
三月も終わりが近づき、空気に少しずつ春らしい柔らかさが混ざるようになってきました。
早くもソメイヨシノの開花宣言が相次ぎ、海辺では低い陽射しが水面を長く照らし、街の陰影にも冬とは少し違った温度が宿り始めています。
そんな季節の移ろいの中へ持ち出したのが、Leica『アポズミクロン M50mm F2 ASPH.』と『M11-P』です。
Mシステムの中でも、いわば“王道”と呼びたくなるような組み合わせ。
約6000万画素という高い解像力を備えた『M11-P』。
高画素機でありながら、AFでも手ブレ補正でもなく、あくまでレンジファインダーとして自分の手で距離を決め、ピントを合わせ、シャッターを切る。そうしたカメラにアポズミクロンの50mmを組み合わせると、普段にはない見えてくるものがあります。今回は春へと移ろい行く様々な場所を歩きながら、その王道の意味を改めて確かめてみました。

焦点距離:50mm / 絞り:F4.0 / シャッタースピード:1/2500秒 / ISO:64
使用機材:Leica M11-P + APO-Summicron-M 50mm F2 ASPH.
まず印象に残ったのは、妥協のないクリアな描写でした。
写真中央だけでなく4隅に至るまで精巧に写すその性能は、たとえ日常のスナップから、少しかしこまった撮影、またはカメラにとって厳しい条件下での撮影においても絶対的な信頼を寄せられるほどに感じました。板の艶やかな反射が決して誇張されず、しかしきちんと残る質感。逆光下で浮かび上がるシルエットの輪郭の細さ、その周囲の光の漏れ感。写っている情報量は多いのに、どこも破綻することなく一つ一つの構成を保っています。単にシャープというより質感と空気が一緒に残るようなそんな感覚がありました。

焦点距離:50mm / 絞り:F2.0 / シャッタースピード:1/250秒 / ISO:160

焦点距離:50mm / 絞り:F4.0 / シャッタースピード:1/250秒 / ISO:160

焦点距離:50mm / 絞り:F2.0 / シャッタースピード:1/6400秒 / ISO:64
カラーだけでなくモノクロームに撮影した塔のカットでも、その印象は変わりません。
雲の明暗、屋根の輪郭、塔の先端の細い構造。それぞれがきちんと分離しているのに、画がバラバラにならないのです。『M11-P』の高画素は少しでもレンズの粗があればすぐに見えてしまうような性能がありますが、この組み合わせではそれが不安ではなく、むしろ安心に変わります。撮り手としては、写りや弱点を心配して補おうとするよりも、初めからどこに意識を置くかに集中できる。その感覚はとても大きいです。

焦点距離:50mm / 絞り:F2.0 / シャッタースピード:1/1500秒 / ISO:64
50mmという焦点距離は、広すぎず狭すぎず、本当に「ちょうどよい」画角です。けれど、それは便利という意味だけではありません。足を一歩進めるか、一歩下がるかで構図の意味が変わる。その変化がちょうどよく写真に反映されるのが50mmだと思っています。

焦点距離:50mm / 絞り:F2.4 / シャッタースピード:1/3000秒 / ISO:64

焦点距離:50mm / 絞り:F3.4 / シャッタースピード:1/750秒 / ISO:64
花の中心や枝先の芯を見れば、開放付近でもしっかりとした解像感があることが分かります。また、背景に向かってはとても自然にボケていく様子も見てとれます。特に桜のように、画面内の情報量が増えやすい被写体では、この「ボケ方」が重要です。どこもかしこも強く浮き上がってしまうと、花の柔らかさが失われてしまいます。『アポズミクロン M50mm F2 ASPH.』は、必要なところはきちんと写しながら、そうでない部分は綺麗にボケて主張をしません。結果として、被写体の空気感が残ります。
そして『M11-P』を使っていると、その良さがより分かりやすいです。
高画素センサーの上で、花弁の薄さや枝のしなりまで細やかに拾いながら、それでも画面が騒がしくならない。枝や花の輪郭に偽色が発生しないのです。50mmという画角の普遍性と、アポズミクロンの整った描写、その両方がとても素直に表れていました。

