
発売から4年を迎えた「Z9」にファームウェアのアップデートがあったのです。
バージョン名は『5.30』。
しかし中を開けてみると、それはもはや『6.0』で良いのではないか?と思わせる内容でした。
今回は野鳥撮影の視点でこのバージョン5.30にフォーカスしたいと思います。


Ver.5.30で何が変わった? 〜野鳥撮影目線から〜
一番のポイントは、これまでエリアAFが運用のメインだった被写体検出が、シングルポイントAF/ダイナミックAFでも使えるようになったことです。
これにより、細かな狙い位置を自分で決めながら、被写体認識の恩恵も同時に得られるようになりました。
野鳥撮影では、枝被りや背景の乱れ、被写体の向きの変化が当たり前です。
その中で、ダイナミックAFで任意の位置から被写体を掴みにいける感覚は、想像以上に“撮影体験”を変えます。
エリアAFだと追い込みにくかった場面でも、狙いどころをコントロールできるようになり、結果として歩留まりが上がりました。
とはいえワイドエリアAFも進化。カスタマイズの範囲が広がり、最大でほぼ画面いっぱいまで設定できるようになりました。
縦長であったり横長であったり、今まで以上に自由度が増して被写体に対しての適応度が上がりました。
加えてボディ側でのフォーカスリミッター機能が新搭載。
止まり木に留まっている野鳥を撮影する時など、距離がある程度定まっている場合はこれを設定しておくことで不意のフォーカス抜けなどを防止することができます。
フィールド体感:ダイナミックAF+被写体検出が“とても使いやすい”
実際に使ってまず感じたのは、AFの食いつきが一段上がったこと。
サギのように顔が細長く鋭い鳥でも、顔の輪郭に迷わず「鳥」として認識して目へピントが移っていきます。
また、カラスやオオバンのように顔(目元)が黒く、コントラストが取りづらい被写体でも、不安定になりやすい条件の中でしっかりと目を認識してくれる場面が増えました。

さらに、ただ“認識する”だけではなく、狙った位置から認識を起動できるのがVer.5.30。
例えば、画面内で鳥が小さいときにワイドエリアで拾わせるのではなく、ダイナミックAFの起点を「ここ」と決めてから掴ませる。
野鳥撮影で必要な“操作の気持ちよさ”が戻ってきたように感じました。
柵や枝被りなどの余計なものを避けて起点を作り、そこから被写体認識でAF合焦させれば肝心な時にピントが合わないなどという事故も減らせます。
モニターキャプチャ動画:認識の入り方が、撮影テンポを変える
文章だと伝わりにくい部分こそ、まずは動画で。
ダイナミックAFでも被写体認識が効く様子と、向上したAF性能による被写体へのAFの追従性などもぜひご覧ください。
ダイナミックAF運用でも被写体認識が効くことで、狙い位置→鳥認識→目に合焦、までの流れがスムーズになりました。
おすすめ設定:まずはこの“3つ”から
Ver.5.30を野鳥で活かすなら、最初は難しく考えず、AF-C+ダイナミックAF(S/M/Lいずれか)+被写体検出(鳥)の組み合わせから始めるのがおすすめです。
エリアAFに寄せなくても良いぶん、狙う位置の自由度が上がります。
さらに、状況に応じて検出対象を切り替える方は、カスタム設定に追加された「被写体検出設定の循環選択」や被写体検出の切替をボタンに割り当てておくと、現場で迷いません。
ここは「撮れるか」ではなく「撮影のリズムが崩れないか」に直結する部分です。




目に“来る”までの確率が、確実に向上
ここからは作例です。細部の解像だけでなく、
ピントが迷っている時間が減った分、構図や背景の整理に意識を向ける余裕が生まれるようになりました。
野鳥以外にも:Ver.5.30は“表現”と“実用性”も強化する
AFの印象が強いアップデートですが、実はピクチャーコントロールにも変化があります。
フラットモノクローム/ディープトーンモノクロームが追加され、さらにピクチャーコントロールがフレキシブルカラーにも対応。
撮影時点から仕上げの方向性を持っておける選択肢が増えました。
また、フォーカスリミッター設定や、ネットワーク周り(USBストリーミングなど)も含めて細部が強化されています。
“撮る”だけでなく、“使い続ける”カメラとしての完成度を、もう一段押し上げる内容だと感じました。
Ver.5.30の「他の更新内容」まとめ
静止画
- 被写体検出が [シングルポイントAF] / [ダイナミックAF(S/M/L)]でも使用可能に。
- ワイドエリアAF(C1/C2) のフォーカスエリア寸法を拡張
- ピクチャーコントロール追加:フラットモノクローム / ディープトーンモノクローム、さらに Flexible Color Picture Control対応。
- オートキャプチャに「撮影後にフォーカスを戻す(Reset focus after shooting)」追加、被写体検出タイプに Face 追加。
動画
- 被写体検出が [シングルポイントAF]でも使用可能に。
- Hi-Res Zoom有効時、検出被写体にフォーカスポイント表示(ON時)。
- オートキャプチャ周り/ピクチャーコントロールも静止画同様に拡張。
操作系
- フォーカスリミッター設定(カスタム項目追加)
- 割り当て可能機能の追加(Focus limiter / Cycle subject detection options など)や、ズーム倍率400%追加。
ネットワーク
- USBストリーミング(UVC/UAC)追加、FTP/NTPなど細かな拡張。
その他
- 静止画の被写体捕捉を含むAF信頼性の改善、NX Tether等からのWB直測、外部マイクでのボイスメモ等。
『Z9』は、まだ進化を続ける

どんなに完成されたフラッグシップでも、現場で求められるのは「迷わないこと」と「狙えること」です。
Ver.5.30のZ 9は、被写体認識とAF性能向上の恩恵を受けながら、撮影者の意思で迷わず狙えるようになりました。
そのバランスが、野鳥撮影のストレスを確実に減らしてくれました。
発売から年数が経過し、中古からも選びやすくなってきた今だからこそ、Z 9の“完成形”を体感する価値は大きいと思います。
これから導入を検討される方も、すでにお使いの方も、ぜひアップデートの上、フィールドで確かめてみてください。
※アップデート前には設定の控え/バックアップを推奨します(アップデートにより一部保存設定がリセットされる場合があります)。

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