
【Leica】A Piece of PREMIUM COLLECTION -LEICA Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ ズマール) –
MapCameraで取り扱う中古品の中で、流通数や生産数が少ない希少品や限定モデルなどに与えられる名称、「PREMIUM COLLECTION」。
本シリーズでは、A Piece of PREMIUM COLLECTIONと称し、そんな製品たちを一つずつ紹介いたします。
第十弾となる今回は、「LEICA Summar 5cm F2 (固定鏡筒・ヒョットコ ズマール)」をご紹介いたします。
根強い人気のあるレンズ。今回はそんな魅力の一端に迫ります。
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1930年代初頭:速度への渇望
ヒョットコ・ズマールが誕生した1933年頃は、写真機材の歴史における「大口径化」への黎明期にあたります。
当時のライカの標準レンズといえば、「Elmar(エルマー)5cm F3.5」が主役でした。
エルマーは小型で鋭い描写を誇る名玉でしたが、その開放F3.5では室内や夜間、動きの速い被写体を撮るには光量不足。
また当時ライバルであったCarl Zeissは、Summarより1年先の1932年にContax用の標準ハイスピードレンズ「Sonnar 5cm f2」と「Sonnar 5cm f1.5」を天才ベルテレ氏が設計し発表発売。
これに対抗してライツ社はバルナックライカ用標準レンズSummarを開発したと言われています。
このLEICA Summar 5cm F2は、ライカ初となるF2レンズでレンズ構成はダブルガウス型をベースとする4群6枚。
コンピューターや整備された設計理論、そして優れたガラス素材や工作機械のなかった1930年代、設計者のセンスと努力そして試行錯誤によって生み出されたこのレンズの設計には、後に名玉「ズミクロン」を生み出すマックス・ベレーク技師が関わったとも言われています。
ライカの技術の粋を集めたこのレンズは、まさに最先端のハイスピードレンズとして登場し当時の写真撮影の可能性を劇的に広げたことは間違いないでしょう。

【秘話】幻の「固定鏡筒(リジッド)」モデルの登場
私たちがよく知るSummar 5cm F2は、カメラ本体に収納できる沈胴式が一般的です。
しかし、Summarが誕生した最初期、ごく限られた期間にのみ製造されたのが、沈胴しない固定鏡筒(リジッド)のモデルでした。
これが、今回ご紹介する「ヒョットコ ズマール」です。
ではなぜ固定鏡筒で登場したのか?
沈胴式の複雑な構造を採用する前に、まずはハイスピードレンズとしての光学性能を確立しカメラボディとの整合性を試したかった、あるいは当時の製造技術や部品の供給が追い付かず、固定鏡筒からスタートせざるを得なかったなど、諸説ありますが、沈胴式が主流になるまでの過渡期のモデルであったことは間違いありません。
そして12万本以上製造されたズマールのうち固定鏡胴の本レンズは、わずか2,000本程度(シリアル番号の16万台に1,000本、18万台に1,000本あるようだが定かではない)と製造数が非常に少ないため、沈胴式ズマールよりも遥かに稀少性が高い、まさに「幻の銘玉」となっています。

悲劇と魅力:前玉の柔らかさ
Summarは高性能でしたが、一つだけ設計上の大きな「欠点」を抱えていました。それは、前玉の硝材(ガラス)が非常に柔らかいことです。
当時の技術的な制約から、高屈折率を実現するために採用されたガラスが、極めてデリケートだったのです。
指紋を拭き取っただけで傷がつくと言われるほどで、製造後、わずか数年で「拭き傷(ヘアライン)」だらけになる個体が続出しました。設計者のベレーク自身も「あれは失敗だった」と後に語ったと言われています。
しかし、皮肉なことに、この「欠点」こそが、現代においてSummarを特別な存在にしています。
前玉の無数の微細な傷と、ノンコートレンズである特性が相まって、光が当たると、まるでベールを纏ったように全体が淡く、柔らかいフレアに包まれるのです。
これが「ズマール・フレア」と呼ばれる唯一無二の描写であり、このレンズの最大の魅力となっています。

時代は進み1936年に当時Schneiderに在籍していた、天才トロニエ博士が同じくガウス型でXenon 5cm f1.5をLeitzに供給し、やっとCarl Zeiss5cm f2と5cm f1.5の対抗ができました。
ちなみにLeitzが同じ5cm f1.5である、Summarit 5cm f1.5を出すのは1949年。実にSonnar発売の17年後となりました。
現代のシャープなレンズに疲れた時、この固定鏡筒の愛らしい姿のオールドレンズを手にとって当時のライカらしい郷愁を誘う独特の写り堪能してみてはいかがでしたでしょうか。
きっと、この「ヒョットコ ズマール」が貴方の写真に温かく詩的な「味」を加えてくれるはずです。
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