【Leica】Mを愉しむ ~M10シリーズを愉しむ~#6 SUMMILUX M50mm F1.4 後期型
きたる2月20日、MapCamera本館1階のLeica Boutique MapCamera Shinjuku が9周年を迎えます。
これもひとえに皆様の厚いご愛顧があったればこそ、心より御礼申し上げます。
9周年を迎えるにあたって、今回ライカブティックでは「愉しむ」をコンセプトに様々なイベントをご用意いたしました。
毎年ご好評いただいているスタッフによる連載ブログですが、今回は『Mを愉しむ』というテーマのもと、「M11でレンズを愉しむ」と「M10シリーズを愉しむ」という2本立てで進行させていただきます。
「M10シリーズを愉しむ」では、2017年1月発売のM10から2020年7月のM10-Rまで続くシリーズの名機たちを紹介します。
厳しい眼を持つライカファン・カメラファンからも、常に驚きと称賛を持って迎えられてきたM10シリーズのカメラたち。
マップカメラスタッフがその中からそれぞれ1台をチョイスし、まだまだ衰えることなく輝き続けるシリーズの魅力を熱くお届けします。
今こそ深遠なるライカの世界に…
・・・
学生時代、写真部に所属していました。もう30年ほど昔の話です。
勿論、フィルムカメラ。特にモノクロでの撮影が主でした。
撮影とフィルムの現像・焼き付けに明け暮れる毎日。
何を撮っていたかというと… ゴミやガラクタばかりでした。
路地の片隅にしゃがみこんでレンズを向けたり、学内に放置された廃車に夕陽が射すのを「この美しさが判るのは自分だけだ!」なんて… 黒歴史です。
当時は安価な白黒フィルム、特に長巻のフィルム缶を購入し、自分でパトローネに詰め込んで使用していました。
1本ずつ購入するより安く、36枚撮りフィルム1本あたりがおよそ180円ほどでした!
今となっては、まさに夢のようなお話… 当時は年間300本くらい撮影していたこともあります。
社会人になり、自分の暗室を持つことの叶わなかった私は、お店に依頼したフィルムの現像やプリントに到底満足することが出来ず、モノクロで撮影することもおのずと減ってしまいました。
時代もデジタル主流になり、フィルムの種類が減り、かつどんどん高価になっていったことも理由の一つです。
そんな私が今手にしているのは「Leica M10モノクローム」
2012年「Mモノクローム」、2015年「Mモノクローム(Typ246)」に続く、ライカMデジタルのモノクロ撮影専用機3世代目にあたるものです。
M10シリーズはご存知のように、フィルムM型ライカに近いボディサイズを持ち、さらに銘機 M3を彷彿とさせるデザイン。
またM10モノクロームでは、M10-P同様シャッター音も抑えられ、M3を愛機(勿論、社会人になってから購入したのですが)とする私には、3世代のモノクローム機の中でもより近しいものに感じられました。
そしてM10 モノクロームに銘玉ズミルックス M50mm F1.4 後期型を装着し、そのレンズを向ける先は… やっぱり路地の片隅でした…
スナップシューティングに最適なライカM型、それもモノクロ撮影専用機を手にすると、つい美しい自然の風景よりも街中に身を置いてしまいます。
憧れたライカ使いの先達たちの影響でしょうか。
人気のない道端に置かれた自転車。私にしては小綺麗なものを…
絞りF4での撮影でしたが、強調され過ぎない自然な像の浮き上がりが風景を切り取っている感を撮影者に与えてくれます。
しかし、枚数を気にせず撮影に臨んでいると、だんだんと学生時代シャッターを切り続けた頃に戻っていきます。
そうなると、同じ自転車でも
こんな風景に目がいってしまいます。
オールドレンズながら、絞り開放でもバックのボケが乱れません。優秀なレンズであることが判ります。
ついアンダー目に撮って光を強調したくなるのも学生時代の癖。
特に鉄の光沢感がたまらなく好きです。当時、コダックのPlus-X Pan(ISO125)が好きで、金属の質感描写に愛用していました。
勿論、M10 モノクロームならより滑らかな描写が可能で、ペンキのヌメリ感のようなものまで緻密に表現出来ました。
フィルムで撮ったら何でもない写真、まぁデジタルでも何でもないですが…
先に述べた強調され過ぎない像の浮き上がりと背景の自然なボケ具合が気に入ってます。
近所の閉められてしまった社宅、写欲をそそる物件です。
前ボケも自然な感じ。写り込んでしまったものですが、左の柱のツブツブも精緻です。
こういう木の枝などを撮影すると、バックのボケがざわつきます。オールドレンズらしさを感じられる1枚。
また花びらの白も少し滲んで、優しい描写になりました。
フィルム写真なら覆い焼きを多用しないと表現しきれないところですが、M10 モノクロームなら撮ったままでこの描写。
しかも高精細4000万画素の画は、それぞれの物質の質感を忠実に再現してくれ、触れた時の温度まで感じさせてくれる気がします。
ところで最近自分の眼に大いなる不安を抱える身としては、ピント合わせに全くと言っていいほど自信がありません。
ましてや4000万画素という高画素機、ちょっとのズレも許してくれません。
そこで今回の撮影では、ビゾフレックス(Typ020)の助けを借りています。
ピントリングを回すとすぐに見ている画像が拡大され、かなり精密にピント合わせを行えます。
レンジファインダー機の特性を一つ削ってしまいますが、背に腹は代えられません。
上の写真も中央前のスコップにピントを合わせたら、後ろは僅かにですがしっかりとボケていることが判ります。 …持っててよかったビゾフレックス!
こちらの写真も同様、しかも道の片隅ちょっと暗がりにあり、最初の数カットは全て手ブレを起こしてしまいました。
すこし感度を上げ、息を殺しての撮影。 …持っててよかったビゾフレックス!
モノクロなら、なんだか判らない造形的なものも被写体になります。
家の中で、中腰になりながらの撮影… 腰にきました。
M10 モノクロームを手に歩いたのは、家の周囲や最寄り駅の周辺。
カラーでならレンズを向けなかったであろうものばかりです。
ご近所にこんなにもモノクロ向きの風景があるなんて、今まで気づきませんでした。
撮っているうちに、学生時代の写真に対する熱が蘇ってくるようで…
どうしよう、手放せなくなってしまいました…
日の暮れ始め。フィルムカメラを携えた学生時代は、このあたりで撮影終了ですが…
まぁ、今回もこのくらいで…
次回もお楽しみに
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