
デジタル、フィルム問わず、多くの写真・カメラ愛好家を魅了してやまない「ライカ」の世界。
「いつかはライカを使ってみたい」「M型ボディを手に入れたけれど、最初の1本にどのレンズを選べばいいか分からない」と悩まれている方も多いのではないでしょうか。
オールドレンズから現行レンズまで、豊富なラインナップを誇るライカ。その中でも「銘玉」として名高いのが、今回ご紹介する「ズミクロン M50mm F2.0」です。
初代から4世代にわたって作り続けられている歴史あるモデルで、初代の発売当時は「空気まで写し出す」と評された程、高い描写力を誇る銘レンズです。

先日、その現行モデル「ズミクロン M50mm F2.0 レンズフード組込 (6bit)」を持ち出す機会がありましたので、早速撮影へ向かいました。なぜズミクロンがここまで愛されるのか、その理由を初めてライカに触れる方にも分かりやすく、実際に撮影した写真も交えながらご紹介いたします。
ライカの門を叩く「最初の1本」に最適なプライス
ライカのレンズを調べると、その価格の高さに驚いてしまうことも少なくありません。50万、80万、時には100万円を超えるレンズがある中、この「ズミクロン M50mm F2.0 レンズフード組込 (6bit)」は、現行ライカレンズの中で比較的お求めやすい価格帯に位置しています。

青空の下、どこまでも続く高原の坂道を歩く人々。50mmという人間が注視した視野に近い画角は、誇張のない素直な遠近感を生み出し、その場の心地よい空気感や旅の情緒をそのまま記録してくれます。新品・中古共に流通数が安定しているこのレンズは、「せっかくライカを始めるなら妥協のない純正レンズからスタートしたい」という方の最初の1本として、これ以上ないほどおすすめできるレンズです。
「お手頃」を裏切る、これぞライカという圧倒的な描写力
価格が抑えめですが、肝心の写りの面はどうなのか。ファインダーを覗き、シャッターを切って背面液晶を見た瞬間、その写りの良さに驚きました。背景ボケの美しさと被写体の立体感がしっかり描き出され、色味も良好です。

瑞々しく咲き誇る紫陽花を現行ボディ「M11-P」で撮影。ピント面のシャープな立ち上がり、そこから前後に向けてなだらかにとろけていくボケ味、そして気品あるブルーの発色。まさに、ライカの写りを体現するような立体感を出してくれます。

手前の柵による前ボケを活かした写真。主役である人形がグッと浮き出るような立体感を描き出しながら、どこかレトロで温かみのあるこってりとした発色を見せてくれます。価格はお手頃かもしれませんが、写りはライカそのものです。
M9、M(Typ262)、M11-P。世代を超えて馴染む「王道で普遍的なポテンシャル」
このレンズの何より素晴らしいところは、組み合わせるボディの世代を選ばない点にあります。今回は、それぞれセンサーも写りも異なる3つのM型デジタルボディに本レンズを装着し、その写りの傾向を比較してみました。
■ 今なお根強いファンを持つCCDセンサー搭載の名機「Leica M9」
今なお唯一無二の発色で愛され続けるM9。ズミクロンを組み合わせると、CCDセンサーらしい濃厚でどこか哀愁を帯びたドラマチックなトーンで撮影することができます。

街角を駆け抜ける江ノ電。車体の象徴的なグリーンとクリーム色、そして踏切の鮮烈な赤。深みのある濃厚な色彩を、現行ズミクロンと合わせることで更にドラマチックに描き出してくれます。

広大な高原で草を食べる黒牛たち。湧き立つ雲の階調。そしてM9独特の深みのある青空の美しさが、レンズのクリアな描写によって鮮明に表現されています。

海の見えるテラスでのチョコレートケーキとコーヒー。室内や日陰でも発色が地味にならず、素材の持つ濃厚なツヤや質感を見事に捉えています。
■ 写真を撮る道具としてストイックに作られた「Leica M(Typ262)」
ライブビュー機能を無くし、純粋にスチル撮影と向き合うことができるカメラ「M(Typ262)」。初期のCMOSセンサーが描き出す、安定した素直なトーンはズミクロンとの相性良好です。

