
長い歴史を辿るレンジファインダーカメラの王者といえば、やはりライカ。
フィルム時代から現代のデジタルへと連綿と受け継がれてきたこのシステムは、多くのユーザーに愛され続けています。
しかしデジタル機の高画素化が進んだ現在、従来の光学ファインダーでは正確なピント合わせが難しくなってきました。

では、M型の美しいボディデザインを損なうことなくピント合わせをより簡潔に、確実に行うにはどうすればよいのか。
その答えは非常にシンプルな「ファインダーを電子ビューファインダー(EVF)に変える」というものです。
そして、その発想を形にしたモデルこそ今回ご紹介する Leica M EV1 です。

本機はEVFと背面液晶のみを搭載し、従来の光学式ファインダーを思い切って排除した意欲的なモデルです。
しかも今年は「ライカ I」誕生から100周年という節目の年。次世代M型の第一歩となる製品として、このタイミングでM EV1が登場した意義は非常に大きいといえます。
Leica Qシリーズで培われてきたEVF技術をついにM型に内蔵したことで、「レンズ交換が可能なQシステム」という見方さえできる新しい存在となりました。

EVFと光学式レンジファインダーの最も大きな違いは、露出や構図を“その場で答え合わせしながら”撮影できる点にあります。
現在のミラーレスカメラでは当たり前の方式とはいえ、M型は長年光学式ファインダーを採用してきたため、露出をファインダー内で確認することはできず背面液晶を確認する必要がありました。
もちろん外付けビゾフレックスを使えばEVF化は可能ですが、M型独自のスタイルを崩してしまうため好みが分かれるところです。
伝統的なM型のデザインを保ったままでEVFを内蔵したモデルは多くのユーザーが長年待ち望んでいたものであり、今回ついにその願いが形になりました。

明暗差のある場面を撮影する際、光学ファインダーでは経験を頼りに露出を判断する必要があります。
明るい部分を基準にすれば黒潰れし、暗い部分に合わせれば白飛びしてしまう。
しかしM EV1ならファインダーを覗きながら細かく露出を調整でき、実際の写りをそのまま確認しながら撮影できます。
M型を初めて手にする人でも、直感的に扱いやすい設計です。

とはいえ、長くM型やレンジファインダーを使ってきた方にとっては最初は違和感を覚えるかもしれません。
私自身、長年M型やBESSAなどを使ってきたことで初めのうちは戸惑いがありました。外観はレンジファインダーそのものですが、
ピントの追い込みはQシリーズでお馴染みのフォーカスピーキングやMFアシストを用いるスタイル。二重像を頼りに撮影してきた身としては、
「M型の構え方なのに、ピント合わせだけ現代的」というギャップは使い始めは不思議な感触です。
Q3では感じなかった違和感が、「M」という名称を冠するだけで意識を変えてしまう魔法があるのです。
しかし、数時間使い続けるとその違和感は自然と薄れ、むしろ快適に感じるようになっていました。
撮影したいイメージがそのままファインダーに反映される安心感は大きく、スマートフォンやミラーレスが当たり前の現代においては馴染みやすい方法です。
M11シリーズで約6000万画素に到達し、ピントのシビアさは一層増しました。
これまで「なんとなく合っていた」撮り方では許されなくなり、わずかなズレも大きく目立つようになった現在にM EV1はその不安をしっかりと解消してくれます。

街でライカを持つ人物が写った看板を見つけました。恐らくM11のロゴを隠したものと思われます。
取り付けられているのはズミクロン35mm旧ASPHで、現行とは異なるプラスチックの角型フードが特徴的。
今もなお多くのユーザーに愛される根強いモデルです。「ライカでライカの看板を撮る」という少し不思議な情景ではありますが、
冬のコートスタイルに自然に溶け込むのもまたライカの魅力。冬になると持ち出したくなる理由が、そこには確かにあります。
その意味ではこの看板のコーディネートは的確とも言えます。

50mmに切り替えると、M EV1の良さがさらに際立ちます。普段は35mmを多用している為、久しぶりの50mmはやはり奥深く難しい画角だと感じます。
私にとって50mmは「バランスの画角」であり、構図や距離感のシビアさは他の焦点距離以上です。
レンジファインダーの基本であり、ひとつの到達点が50mmなのだろうと感じながら撮影していました。

歩いていると、昔の銀座や有楽町が描かれた展示に出会い、多くの人が足を止めて眺めていました。
季節が進めば、クリスマスマーケットの賑わいも加わることでしょう。
50mmでは「少し引いて撮る」感覚が難しいものの、EVFなら適切な距離感をきちんと確認しながら撮影できます。

同系色でまとまったディスプレイもレンジファインダーでは難しい被写体ですが、M EV1なら一目で状況を把握できます。
おすすめしたいのは、親指ホイールのファンクションボタンにMFアシストを割り当てる設定です。ファインダーを覗いたまま拡大表示に切り替え、ピント精度をしっかり確認できる設定です。
自動拡大にする手もありますが、フォーカスリングを回すたびに拡大されるため好みが分かれます。フォーカスピーキングと拡大表示の今後の進化にも期待が高まります。

モノクロにしても力強い描写が得られるのは、やはりライカならでは。
これは後からモノクロに変換したものですが、M EV1ならファインダーで効果を確認しながら撮影できます。
QやSL、国産ミラーレスでは当たり前の機能とはいえ、それが“M型のボディ”で実現したことに、改めて大きな進化と感動を覚えます。

このEVFの恩恵が最も発揮されるのはストリート写真よりもポートレートや風景撮影といった、より繊細な画づくりが求められる場面なのかもしれません。
M型らしい親近感のある撮影スタイルを保ちながら、その場で結果や画角をダイレクトに確認できるというEV1の特徴は、
プロの現場でM型を使いたいというニーズにも確かに応えているはずです。趣味性の高さと道具としての実用性、その双方をうまく反映させたモデルと言えます。

従来のM型で行っていたような反射神経を頼りにした撮影も、慣れてくればこの通りこなせるようになります。
「ピントがどこまで正確に合っているのか」という不安が完全に消えるわけではありませんが、その部分は使い続ける中でユーザー自身が状況に応じて切り分けていく必要がありそうです。

このM EV1をよく見ると、距離計を持たないM型カメラであるMDやMDaなどを思わせるデザインが随所に見受けられます。
こうした点にも、ライカが自身の歴史を大切にし続ける姿勢がしっかりと表れていると感じます。
同様の機能を備えたカメラは他社からも発売されており、利便性だけを基準にすればM EV1は決して「最新鋭」と呼べる存在ではありません。
しかし何よりも注目すべきなのは、歴史あるライカM型というプラットフォームに現代的なEVFを本格的に搭載したという事実です。
それ自体が大きな挑戦であり、その“第一人者”を自らの手で使えるという点にこそ、M EV1の存在意義があります。
ライカ I 型の誕生から100年。このM EV1は、いわば“101年目のライカ I 型”と言える存在です。
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