フジフイルムのフィルムシミュレーション、パナソニックのリアルタイムLUTやソニーのクリエイティブルックなど、いわゆる撮って出しJPEGへの味付けが以前に比べより作り込みがされ、リッチな画が得られるようになっていると感じます。
もちろんRAW現像を経て、画を作り込むという面白さももちろんあるとは思いますが、昨今のデジタルカメラであれば基本的には常時ライブビューの状態である事から、先に挙げたような機能を使用する事でリアルタイムに仕上がりを見ながら撮影が出来るという点は大いに活用していきたいところ。RAW現像の手間を省く方も増えているのではないでしょうか。
また、確信を持って構図や露出を決めることもあるとは思いますが、琴線に触れて何気なく惹かれた被写体にカメラを向けるという事もあると思います。そういった時に自分が見ている光景にカメラ側がエッセンスを加える事で、よりエモーショナルな光景になっている事にテンションが上がる、それが撮影欲に繋がる、というのもなかなか大きい事なのかなと思います。
そしてLeicaもQ3から純正アプリケーションであるLeica FOTOSと連携する事でLeica Looksという機能が使用できるようになっています。
今回はLeica Looksの中でもCNT(Contemporary)が使いやすかったなというお話しです。それではどうぞ。
CNT(Contemporary)はメリハリのあるコントラストが印象的なルックですが、彩度に関しては派手過ぎる事がなく程良く纏まっています。おかげで飽和がなく、どんなシーンでも使っていける印象があります。
また、他社製カメラで用意されているルックでは、ルック内でもコントラストや彩度のパラメータをプラスマイナスの形である程度調整出来る物もありますが、Leica Lookの場合はそういった調整は行えず(2024年5月現在)お任せで”いい感じ”にしてくれるのはありがたいところ。
“Contemporary”とは「現代的な、今日の、今風の」という意味があるそうですから、その意味を知ってから改めて撮られた写真を見てみると、なるほどなと納得が行く部分も見受けられます。そして現代的ではありますが、どこかフィルムライクな側面もあります。恐らく意図的に色をカブらせているのではないかなと思いますが、この色被りも含めて「現代的」なのだなと解釈します。
5月も気付けば終わりが近付き、そろそろ梅雨の足音が聞こえてきそうな時節になりましたが一足先に花開くアジサイが日陰に咲いていました。ややアンダーに振っての撮影だったのでCNTの特性を考えればシャドウ側に沈み、ダークな雰囲気になるかと思いましたが、思いの外しっとり柔らかな画作りになりました。
光と影を追いかけるのが面白いルックです。こちらはやや青に被っているように感じますが、恐らくルック側ではなくAWB側でこのような形になっていると想像されます。
床への光の落ち方が印象的だったシーン。中央下部への窓の映り込みも目に付くところですが、写真右側にかけてシャドウへ沈んでいく辺りが筆者のお気に入り。床の質感をしっかり残しつつ溝に当たるハイライトのみでエッジが描かれていますが、絶妙なコントラストで徐々に沈んで行っています。
ここで興味深かった写真を一枚。
↑DNGからストレートにJPEG書き出し
↑Leica Look(Contemporary)使用のカメラ内JPEG
上記の2枚は同じカットをDNGからそのままストレートにJPEG書き出ししたものと、Leica LookのCNTを使用したカメラ内JPEGです。背面の窓から光が差し込んでいますが、フレアのような淡い光が誇張され、窓周辺の露出が部分的に持ち上がっています。意外と複雑な処理を行っているのかもしれません。
DNGから書き出しを行った方も中央部に見えてはいますが、カメラ内JPEGほどではありません。どちらが良いかといえば人それぞれ好みが分かれるところだとは思うのですが、ライカが考えるエモーショナルな写真の解釈はこうなのだ、という意味で見てみればなかなか興味深い結果です。
陽も傾いてきて、趣のある壁に木陰が写っていてエモいなあと思ったところで最後の一枚。
Leica LookのCNT(Contemporary)で通して撮影してみましたが、時にはフィルムライクな側面もありつつ、やはりメリハリの効いたコントラストが特徴的ではありますが、大げさではなく気持ちの良い塩梅という印象です。、個人的には欲しいイメージから外れた画が出てくるものはありませんでした。
MやSLのシリーズでも使えるようになると撮影の幅が広がるなあと夢想しつつ、日常に寄り添うLeica Q3にこそピッタリな機能なのかなとも感じました。次回は他のルックでも撮影に臨んでみたいと思います。
それではこの辺りで。