
【Nikon】ほぼ全ての機材を手放してなお、それでも最後まで手元に残したレンズ
「Nikonはレンズが良い」というフレーズをよく聞きます。
実際に仕事で使っている身としても、同世代のライバルメーカーと比較して各収差の少なさ・写りのシャープさで一歩も二歩も先を行っていると感じます。
そんなNikonには愛好家も多く、私の知人にも何人か熱烈なファンがいます。
先日その中の一人が、結婚を機にほとんどの機材を手放してしまいました。
Fマウント・Zマウント合わせてかなりのボディ・レンズを揃えていた生粋のNikonファンだったので非常に驚きましたが、結婚すればお金もかかるし生活スタイルも大きく変わるので致し方ないのかもしれません。
その話を聞いた時は「もう一緒に写真を撮りに行くことはないのか」とさみしい気持ちでしたが、よくよく聞いてみるとボディ・レンズ共に少しだけ手元に残したようなのです。
「Z8」と「D850」、そして「AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED」と「AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8E ED VR」。
そこにマウントアダプターの「FTZ II」を加えた合計5つ。
ミラーレスのZ8だけではなくD850があるところに、Nikonファンとしての矜持を感じました。
しかし最近メインで使っていたのはZの方のはずなので、いくら高画質な大三元レンズとはいえ上記の2本では物足りないのでは?と思ってしまった私。
そのように尋ねたところ、
「確かにNIKKOR Z 24-70mm F2.8 S II やNIKKOR Z 14-24mm F2.8 S と比べれば性能は落ちるが、まだまだ全然いけるし4500万画素のボディで使っても何の問題もない」と力強い言葉をいただきました。
その言葉が妙に引っかかりはや数週間。
久しぶりにこの2本をD850と共に持ち出すことにしたのでした。
AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G ED
2007年11月30日に発売した、デジタル一眼レフ用の広角ズームレンズです。
Nikon初のフルサイズCMOSセンサーを搭載したフラッグシップデジタル一眼レフ「D3(1,210万画素)」と同日発売のこのレンズは、なんと今年で発売19年。
にもかかわらず現行商品なのです!
当時の技術者は、まさか4000万画素オーバーの製品が群雄割拠する時代が来るとは露ほども思っていないでしょう。
そんな中において、このレンズは未だトップクラスの描写力を誇ります。
それこそミラーレス用の広角ズームを相手取っても、です。
年代を考えると、まるでガラケーがスマホと同じ土俵で戦っているようなものですが、それを涼しい顔でやってのけるのがこのレンズなのです。

久しぶりに超広角ズームレンズを使いましたが、とにかく使い出があって楽しい!
標準ズームレンズでは構図が作れないような狭い空間はまさに独壇場、一本持っておくと本当に表現の幅が広がります。
しかしこのレンズは恐ろしい。
薄暗いエレベーターの中で、窓の外の光もフレームインさせたのに、フレアもゴーストも見当たりません。
「いやいや何個かゴーストが出てるでしょ」と思われるかもしれませんが、実はこれは雨粒のせいなのです。
(この日は土砂降りの雨だったので、レンズ前玉に度々水滴がついてしまいました)


とはいえいついかなる時もフレア・ゴーストが出ないわけではなく、苦手な条件も存在します。
上の写真はどちらも24mm、室内で強めのライトがあるシーンです。
このような状態ではほぼ毎回出てしまいます。
広角側より望遠側の方が逆光には弱いようです。
依然として解像力は良好ですが、強い光源のある場所で24mmを使いたい場合は標準ズーム側にまかせるのもアリかもしれません。

超広角の撮り方のセオリーであるシンメトリーを試してみます。
うん、良い。
金属の冷たさや硬さが良く出ており秀逸です。

雨の次は晴天下の写真で。
非常に気持ちの良いパリッとした写りです。
コントラストも良く、線もしっかりと出ています。
白飛びしているように見える床の模様も拡大すればちゃんと残っており、トーンがしっかりと出るレンズだという事がわかります。

意地悪に絞り開放の隅を等倍にしてみましたが・・・窓の桟のシャープさときたら驚きのレベルです。
ランプのあたりからは被写界深度外となるため、超広角ズームにも被写界深度はあるのだなぁと当たり前のことを思い出しました。
あまりにもよく写るため、それくらいしか思うことがありませんでした。

超広角ズームレンズはその性質上、写り込む範囲が広くなります。
風景を撮れば空から日陰まで様々な被写体がフレームインするので、再現できる明度や色の幅が広ければ広いほど良いわけです。
D850のセンサー性能に支えられている所も大きいとは思いますが、それにしてもここまで色情報をしっかりと持っていてくれるのは驚愕です。
開放から少し絞っているのは解像力の為ではなく、先ほど被写界深度があることを思い出したからです。

