
【MonsterAdapter】止まっていた時が動き出す。とあるオールドレンズを蘇らせた、「怪物」の物語。
2025年10月3日、ある商品が密かに発売されていたことをご存じでしょうか。
それはNikonユーザーが以前から欲して止まなかった、あるレンズ達を蘇らせることができる、画期的な機能を内蔵したアイテム。
Nikon純正でも成しえなかった偉業を、遂に成しえたマウントアダプター。
今回は「MonsterAdapter 電子マウントアダプター LA-FZ1」を、AF NIKKORレンズを用いてのレビューとなります。
【※本記事では主にDタイプレンズを用いた作例をご紹介しますが、初期AF NIKKORおよびDタイプレンズ(モーター非内蔵)が対応しております。詳しくはこちら】
MonsterAdapter 電子マウントアダプター LA-FZ1
①外観・機能


「MonsterAdapter 電子マウントアダプター LA-FZ1」は、ニコンFマウントレンズをニコンZマウントカメラで使用するための電子マウントアダプターです。AF NIKKORレンズの中でも初期のレンズをAF駆動させることが可能となりました。
外観はAiやAi-Sなどの絞りリングに採用されていた凹凸のあるデザインを模しており、今回使用したZ fなどのクラシカルなボディと馴染みやすくなっております。

側面にはAF/MFの切り替えスイッチがあり、マウント部にはボディ側と通信可能な電子接点が搭載されています。
焦点距離や露出などの撮影データもExif情報として記録可能になっており、ボディ内手ブレ補正機構への対応や各種被写体検出機能への対応など、ボディの性能を制限することなくお使いいただける仕様になっています。
②LA-FZ1が革新的な理由

これまでニコンから発売されている「FTZ」を筆頭に、サードパーティ製のものを含めて数多くのマウントアダプターが開発されてきました。
そのどれもが価格や性能など様々でしたが、共通して当時の動作を「再現不可」なレンズ群が存在しました。
それが、AF NIKKORレンズの中でもいわゆる初期型のレンズ(初期AF NIKKOR、Dタイプ等)です。これらはちょうどフィルム一眼レフ機にAFが採用され始めた時期に登場した、90年代から実に20年以上もの間製造され続けたレンズ群となります。
光学系はAiやAi-sといったMF時代のレンズを踏襲したものも多く、AFで簡単にピント合わせができながら、オールドレンズチックな写りをしてくれるという、現代から考えると「良いとこどり」な部分が特長となっています。
ミラーレス機の普及によってオールドレンズに注目が集まることとなり、このレンズも再び脚光を浴びるかと思われましたが、他のレンズと違い大きな障壁がありました。
それが独特のAF機構です。デジタル一眼レフ時代のレンズは主にレンズ側にAF用のモーターが組み込まれているため、マウントアダプターを通してカメラ側から電力が供給されれば、ミラーレス機でもAFを動かすことが可能でした。
しかし、このDタイプレンズはボディ側のモーターを動力としていたため、マウントアダプターを経由しても動力を確保できずAFを動かすことができませんでした。
しかしこの「LA-FZ1」はマウントアダプター自体から動力を供給するため、初期AF NIKKORでもAFを動かすことが可能に。
筆者を含めオールドレンズファンは歓喜したことでしょう。
Dタイプレンズを使用した作例
ではここからは、実際に作例を交えた本製品の使用感をお伝えしていきます。
この日のために用意したレンズは実に7本。有名どころから隠れた名作までご紹介いたします。
①Ai AF Fisheye-Nikkor 16mm F2.8D

2025年12月現在、まだZマウント純正レンズのラインナップにはないフィッシュアイレンズをご紹介します。
よくライブカメラマンのお客様などが当店でもお求めになられることが多く、そのたびにAFの効くお求めやすい価格の選択肢がないことに歯がゆい思いを抱いていました。
こちらのレンズであれば、FXフォーマットに対応しつつAFが効き、なおかつ比較的お求めやすいこともあり、これでようやっとお勧めできる選択肢が増えたことに筆者的には感謝しています。

フィッシュアイと言えば、タワーを撮る。筆者の中での定番ですが、皆様はどうでしょうか。
さすがに周辺部は流れるため中心部より解像度は落ちますが、逆に中心部を引き立たせる効果を狙ってみるのも面白いかもしれません。

通りがかった方の足元辺りにピントを合わせてスナップ撮影。
真上を走る鉄橋とはわずか数メートルほどの狭さでしたが、フィッシュアイの持つ強烈なパースが空間を広く見せ、独特の描写を生み出しています。

