Panasonic 『LUMIX S5』発売直前! 開発者インタビュー Vol.2
記録メディアをDC-S1やS1RのようなXQD・CFExpressカードではななく、DC-S1HのようにSDカードスロットを採用したのは、具体的にどのような理由ですか。 また、他社ではCFExpress Type-A といった新規メディアを採用する動きがありますが、本機種で採用しなかった理由や、今後の対応予定などはありますか?
角氏: メディアの種類については、機種の特性に最適なものを選択しています。S1やS1Rでは次世代の高速カードであるCFexpressに対応しましたが、これは静止画用途でのRAW連写ユースを想定した結果です。特にS1Rについては47Mと高画素のため、連写時には有用だと考えています。一方、映像制作をメインターゲットとしているS1Hでは動画用途が中心となりますが、S1Hに搭載している動画記録の最大ビットレートは400Mbpsであり、これはSDカードのビデオスピードクラスであればV60で記録することが可能です。そのためS1HではSDカードを選択しました。S5は静止画・動画両面で使用されることを考えておりますが、ボディの小型化を優先し、SDカードを選択しています。
DC-S1RやDC-S1で、(プロ・アマ含めた)ユーザーの方から評価された点と、 厳しい意見を受けた部分、それぞれはどのようなもので、 今回のS5の設計開発に当たってはどのように反映されているのでしょうか。
角氏: 静止画・動画ともに色再現力などを中心とした画質・表現力やシャッターや手ブレ補正などの高い基本性能に加え、操作性や堅牢性を高く評価いただきました。一方、性能を重視したため、アマチュア層の方々にはサイズや重量の面で、ご意見をいただきました。今回のS5は、より多くの方々にご使用いただけるカメラを目指し、小型・軽量ボディの実現を目指しました。またその中で単に小型化するだけではなく、S1シリーズで評価いただいた内容をしっかりとバランスを見ながら搭載することに拘りました。さらにAFについては、ディープラーニング技術を活用した認識AFを、新たに“頭部認識 ”に対応させ、追従性や認識力の向上により“リアルタイム認識AF”を実現しています。
ずばり今回のDC-S5の設計・開発で最も苦労した点、最も自信のある点を教えてください
角氏: S1シリーズはプロの仕事の道具として、全てにおいて妥協をしないカメラとして開発し、発売させていただきました。一方、S5はアマチュアからプロの方々まで幅広いクリエイターの方に向けて開発したカメラであり、やはり一番のポイントは小型・軽量化になります。ただ小型・軽量化を実現するにあたり、単にS1シリーズから性能を落とすのではなく、いかにS1シリーズの高い性能を小型・軽量ボディに搭載するかというのが苦労したポイントになります。小型・軽量化の実現にあたり、シャッターユニットや手ブレ補正機構を新開発 しましたが、性能とサイズのバランスに拘りました。また新開発のバッテリーについてもカメラとの接点端子をどこにすればカメラボディが小型化できるかなど、細部まで徹底的に拘っています。さらにこれまでS1HやGH5等で培ってきた放熱技術や低消費電力技術などもさらに進化させ、4K60pや10bit撮影で30分、4K30p 8bit撮影であれば時間無制限などを実現しています。
※頭部認識に対応し認識機能の強化により、追従精度が向上したリアルタイム認識AF
LUMIX SシリーズにはライブビューコンポジットやHLGフォトといった、 様々なシーンで使える先進のモードが多く搭載されており、これらは今回のDC-S5にも搭載されています。こうした機材の性能の高さは安心感にもつながる一方で、 一部の方からは自らの設定ではなく、機械に任せたオート撮影と受け取られてしまう部分があり、「LUMIXは家電?」と称されてしまうこともあり、とても勿体ない印象をもっています。 こうした先進機能を多く積み込み、作画の提案・補助をすることと、 ユーザーが自分の感覚、自分の手で設定して画を作る楽しさを味わうこと、 どちらも重要な要素だと思いますが、メーカーとしてはこのバランスはどのようにとっていますか。
角氏: 先ほども述べましたが、Sシリーズは“表現力”に拘り開発しています。ライブビューコンポジットやHLGフォトなどの機能も、ユーザーが自身の表現を実現することを助ける機能ですので、全てカメラ任せというわけではなく、これらの機能を駆使し、それぞれの表現を実現していただければと考えています。またフォトスタイルではLUMIXならではの絵作りによる写真・映像表現をお楽しみいただけます。撮って出しはもちろん、単にカメラ任せということだけではなく、パラメータの調整などご自身の表現に合わせた調整も可能となっています。このように、カメラにお任せというだけでなく、自分で調整して自己表現を楽しむという部分も重要だと考えています。
左:HLGフォト・右:ライブビューコンポジット