視界が開けた広大な風景。遠くに見える山肌や電波塔のディテールまで、画面の隅々まで歪みなく、シャープに描写されています。現代的で安定感した描写を感じる組み合わせです。

のんびりと草を食べる牧場の牛たち。ホルスタインの白と黒のコントラスト、そして湧き立つ雲。過剰な演出のない確かな階調が、ズミクロンの高いコントラスト性能と見事にシンクロしています。
■ 最新世代の裏面照射型CMOS・最大6000万画素を誇る「Leica M11-P」
高画素センサーを搭載した現行M型ライカ「M11-P」で使用しても、このレンズは全く破綻しません。むしろ、ボディの持つ高い解像力を引き出し、このレンズのポテンシャルを更に実感することができます。

ビルの幾何学的なライン、そして時計塔の細かな装飾。モノクロームに切り替えると、6000万画素のセンサー上で、線の一本一本が一切滲むことなく精緻に描き出されているのが分かります。

画面全体に広がる植物の葉。こちらもモノクロームにすることで、葉脈の微細なテクスチャや表面の質感がしっかり描写されます。画面の中心から四隅まで、一切の妥協なく均一に描写する実力には脱帽です。
15年以上前のCCDボディから最新の現行機まで、どの世代のセンサーに装着しても遜色なく使え、それぞれの魅力を最大限に引き出してくれる。持っていて損は無い、これぞ「王道」であり「普遍的」と呼ばれるオールラウンダーの凄みです。
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上位モデルにも引けを取らない「機動性」と「心地よい操作感」
ライカの50mmには、この上に「アポズミクロン」や「ズミルックス」といった最高峰のモデルが存在します。確かにそれらは一度は使ってみたい憧れのレンズです。ですが、日常使いにおいてこのズミクロンが劣っているとは、使用していて微塵も思いませんでした。むしろ「持ち運びやすさ(軽さとコンパクトさ)」という点では、ズミクロンに軍配が上がっているように感じた程です。

高架下を行き交う人々を捉えたストリートスナップ。強い光と深い影が交わる非常に明暗差の激しい環境ですが、シャドウ部まで豊かな階調を保っています。ここぞという瞬間に大仰にならず、すぐにカメラを構えられる「身軽さ」こそが最大の武器になります。描写力と機動性を兼ね備えた、最高のバランスです。

路地裏に佇む一台の自転車。フォーカスリングを回した時の、重すぎず軽すぎないトルク感。 絞りリングを回す心地よい手応え。「自分で光をコントロールして、ピントを合わせて写真を撮っている」という感覚を、指先からダイレクトに味わうことができます。

食堂でのカツカレー。機動性に優れたズミクロンだからこそ、お店の中でも周囲に威圧感を与えず、軽快に撮影を楽しむことができます。衣の質感やカレーのツヤを魅力的に描き出してくれます。
まとめ:迷ったら、まずはズミクロンから
「ズミクロンに始まり、ズミクロンに終わる」
ライカの世界でよく言われるこの言葉の意味を、今回3つの世代を跨いで使用し実感しました。クオリティ、サイズ感、価格のバランスが高い次元でまとまっているレンズは、他を探しても中々ありません。

押し寄せる波としっとりとした砂浜、歩く人々。光を優しく内包するような哀愁漂うトーンは、懐かしさと高い描写力が見事に同居した、印象深い1枚と仕上がっています。
15年以上前のデジタルボディであるM9から、最新のM11-Pまで、あらゆる世代のセンサーで最高の描写を提供する本レンズ。実は、現行ズミクロンの光学設計は、1979年に登場した「3世代目」から現在にいたるまで、45年以上もの間変更されていません。
時代やデジタル技術が進化しても変える必要がないほど、当時からすでに完成されていたということだと思います。この圧倒的な包容力こそが、まさにこのレンズが持つ「普遍的な魅力」です。
手に入れて後悔することのない名作レンズです。
これからライカでの撮影をスタートさせる皆様。ぜひこのズミクロンと共に、新しい写真の世界へ踏み出してみませんか。
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