被写界深度と言えば、ボケ味も秀逸でした。
前ボケ・後ろボケ共に滑らかでざわつきもなく、いやな色付きも見受けられません。
傷だらけの金属をこれだけ近距離で撮ってなお何も起こらないのは、驚きを通り越して真顔になってしまいます。
繰り返しますが、本レンズは2007年発売。ガラケーにipodの時代のレンズです。

さらにこのレンズは最短撮影距離も短く、広角レンズの醍醐味である「被写体に寄ってパースを効かせる」撮影もお手の物。
後継機である「NIKKOR Z 14-24mm F2.8 S 」とほぼ同じレベルの最短撮影距離を誇るのです。
(NIKKOR Z 14-24mm F2.8 Sは撮像面から0.28m(ズーム全域)、AF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G EDは0.28m(焦点距離18mm~24mm)、0.3m(焦点距離18mm未満))
おまけに寄っても描写が緩くならないというおまけつき!
後ほどご紹介するAF-S NIKKOR 24-70mm F2.8E ED VRは近接撮影で明確に解像力が落ちてしまうのですが、本レンズはかなり頑張って耐えてくれます。

更に解像力が落ちないだけでなく、立体感・素材の硬さや質感・空気感もバッチリ出るという驚愕の素敵性能。
撮影時は思わず「なんだこのガラスの透明感は・・・」と唸ってしまいました。
断言します。間違いなく実物より美しく写っています。

さて、発売時期的なこともあり、このレンズに手振れ補正はついていません。
一眼レフで使用する場合はシャッタースピードに気を付け、可能であれば静音撮影を行いましょう。
比較的新しい機体なら、高感度ノイズが少ないのでISOオートに頼っても良いかもしれません。
FTZ IIを使用してZボディに装着する場合は、ボディ内手振れ補正があるので安心です(フルサイズ機のみ)。

周辺光量落ちを見ていただくために、カメラでのヴィネットコントロールを「しない」にして撮影しました。
お化粧なしの状態の絞り開放では、やはりある程度のヴィネットが見受けられます。
これをドラマチックとするか不要なものとしてみるかは人によって変わりますが、表現の幅が広がるということでもあるので好意的に捉えたいところ。
右側の方が暗い理由は、単純に空が暗かったからです。


広角レンズならではの歪曲収差をチェック。自動歪み補正を切ったものと入れたものを比較してみました。
もともと歪曲が少ないレンズではありますが、こうしてみるとやはり違いがあることが分かります。
とはいえソフトウェアによる自動補正前提の時代のレンズではないので、立派な結果ではないでしょうか。
(白い壁に斧という組み合わせは、有名なホラー映画を思い出してしまいます)

広角レンズのAF精度はモデルによってまちまちですが、このレンズは基本的に問題ありません。
逆光でも、水面のように像がはっきりしなくてもスッと合焦します。
ちなみに無限遠から最短までのAF速度はおよそ0.23秒(14mm時)。
ストップウォッチでの計測なのでアバウトですが、十分に早いと言っていいのではないでしょうか。

最後は広角レンズの性能テストの為に建てられたビルへ。
巨大な目玉に見つめられているかのような、圧迫感のあるカットを選びました。
・・・
撮れば撮るほどため息が出るレンズ。
そろそろ発売から20年が経とうというのに、全く古さを感じさせない性能は驚愕のレベルです。
なるほどこれは最後まで残すべきレンズだと納得。
丁度キャッシュバック対応、かつアウトレット品もあるので、組み合わせれば新品が10万円台で手に入るチャンスです。
後継機のNIKKOR Z 14-24mm F2.8 Sがキャッシュバック込みでほぼほぼ30万円程度なので、その差はおよそ10万円ほど。こちらはフィルターが装着可能となり利便性が向上、画質も相応の進化をしています。
(2026/9/18時点での価格です)
AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8E ED VR
さて、次は標準ズームレンズの金字塔「AF-S NIKKOR 24-70mm F2.8E ED VR」です。
このレンズは久しぶりに使いましたが、変わらず良いものでした。

このレンズの何が凄いかと言いますと、世界で唯一の「デジタル一眼レフ用純正レンズ且つ手振れ補正付きのF2.8通し標準ズームレンズ」なのです。
SIGMAやTAMRONといったサードパーティーでは存在しましたが、純正ではこれだけです。
もちろん写りも一級品、非常に良い抜け感です。


夏の盛りを過ぎ、少しばかり秋の気配が混ざり始めた街。
ハイライトを強烈にすっ飛ばすような日差しもありつつ、それでもどこか柔らかく、日陰にも光が回っているようなあの雰囲気をちゃんと掬い取っています。
自転車の方の写真は少しだけパープルフリンジが見受けられます。
強い光源に加えて近接撮影ですので致し方ないかもしれません。

このレンズは基本的に非常に良く写りますが、ハイライト部に滲みが出やすいイメージがあります。
線がしっかりと出たうえで柔らかに滲む感じなので、Zマウントの単焦点レンズである「NIKKOR Z 35mm F1.4」や「NIKKOR Z 50mm F1.4」に似ていると感じます。
つまり「幻想的な感じが出るけどしっかり写るレンズ」ということです。

