写体と虚像、そしてその場の賑わいを同時に表現します。
空間の広がりと、その中の様々な要素を一度に見せる効果があります。

 
これらの作例からわかるように、「2in1」機能を使って2枚の縦写真を並べる行為は、単なる記録ではなく、情報と情報との間に緊張感を生み出し、意図的に鑑賞者の注意を惹きつける効果があります。「X half」は、この対比の妙を、1枚の横長のフレームの中で成立させるという点で、従来のカメラにはない独自の強みを持っています。
 

2. 似ているものを並べる:「類推」と「連想」を楽しむ

「X half」の「2in1」機能のもう一つの醍醐味は、「似ているもの」「関連するもの」を意識的に並べることで、見る者に詩的な類推や連想を促す点にあります。この使い方では、2枚の写真が持つ「質感」「色」「形」「テーマ」といった共通の要素が重要になります。被写体そのものが違っていても、その共通項が鑑賞者の頭の中で新しい意味を生み出し、組写真としての深みを増します。これは、写真におけるモンタージュ的な手法を、撮影の時点で内包してしまうユニークな試みと言えるでしょう。このセクションでは、視覚的な共通項やテーマ的な連想が、どのように写真に深みを与えるかを探ります。

原色の観覧車と、原色の虹や鳥の壁の飾り

原色を多用した観覧車と、同じく原色で描かれた虹や鳥の壁飾りを並置。
カラフルな原色の色使いが似ていると思い並べてた、色彩とモチーフの類比。
どちらも「楽しさ」「非日常」といったテーマを共有し、「円」や「飛翔」といったモチーフで視覚的なリズムが生まれます。
色彩の共通性により、強い統一感が生まれました。

 
逆光が印象的な偉人の像の後ろ姿、光を浴びる噴水

「光」と「流れ」の連想です。
左に逆光でシルエットとなった偉人の像を、右に光を浴びて輝きを放つ噴水の水流を配置。
「静止した像」と「動き続ける水」の対比が際立ちつつ、どちらも「強い光」を浴びているという共通点で結びつきます。
「時を超えた存在」と「絶え間ない時の流れ」というテーマ的な連想も誘います。

 
ラムズイヤーとヤギ

質感と名称の関連で、これはちょっと変化球です。
ラムズイヤー(子羊の耳)という植物の柔らかな質感をアップで捉え、その隣にヤギの顔のクローズアップを配置。
名前の通り、「羊」や「ヤギ」の毛並みの質感を視覚的に関連づけ、ユーモラスな連想を呼び起こします。
言葉遊びと視覚的な近似性を利用した知的な表現です。
ラムズイヤーを実際に触ってみるとヤギの耳にそっくりで、ゴートズイヤーでもいいのではいかと思い並べました。

 
ミニチュアを上から撮ったところと、実際に上から俯瞰でとった風景

スケール感の対比と同一視。
一方をミニチュア模型を真上から撮影し、もう一方を実際の街や自然の風景を観覧車の中から俯瞰で撮影。
被写体のスケールは全く違えど、構図の視点や、作り込まれた街並みの「相似性」を強調します。
見るに対し、「世界は大きな箱庭のようだ」といった哲学的とも言える連想を促します。

 
「似ているものを並べる」というアプローチは、「X half」の「2in1」フォーマットを、単なるスナップショットの枠を超え、感覚的・概念的なアートワークへと昇華させます。2枚の縦写真が隣り合うことで生まれる相乗効果は、撮影者の持つ独特の視点や洞察力を、より鮮やかに表現してくれるのです。
 

3. まとめ

「FUJIFILM X half」の「縦2枚」を並べる「2in1」という撮影フォーマットは、写真というメディアに新しい「問い」を投げかけています。それは、「何を撮るか?」だけでなく、「この2枚の縦写真で、何を伝え、何を遊ぶか?」という、よりコンセプチュアルな問いかけです。

なお「2in1」の作り方は、1枚撮ったあとにフィルム巻き上げを模したレバーを動かすことで、その次に撮る写真を横に並べることができます。どちらを右あるいは左にするかは、事前に設定することで自分で決めることができます。また前後の写真でなくても、あとから専用アプリで組み合わせることができます。いま撮影した写真は、先月撮ったあの写真と組み合わせると面白いと気付いたら、並べてみればいいのです。日付を入れて、1年前の写真と並べるなんていうのも面白そうです。

作例で示したように、このフォーマットは、「分割して差を際立たせる」ことで、情報の多重性を生み出し、また「似ているものを連想させる」ことで、鑑賞者の想像力と詩的な感性を刺激します。スマートフォンの画面に最適化され、縦位置撮影が主流となる時代において、「X half」は、この縦長フォーマットを単なる流行で終わらせず、「意味を持った対比や連関」を生むためのクリエイティブな「道具」へと変貌させました。

このカメラは、単体で作品としての完成度を求められる静止画に、「物語の断片」や「詩的な対」を組み込むことを可能にします。「X half」のユーザーは皆、この新しいフォーマットを通じて、写真の表現における「縦2枚」という名の無限の「大喜利」を楽しんでいると言えるでしょう。あなたの日常の断片を、「X half」の2枚の窓を通して、どのように再構築してみるか。その遊び心こそが、このカメラの最大の魅力なのです。

とにかく楽しくて仕方ない「FUJIFILM X half」。未体験の方こそ、ぜひ一度お試しください。
 

先日書いた「FUJIFILM X half」の作例がある記事はこちら。ぜひあわせてご覧ください!

【FUJIFILM】X half はフォトグラファーへの挑戦状 | 「写ルンです」世代に捧ぐ、エモい“お題”との向き合い方

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[ Category:FUJIFILM | 掲載日時:25年10月25日 13時40分 ]

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