【タイムズフォト】Last drive Ⅲ
太陽が傾き始め、陽の光が少しずつ淡いオレンジ色に変わり始めた頃、私は国道134号線を北上していました。
最終目的地である「立石公園」に向かう為に。
出発して間も無く、私は不思議な感覚を感じました。心にポッカリと大きな穴が空いたような感覚でした。
あと数時間で終わる愛車との最後の旅。自ら決意した別れ、そして最後の思い出を残す為に決行したラスト・ドライブ。
自分の決断を後悔するつもりでもなく、愛車との別れを今更になって惜しむつもりでもないのに・・・。
旅の終わりがすぐそこまで近づいているのだと、改めて心に言い聞かせると、ふいに視界が滲んだ。
と同時に、アクセルを握る右手から無意識に力が抜けていくのを止めることができなかった。
しかし次の瞬間、建物の影から眩しく顔を出した太陽の光に照らされ、私は意識を元に戻すことができました。
アクセルを強く握り締め、微かに濡れていた頬をグローブで拭いながら前へ進みました。
そして午後3時30分頃、今回の旅の最終目的地である「立石公園」に到着しました。
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「立石公園」の「立石」とは、画面左側にそびえる大きな岩のことで、高さが約12m、周囲が約30mもあります。
画面中央に見えるのが「梵天鼻」(ぼんてんはな)と呼ばれる岬と松の木です。
東海道五十三次で有名な安藤広重に描かれたことがある有名な公園です。
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夕日の名所としても知られていて、よく晴れた日の日没前には多くの観光客や写真撮影を楽しむ人達で賑わいます。
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私も公園内を移動しながら色々な風景を撮影しました。私以外にも多くの方達が写真撮影を行っていました。
この日の天気はとても良く、美しい夕日と、夕日に照らされた公園と海がとても綺麗で、私は夢中で写真を撮影していました。
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立石公園で日没を見た私はバイクを停めていた駐車場に戻り、出発の準備を始めました。
陽が沈み、辺りは一気に暗くなり、気温もどんどん低くなっていきました。
革ジャンの上に厚手の防寒着を着て、地図で帰り道の順路を確認。
ヘルメットを被り、グローブを付けてバイクにまたがりました。
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「さあ、東京へ帰ろう。イントルーダー。」
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国道134号線をさらに北上して、逗子ICから横浜横須賀道路へと入ってゆきました。辺りは夜の闇に包まれていました。
愛車と走る最後の高速道路、私は凍えるような冷気の中をスピードを上げて走り続けました。
走行車線を走る車の赤いテールランプと、対向車線を走る車の無数に輝くヘッドランプが眩しくて、私は目を細めました。
でもその光景はとても美しく輝いていました。
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夜空を見上げるとそこには、月が静かに輝いていました。
月の明かりを見た時、私の脳裏にこれまでの愛車との想い出が浮かびました。
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社会人一年目の時、夏を迎える前に新車で購入した時の事。初めて高速道路を走った時の感動。
初めてのツーリングで行った群馬県、水上温泉。夏休みに日帰りで行った新潟県。一泊二日で行った熱海の温泉。
真冬の高速道路を片道約800km走り、旅した四国の香川県。仲間と一緒に行ったツーリング。
神奈川の海、箱根の温泉に行った事を、一つ一つ思い返していました。
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思い返した6年間の想い出が視界を滲ませ、アクセルを回す右手から何度も力が抜けてしまいそうでした。
旅の終わりが近づくにつれ、想像以上の悲しみがこみ上げてきて、前に進むのがとても辛かったです。
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いよいよ高速道路での走行が終わり、一般道を走り続けました。
少しずつ、少しずつ見慣れた景色に近づいてゆきました。
普段から見慣れた景色を見ることが、涙が出るほど辛く感じたのは初めての経験でした。
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何度も通った交差点、坂道、オレンジ色の街灯が印象的なガード下の道路を走り抜けました。
そして、ついに家に帰るための最後のカーブにさしかかり、車体を傾けカーブを曲がりました。
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家の目の前にある駐車場に到着し、私はバイクを静かに停車させ、エンジンを切りました。
私は愛車に対する感謝の気持ちで胸がいっぱいで、しばらくシートを降りることができませんでした。
タンクに両手を置き、何度も何度も「ありがとう」と声をかけ、最後にゆっくりとエンジン・キーを抜きました。
2009年12月
愛車、イントルーダー・クラシック400とのラスト・ドライブは静かに幕を下ろしました。
後日、冷たい小雨が降るなか、買取業者にバイクを引き取ってもらい、6年間の付き合いにピリオドを打ちました。
あっという間だった6年間。本当に多くの楽しい時間を過ごすことができました。
イントルーダー・クラシック400に出逢えた事、選んだことを心より誇りに思います。
6年間、本当にありがとう、イントルーダー・クラシック400
Good bye!! My best partner!!
Thank you!!
使用機材::Panasonic LUMIX LX3