こちらはあとで紹介するレンズとの描写比較用で撮った1枚。強烈なパースが平面のはずの手すりや水面を曲げています。
広角側は被写界深度が深めになるため、AFの恩恵は少ないかと予想しましたが、こういった暗所や接写をする際には単焦点ゆえのF値の明るさと相まって有用であると感じました。
前述にもありましたが、まさにライブハウスなどの暗所で最大効果を感じられるような組み合わせでした。
②Ai AF Nikkor 20mm F2.8D

続いても広角単焦点レンズから、「Ai AF Nikkor 20mm F2.8D」です。
こちらは先ほどとは打って変わって、歪曲収差を抑えた建造物などの撮影にも耐えうるレンズとなっています。

クリスマスマーケットの街灯の中にサンタや雪だるまのオブジェが。
本来ここまでの広さはない被写体でしたが、広角で接写することで写真の中に広がりを生みつつ、先ほどのFish-eyeほどの強烈な効果は感じさせない描写です。使いどころを選ばないという点では優秀なレンズだと言えます。


先ほどのフィッシュアイでも撮影した被写体を比較用に撮ってみました。
筆者が超広角レンズを普段それほど使用しないことも相まって、作例のバリエーションが乏しいかもしれませんが、ご容赦ください。
先ほどとは打って変わって実直な写りが特長の本レンズですが、NIKKOR Z 20mm F1.8 Sと比べると大きさや重さは約半分ほどと、かなり取り回しのしやすいサイズ感となっております。後ほどご紹介するレンズにも共通する部分ですが、レンズ内にモーターを有していないDタイプレンズは比較的小型軽量なものが多く、今回の撮影でもレンズ7本をショルダーバッグ1つにまとめることができました。
③Ai AF Nikkor 28mm F2.8D

続いては「Ai AF Nikkor 28mm F2.8D」のご紹介です。
マップカメラの某スタッフお勧めのこちらのレンズ、筆者はフィルムカメラで使用していたこともあり、デジタルでの写りが気になるところです。


絞り開放で最短付近の写りが1枚目の写真です。最新のZマウントレンズと比べるとシャープ過ぎない写りで、光源などを写したときの柔らかさなどはこちらの方が好みの画が撮れそうだと感じました。
また少し絞って撮影したのが2枚目の写真です。四隅の光量落ちなどもなく、画面全域をしっかりと解像してくれています。


28mmの画角はストリートスナップなどの不意のシャッターチャンスにも強い画角です。
AFとの相性も良いため、道端などでとっさにカメラを構えてもタイミングを逃すことはありませんでした。
④Ai AF Nikkor 35mm F2D

続いては中古人気も高い、「Ai AF Nikkor 35mm F2D」のご紹介です。
常用レンズとしても人気の高い画角のため、筆者もAFが動いてくれればと切願していた1本となります。


まずはスナップでの作例。開放F2のボケ感と小型なサイズ感が相まって、シャッターを切る指が止まりません。
軽快な足取りで被写体に寄ったり、絞って全体を写したりと、汎用的な使用感はさすが35mmというところです。

また最短撮影距離は25cmのため、テーブルフォトにも向いたレンズとなっています。
こちらはお昼に頂いたラーメン。鴨肉のチャーシューが絶品でした。


途中で立ち寄ったカフェで撮ったカヌレ。室内でしたが問題なくAFが作動するか、わざと開放で撮影してみました。
AFのモーター音が大きめなため、静かなカフェでは目立つかもしれません。場合によっては側面のMFスイッチで切り替えましょう。
⑤Ai AF Nikkor 50mm F1.4D

続いては皆さまお待ちかね、「Ai AF Nikkor 50mm F1.4D」です。
光学系はAi時代のレンズ構成と変わりないため、MFのNIKKORレンズの写りのままAFが使えるという、まさにオールドレンズファンが求めていたものがここにあります。


このレンズ、ピントの合った面はオールドレンズらしからぬはっきりとした描写をしてくれます。
ただ最新のレンズと比べると1枚ベールのかかったようなウェットな写りが魅力的で、Z fに搭載されたフィルムグレイン機能とも相性が良いと感じました。発色も良いため、カラーでの表現も難なくこなしてくれます。


こちらは絞り開放と数段絞った写りの比較です。
開放での四隅の光量落ちが顕著に出るのがこのレンズの特長で、中央の被写体を強調するような描写を得ることができます。後ろのボケの量を検討しつつ、狙った効果を作品に生かすのもこのレンズを扱う上での楽しみの一つと言えるでしょう。
⑥Ai AF Nikkor 85mm F1.4D IF