焦点距離:50mm / 絞り:F2.4 / シャッタースピード:1/200秒 / ISO:100

焦点距離:50mm / 絞り:F5.6 / シャッタースピード:1/200秒 / ISO:250
視点を変えて、少し寄りのカットを見ていきましょう。
レンズの最短撮影距離は70cm。これはレンズの性能というより、レンジファインダーのM型ライカ用のマウントに作られたレンズの特性のようなもの。こうした寄りの被写体は、そのレンズの素性がよく見えます。窓ガラスの反射やフレームのエッジ、煉瓦の表面、そうした何気ないところにこそ、写りの差が出るように思います。
窓越しのカットでは、手前のガラス越しの揺らぎと、奥に置かれた椅子や花器の輪郭がスッと共存してくれました。また、煉瓦のような硬い被写体やそこから突き出た鉄の様子を見ても、細部の描き方がとても緻密です。絞ったときの質感はもちろんですが、ただ硬く写すのではなく、素材としての質感まで感じさせてくれるのが印象的でした。『アポズミクロンM50mm F2 ASPH.』を「良く写る標準レンズ」とだけ捉えると少しもったいなく、線の精度と質感の両方を高いバランスで成立させているところに、このレンズの価値があるように思います。

焦点距離:50mm / 絞り:F2.0 / シャッタースピード:1/2500秒 / ISO:64

焦点距離:50mm / 絞り:F2.0 / シャッタースピード:1/2500秒 / ISO:64

焦点距離:50mm / 絞り:F8.0 / シャッタースピード:1/640秒 / ISO:64
光の強い海辺で逆光のカットを中心に撮影しました。
強い光を正面から受ける場面では、レンズの描写性能だけでなく、カメラ側のダイナミックレンジの広さも見えてきます。水面の反射、空の明るさ、島のシルエット、そのすべてをどこまで破綻なく受け止められるか。そしてフレアやゴーストの入り方。そうした条件でも、この組み合わせはとても自然でした。
開放付近で捉えた波打ち際のカットでは、濡れた岩肌の艶、泡立つ波の白、遠景の江の島がきちんと伝わり、逆光でありながら情報が残っています。また、絞って撮影した光芒のカットでは、空の明るい部分と海の暗部が急に途切れず、なだらかにつながってくれました。こうした場面では、単純な解像力よりも、ハイライトからシャドウにかけてのつながりの方が、むしろ印象を左右します。その点で『M11-P』と『アポズミクロン M50mm F2 ASPH.』の組み合わせは、派手さではなく、破綻しない安定感が際立っていました。

焦点距離:50mm / 絞り:F2.0 / シャッタースピード:1/8000秒 / ISO:64

焦点距離:50mm / 絞り:F4.8 / シャッタースピード:1/200秒 / ISO:100

焦点距離:50mm / 絞り:F2.0 / シャッタースピード:1/8000秒 / ISO:64
この場所では、デッキのラインや手すり、影、港の構造といった都市的で幾何学的な被写体を多く撮りました。クラシカルな見た目を持つM型ですが、こうした現代的な人工物を前にしても、少しも古びた印象にはなりません。むしろ高画素の『M11-P』だからこそ、洗練されたデザインと都市の線や面を精密に捉える描写を両立することができています。
モノクロームで見たときにも、線の精度はもちろん、黒の色味とその中間色の豊かさが印象に残りました。単にコントラストが高いだけではなく、暗部の中にも少しずつ情報が残っているので、木のデッキの表情や影の重なりが見えてきます。50mmという画角も、この場所ではとても効いていました。広角で写り込みすぎず、望遠で切り取りすぎず、あくまで自分の立ち位置で画面を決めていく。その「動いて決める」感覚は、レンジファインダーで撮る50mmの本来の愉しさだと思います。

焦点距離:50mm / 絞り:F2.0 / シャッタースピード:1/4000秒 / ISO:64
Leica 『M11-P』と『APO-Summicron-M 50mm F2 ASPH.』を通して感じたのは、王道と呼ばれるものにはやはり理由があるということです。描写は非常に整っていて、高画素のボディに載せても不安がありません。開放から芯があり、絞ればさらに質感が整い、モノクロームに振っても階調が薄くなりません。けれど、この組み合わせの魅力は写りの良さだけではないように思います。
自分で距離を決め、自分でピントを合わせ、自分でシャッターを切る。
そうした一連の行為を、現代の高い解像力の中で成立させていること。そのこと自体に大きな価値があります。Mレンズとしての本来の使い方を、『M11-P』という今のボディで改めて味わう。『アポズミクロンM50mm F2 ASPH.』は、レンジファインダーで使う50mmの完成形を、今の時代にもきちんと示してくれる一本だと感じました。
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