
写真の楽しみ方は、シャッターを切った瞬間に終わるわけではありません。むしろ、その先にもう一つの表現が待っています。最近、私の中でちょっとしたマイブームになっているのが、プリセットを使ったRAW現像です。一時期は、撮影後に明るさやコントラストを微調整する程度で「現像」という作業そのものに、以前ほど必要性を感じなくなっていました。ところが、何か新しい刺激が欲しいと思い、試しにプリセットを使ってみたところ、これが思いのほか面白かったのです。自分では選ばなかった色、自分では動かさなかったトーン。ワンクリックした瞬間に、それまでとはまったく違う写真が現れることがあります。最近では時間を見つけては過去の写真を引っ張り出し、1枚ずつ新しい表情を探すようにRAW現像を楽しんでいます。今回は、そんな「プリセットから始めるRAW現像」の面白さを、Before/Afterで見比べながらご紹介します。
スライダーのBeforeが無補正、Afterが現像後の状態です。無補正の状態にも、自然な周辺減光や透き通るような青のトーンがあり、これはこれで十分に魅力的です。そこからプリセットをきっかけに色調を変え、シャドウを持ち上げることで、ヤシの木の細かなディテールが見えるように仕上げました。こうして大胆に色を変えてみると、想像していなかった写真に出会えることがあります。それがプリセットを面白いと感じている理由の一つです。
今回使用したレンズは、「Voigtlander(フォクトレンダー)APO-LANTHAR 28mm F2 Aspherical」
と、「Carl Zeiss(カールツァイス)Otus ML 50mm F1.4 Z-mount」。どちらも、元となるRAWデータを丁寧に残してくれる素晴らしいレンズです。
今回、新しい試みとして「レイヤー」を使った現像にも挑戦してみました。プリセットを一度適用して完成、とするのではなく、複数のプリセットをレイヤーとして重ね、それぞれの効果の強さを調整しながら仕上げていきます。※露出や明るさなどの基本的な補正は元の写真側で行いました。
もともとアンティークな雰囲気を持つ被写体ですが、色温度やコントラストの方向性が変わることで、さらにノスタルジックな印象になりました。自分だけでゼロから現像していると、どうしてもいつもの色、いつものコントラストに落ち着いてしまうことがあります。予想していなかった仕上がりだからこそ、「この方向も面白い」と気づかせてもらえる。それもプリセットを使う楽しさです。
このカットでの現像作業では、ハイライトやシャドウを普段より大胆に動かしてみました。そこで驚いたのが、一見すると黒つぶれしているように見えた暗部です。シャドウを持ち上げてみると、そこから階調や細かなディテールが少しずつ浮かび上がってきました。RAWデータの持つ情報量の多さを改めて認識できました。
こうした思い切った現像も、まずワンクリックで試せることもプリセットの魅力です。ゼロからすべてのパラメーターを動かして同じ方向性を探そうとすると、それなりに時間がかかります。1枚にかかる時間が少なくなったおかげで、過去の写真を見返す機会がかなり増えました。
最後は、日が暮れていく時間帯に撮影した一枚です。夕方や夜の写真は明暗差があるため、現像による変化をより楽しめます。
写真との向き合い方は、まさに「十人十色」。JPEGの撮って出しを楽しむ人もいれば、RAWから時間をかけて一枚を仕上げる人もいます。そこに絶対的な正解や優劣があるわけではなく、大切なのは、自分がその写真をどう見せたいのか、どんな気持ちを残したいのかです。今回は、最近マイブームになっている「プリセットを使ったRAW現像」をご紹介しました。また機会があれば、ご紹介できればと思います。