そろそろ終わりが近づいてまいりましたが、Dタイプを語る上でこのレンズは外せません。
後の「AF-S NIKKOR 58mm F1.4G」や「AF-S NIKKOR 105mm F1.4E ED」などに引き継がれた“三次元的ハイファイ”の設計思想、その元祖と呼ばれるレンズがこちらの「Ai AF Nikkor 85mm F1.4D IF」です。


ファインダーを覗いて、思わず唸るような写りをしてくれるこのレンズの世界観。これまで紹介したレンズは、どちらかというと小型なサイズ感というくくりの中で、いろいろな個性を持ったレンズ達が多い印象を受けたかと思います。
Ai AF Nikkor 85mm F1.4D IFはマウント部からグッと広がるように鏡筒が太くなり、前玉はこれでもかというような大きさ。良い写真が撮れないわけがないと、謎の自信さえ湧いてきます。
ちなみにIF(インナーフォーカス)方式をいち早く採用したため、これまで紹介したレンズ達よりもAF速度は速く、またピント合わせの大きなモーター音もしません。ファインダーを覗いていて、スーッとピントが合ってくれる様子は爽快感さえ感じてしまいます。


写真という2次元の平面を眺めているはずなのに、なぜかそこから立体感を感じてしまうのは筆者だけでしょうか。
ツリーの枝が伸びてくる様、オーナメントや布飾りの質感、まるでその場にあるかのような見え方をするのは、Zマウントレンズなどを含めてもそうそうありません。
何よりDタイプレンズの嬉しい点がその価格。Zマウントレンズで同程度のランクのレンズを揃えようとした場合、総額はかなり嵩んでしまうでしょう。Dタイプレンズなら2025年12月現在で中古価格も落ち着いているため、選択肢の一つとしてぜひ検討いただきたい1本です。
⑦Ai AF DC-Nikkor 135mm F2D

いよいよ最後のレンズです。今回のレビューの中で最も望遠側のレンズであり、同じ画角ではZマウントレンズでPlenaという銘玉が名を馳せる中、知る人ぞ知るといったようなレンズ。その名も「Ai AF DC-Nikkor 135mm F2D」です。
先ほどご紹介したAi AF Nikkor 85mm F1.4D IFと同じく、“三次元的ハイファイ”の構想から生まれた本レンズ、最大の特徴は前ボケ・後ボケのボケ量を調節することができるDC(デフォーカスコントロール)でしょう。
ポートレートレンズとしての側面の強い135mmという画角の中で、前ボケや後ボケを自由にコントロールするための機構が搭載されており、固い・柔らかいなどボケ質の変更が可能です。


まず見ていただきたいのが、レンズのピント面の切れ味です。ピントの合った面はまるで現代レンズのようなシャープさを備えており、先ほどのAi AF Nikkor 85mm F1.4D IFよりもメリハリを感じる描写が見て取れます。

ここまで大口径の中望遠レンズだと、AFの精度が気になるところです。
ガラス越しの雪だるまにピントを合わせると、迷うことなくスッとピントが合ってくれました。標準~中望遠レンズに限った話でいえば、Zマウントレンズまではいかないですが、必要十分なAF精度を得ることができると筆者は感じました。
まとめ
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
「LA-FZ1」を使用した感想ですが、まずは今まで不可能だったDタイプレンズのAF駆動を実現したことに、オールドレンズファンを代表して感謝を申し上げたいと思います。
それと同時に何点か気になった点も。一つ目は、広角側のレンズを装着した際のピント精度が若干甘くなるというところ。筆者の体感的には28mm以下のレンズを装着した際に、ピントの合焦マークは出ているのですが、撮影後に確認するとややピントが甘いことが散見されました。
もう一点は暗所でのAF性能です。Zマウント純正レンズを使用した時と比べると、AF速度・精度ともに少し厳しいシーンがありました。
実際夜間のスナップ撮影も挑戦しようとしましたが、陽が落ちていくにつれて段々と合焦速度や精度が落ちていったため、やむなく断念・・・。
気になる所もありますが、「LA-FZ1」にはソフトウェアアップデートのための端子が備わっており、今後のアップデートで性能の改善や新たなレンズへの対応も示唆されているため、今後に期待したいところです。
MonsterAdapterという名前から、タイトルに「怪物」という言葉を用いてご紹介しましたが、よく偉大な記録を出した選手などに「〇〇の怪物」「怪物級」などの賛辞として使われることもあるこの言葉。ぜひ怪物級の実力をお試しください。