先ほどの説明だと、「もしかしてあんまり高解像ではない・・・?」と思われるかもしれません。
確かにAF-S NIKKOR 14-24mm F2.8G EDのように、どんな条件でもひたすらにシャープというわけではありませんが、基本的な撮影シーンでは凄まじくシャープです。
「望遠側(特に70mm)の最短撮影距離付近」もしくは「強い光源がある場合」は少し収差が見られますが、それ以外では絞り解放からかなりの切れ味を誇ります。
また、ボケ味についてもなかなかにスムーズで、これはライバルであった「Canon EF24-70mm F2.8L II USM」に比べて明確なアドバンテージだと感じます。


周辺光量のチェックです。
左がヴィネットコントロール「標準」。
右が「しない」です。
比較的出番が多い50㎜付近を選んでチェックしてみましたが、角の部分の暗さは少し気になるかもしれません。
左の作例でも少し黒く潰れています。
(とはいえライバルも似たような感じですので、ここをつつくのは野暮ではあります)

望遠側70mmの最短撮影距離の写真です。
先程の船の写真などと比べると、かなり柔らかめの写りになっているのが見てとれます。
そもそも大口径ズームレンズの最短撮影距離付近は解像力が大きく落ち込んで当たり前ではありますが、このあたりの性能はミラーレス世代では大きく進化しています。
唯一と言ってよい、時代を感じるポイントです。

とはいえのっぺりしがちな曇天でもコントラストが出るあたりは流石というところ。
立体感もちゃんと出ています。
また、近距離でもAFの精度は安定していました。
ストップウォッチによる計測では、無限遠から最短までのAF速度はおよそ0.21秒(70mm時)。
レスポンス良く動いてくれる、頼れる高速AFです。

ガラス越しの室内という条件でも、それは変わりません。

基本的には淡々と自分の仕事をこなすレンズですが、時折ゾクッととするような写りを見せてくれます。
素晴らしく抜けが良く、まるで空気の透明感が上がったかのような・・・。
そういった写真が撮れる時の条件は、40mm~50mm付近を使い、1m以上~3m未満くらいの距離の被写体を撮影したときに多い気がします。
また、明るい場所より暗い場所の方がキレが良く感じます。

これがいわゆる「得意な条件」になるのでしょうか。
普段は安心できる高画質を提供し、得意な条件ではキメの画を出力してくれる・・・。
メーカーを背負って立つ大三元標準ズームレンズに相応しい性能です。

一度知ってしまうと病みつきになるので、ついついその条件で撮りたくなってしまいます。
この日に撮影した写真は、気づく前と気付いた後で写真の撮り方が全く違っています。
無意識に特異な条件を選び続けてしまいました。
・・・
ここ最近標準ズームを使うことが減っていたので、改めてその便利さをかみしめると同時に、性能の高さも感じることができました。
特に遠景の描写は目を見張るものがあり、4500万画素の写真を等倍鑑賞しても「植物」と「金属」の質感を描き分けてくれているのは驚きです。
エッジのシャープネスだけではこういった芸当は不可能なので、トーンの豊かさなども含めた基本性能がなせる業でしょう。
先日Z8とNIKKOR Z 24-70mm F2.8 S IIの組み合わせも使いましたが、こちらは線が細く繊細な代わりに少しだけ儚さを感じる写りだったのに対し、D850とAF-S NIKKOR 24-70mm F2.8E ED VRは力強く立体感がある描写に感じます。
流石にAF性能や周辺部の写り、近接撮影時の解像力も含めればNIKKOR Z 24-70mm F2.8 S IIには敵いませんが、なかなかにいい勝負ができるレンズだと思いました。
本レンズもキャッシュバック&アウトレットを組み合わせれば新品が17万円台!
NIKKOR Z 24-70mm F2.8 S IIはキャッシュバック対応ではないので、金額差はほぼ倍になっております。
(2026/9/18時点での価格です)
最後に
今回使用したレンズたちは、数多あるFマウントレンズの中でも、特に評価の高い2本です。
しかしこの他にも驚異的な抜けの良さと解像力を誇る広角単焦点「AF-S NIKKOR 28mm F1.4E ED」や、ボケ味の良さで多数のファンがいる「Ai AF DC-Nikkor 135mm F2D」など、銘玉を数えれば枚挙に暇がありません。
もちろんそれらをさらに進化させたZマウントレンズはさらに高性能なわけで、ただひたすらに光学性能を磨き続けるその姿勢にはただただ感心するばかり。
ずば抜けた性能のレンズならば、後継機が登場してもずっと使い続けられますので、財布のみならず気持ち的にも非常に楽です。
こういったユーザーへ寄り添うところが熱烈なファンを生むのだなぁ、としみじみ思う出来事でした。
ちなみに冒頭で紹介した彼が他にも機材を隠し持っており、奥様に怒られたことは言うまでもありません。




