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【HASSELBLAD】XCDレンズが解き放つ、1億画素カメラの真のポテンシャル②

【HASSELBLAD】XCDレンズが解き放つ、1億画素カメラの真のポテンシャル②

デジタル時代に中判カメラの魅力を再定義したハッセルブラッド。
その独自の世界観を支えるのが、Xシステムのミラーレスカメラ用に設計されたXCDレンズです。
卓越した光学性能、レンズシャッターによる全速ストロボ同調、そしてコンパクトな設計。これらは、中判の豊かな階調や空気感を、より身近なものにしてくれます。
このレンズは、プロの現場からハイアマチュアのクリエイティブな挑戦まで、幅広い写真家を魅了し続けています。
この記事では、そんなXCDレンズの魅力と特徴を深掘りしていきましょう。

今回ご紹介するレンズはXCD35-75mm F3.5-4.5 ZOOM LENSです。XCDレンズの中でも数少ない標準ズームレンズ。
35mm判換算で28-58mmをカバーしており、F値こそ可変するズームレンズではあるものの、サイズ感、重量共にかなり気合の入った設計の様子。

単焦点が軒を連ねるXCDレンズの中ではある程度の画角が1本で済むだけで何本もレンズを持ち歩く必要がなくなります。
一般的にはズームレンズとしての利便性をとった場合に単焦点レンズと比べて画質をスポイルする傾向がありますが、HASSELBLADの本レンズはどうでしょうか。


35mm ISO200 F9.5 SS1/60

早速レンズのスペックから見ていきましょう。13郡15枚の中には非球面レンズが2枚使用されており、重量は1,115gとかなりヘビーな1本。
重量級でありながらフィルター口径は77mmとなっており、ワイド端での最短撮影距離は0.42m、テレ端では0.6mとなっています。
ワイド端で絞った画となっていますが、葉の一枚一枚まで潰れずにしっかりと解像しています。やや樽型の歪みを感じますが、敢えて縦と横の線がわかりやすいシーンで撮影してもこの程度です。


50mm ISO200 F4.0 SS1/100

お次は50mmまでズームして1枚。35mm判換算では40mm付近となり、パースが和らぎつつもやや広く写す事が出来ます。
F値可変ズームのため、ズーム中間域では開放値が既にF4.0となっていますが、数字で見たF値とは裏腹に想像以上に大きくボケているのではないでしょうか。
フルサイズと比べてセンサーフォーマットが一回り大きいため、見かけ上のボケ量は数値よりも1段分程大きく見えると言われています。35mm判で言えばF2.8くらいボケているという事です。


65mm ISO400 F4.0 SS1/80

苔生した石に木漏れ日が差し込んでおり、わびさびを感じます。カメラ側のセンサーによる力も大きいとは思うのですが、レンズ側もまた光の機微を捉える事が得意なように感じます。
普段ならば目視をしても「このカメラでは上手く捉えられない」と感じ、諦めてしまうような僅かな光もカメラを向けてみてください。身近な被写体が存在感を持って捉えられるかもしれません。


75mm ISO200 F4.5 SS1/100

テレ端となる75mmを絞り開放で使用。フルサイズ換算だとおおよそF3.2相当くらいのボケ量でしょうか。
緩い逆光が苔の絨毯に生まれた凹凸のコントラストを際立たせてくれました。距離感を演出するように中距離にピントを置いていますが、前後のボケがしっかりと感じられつつ、テレ端&絞り開放という条件でもしっかりと描写しています。

75mm ISO400 F4.5 SS1/40


75mm ISO400 F4.5 SS1/20

また、直近で発売されたXCD 35-100mmF2.8-4 Eについても触れるべきでしょう。こちらは換算28-76mm相当となり、鏡筒デザインに関しても昨今の新しいタイプを採用しています。
894gと20%近い大幅な軽量化を果たしつつ、レンズの全長も10%ほど短くなっていますし、1/4000秒対応のレンズシャッターやX2D IIと組み合わせた際にAF-Cも使用可能になるなど、ほぼ上位互換と言っても過言ではないスペック
上記写真ではテレ端まで目いっぱいズームした状態での比較となっていますが、XCD35-75mmについてはインナーズームに近い方式を採用しており、この点に関しては優れているポイントと呼べるのかもしれません。

何枚か写真が続きます。


75mm ISO400 F4.5 SS1/125


65mm ISO400 F4.0 SS1/60


75mm ISO100 F8.0 SS1/100


40mm ISO200 F11 SS1/60

柳の木の雄大さにフォーカスするために広角側を使ってはいますが、ワイド端ではなくほんの少しだけズームした状態。写真ではズームで見切れさせていますが、ワイド端だと余計な情報が写り込んでいたためそちらを避けるように撮影しています。
単焦点では撮影者の位置を変える事でしか対応できませんが、ズームレンズではズーム操作でもコントロールが出来るという点は特に広角側でありがたく感じます。枝葉の流れるような線が美しく、風にそよぐ音さえ聞こえてきそうな臨場感がある画になってくれました。


50mm ISO200 F4.0 SS1/60

縁側の床板に緩く入り込んだ光は複雑な木目の模様を照らしています。同じ木ではありますが質感の異なる描写を見事に描き切ってくれました。
35mm判のイメージでは標準ズームであればF2.8通しの物を「大三元」などと呼んでいたりするものですが、逆にF値が通しで固定ではなく可変式のズームだとなんとなく廉価版というイメージを持ってしまう方もいるのではないでしょうか。
本レンズは使えば使うほどにズームレンズだったという事実を忘れてしまいそうになる描写力です。


75mm ISO400 F4.5 SS1/40

こちらもテレ端ですが古木を覆う苔や小さな植物の、細部にわたる緻密な描写が際立っています。特に樹皮のゴツゴツとした質感や、その隙間から顔を出す草の生命力感じる瑞々しさ、苔のふさふさとした柔らかそうな雰囲気それぞれをしっかりと描き分けています。


75mm ISO200 F4.5 SS1/100

苔むした石の写真でもそうでしたが、ややフラット気味の光源環境下、その中でも緩やかにコントラストの機微が生まれている被写体に向けてみると根源的な性能の高さが伺えると思います。


75mm ISO200 F4.5 SS1/100

今回はXCD35-75mm F3.5-4.5 ZOOM LENSを紹介致しました。
単なる道具を超え、写真家の創造性を刺激するXCDレンズ。
その卓越した描写力は、中判カメラでしか味わえない唯一無二の表現をもたらしてくれます。
「写真を通して、何を伝えたいか?」
この問いへの答えを、XCDレンズはきっと見つける手助けをしてくれるはずです。ぜひ、あなたもこのレンズを手に、新たな物語を紡いでみてください。

[ Category:etc. | 掲載日時:25年09月17日 11時00分 ]

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