
気がつけば1年。
当初はその見た目や思想に惹かれて使い始めた「SIGMA BF」でしたが、1年という時間を経て残った感想は少し違います。
使い込んだ結果見えてきたのは、スペックや話題性とは少し離れた場所にある魅力。
マップカメラスタッフが丸1年使用した最速のレビューをお届けします。
もう持っている方も、まだ迷われている方も是非ご覧ください。

1年間手放さなかった理由。
SIGMA BF、まずこのカメラは万能ではありません。ただし、使うたびに鮮烈な衝撃が毎度訪れる1台。
ありふれたカメラであればその感動や新鮮さは日を追うごとに薄れてしまうものだと考えますが、SIGMA BF、1年経った今も1年前の感動が蘇ります。
他のカメラでは当たり前になってしまった景色が、このカメラを通すと少し違って見える。
たった数時間でも、被写体が変わるだけでも、「こんな画も撮れるのか」、「この世はこんな切り取り方ができるのか」と思わせてくれる感覚。
私自身は大変飽き性で、性能が良いものであっても合わないものは数日で手放すこともしばしば。「SIGMA BF」に関してはそうなりませんでしたが。
1年間手放さずに使い続けた理由、これはひとえに「期待が途切れないから」と言うべきだと思っています。

忖度なし、ここだけは我慢しているポイント。
購入前に懸念されていた不便さについては実際のところほとんど気にならなくなりました。
例えばストラップの自由度が狭いこと、Wi‑Fi非搭載であること、バッテリー容量、内蔵メモリーのみという仕様。などなど。
どれも当初は賛否両論、話題になった特徴ですが、生活の中に組み込まれてしまえば容易く順応できるものです。
ちなみに私は発売当日からずっと純正のストラップのみを使用。質のいいリストストラップ、慣れるほどに専用の立ち回りが身につきます。

さて、前置きが長くなりましたが1年使ってみて私が躓いたのは、カメラ本体の仕様ではなく“撮ったあと”の部分。
多様なカラーモードを持つこのカメラはJPEGの色味がとても魅力的だからこそ、あと少し追い込みたいときに少々手間がかかります。
普段adobe lightroomを使用する私にとってrawから再現するには難しく、かと言ってJPEGに手を加えるのも好ましくない。
実際のところ様々な抜け道や解決方法はありますが、現状とその間にある微妙な距離感が案外悩ましく。
まだまだJPEGのまま満足できるカラーモードの探求は楽しみながら続けられそうです。

例えばもう少しシャドウを締めたい、そう感じたら最近はカメラ内で編集するようにもしています。
反対に考えれば、これくらいのことでしか不満を語ることはできなくなっていました。
慣れと言ってしまえばそうかもしれませんが、慣れることができる不便はもはや不便ではありません。
カメラシステムを変えれば多かれ少なかれ慣れが必要になるもの。
その期間を飽きさせずに楽しむだけの魅力は十二分に持っています。
最終的に残った使い方。
1年使っていると自分の中で自然と選ぶ設定が固定化されてきます。

特に多用するようになったのが「CALM」のカラーモード。
もとの色から少し自分好みに調整することで、過度な演出感を出さず、それでいて空気感だけはきちんと残る雰囲気になりました。
前回半年レビューでも書いたことですが、カラーモードは実はカメラ内で微調整が可能で自分だけの色を生み出すことが可能です。
私のカスタム「CALM」は適用量を2段落とし、フェードを1段階与えたものです。
季節や天気、被写体を選ばずどんな状況にも馴染む色で、今回のブログの大部分はこちらの撮って出しです。
コントラストを少し抑えてシネマチックな印象の中、暖色が一歩優勢になる感じ。
日本の流行色とは少し異なるアプローチですが、私の中でのイメージは洋画の景色を期待しての設定です。

その一方で、ほとんど使わなくなったカラーモードもありました。
最初は一通り試していたものの、使うものと使わないものは徐々に分かれてきます。
だからこそ今後もしアップデートがあるなら、順番変更や非表示設定のような整理機能に期待。
1年使ったからこそ、自分なりの使い方が完成してきた感覚があります。



ここに気分を変えたいとき、さらに情報を絞り込んで絵を整えたいときにシネマスコープ「21:9」の画角を用います。
たいていの被写体であればこの合わせ技で個人的に満足のいく仕上がりに。
RAWで撮影しておけばあとからカラーモードの変更、クロップの解除も気軽に行えることがまた強みにもなります。

そのほかのすべてのカメラとの決定的な違い。
結論から言うと「SIGMA BF」は必要最低限の機能が魅力のカメラです。つまりカメラ内でできることの「少なさ」が他との違い。
全ての条件に対応すべく両手いっぱいのスペックを抱えて撮影の手助けをしてくれる、そんなカメラが多い現代において、
これほどまでにそぎ落としたカメラは稀有であると同時に、それは撮影に没頭させてくれるとも言えるスペック。
システムメニューを開いてこんなに項目が少ないカメラはそうありません。
撮影者は、色、切り取り方、写真か動画か、ほぼそれだけを自由に選択。
あとは速く正確なAF、魅力的なレンズ、センサーが何も考えずとも写真を生み出してくれます。
カメラに気を取られることがまず無くなるのでその分目の前の景色と自分が対話できる余裕が生まれるのです。

さて、私のメインカメラは「SIGMA BF」だけではありません。
どちらがサブというわけではなく、用途や気分で「Leica M10‑P」との2トップ体勢です。
いずれも2400万画素フルサイズカメラというところは揃えたわけではないのですが、収斂進化のようなものかもしれません。
それぞれが、それぞれに足りないものを補い合う関係の2台。
M10‑Pは圧倒的なポテンシャルをベースに、必要以上に語らないカメラ。
対してBFはシンプルな選択肢のみを提示することで、撮影に手を貸してくれるカメラ。
前者は信頼関係から成る相棒のようで、後者は双方向の意見を出し合えるパートナーとでも言うべき存在。

気軽に撮りたい日はBF。
しっかり向き合いたい日はM10‑P。
違いが大きいからこそ視野を広く持てると言えます。
ズバリ、こんな人に向いてるカメラ。
このカメラは答えをくれるタイプではありません。
完璧に導いてくれるわけでもなく、便利な補助機能が積極的に介入してくれるわけでもない。
言うなれば撮る側に判断を委ねるカメラ。
だからこそ、カメラに頼りたい人にはあまり向いていないと言えます。
とはいえ、完全に突き放すわけでもなくあくまで提案ベースの選択肢を提供してくれるようなイメージ。
多機能さや万能性を求める人には物足りない可能性がある反面、自分の感覚を信じて撮りたい人には案外心地いい存在です。
決して格好だけ、コンセプトだけのカメラではなく100%あるべき姿を体現したカメラ。





水の質感、大変良く捉えてくれます。
海好き、川好き、水族館好きにはおすすめしたいカメラとも言えます。
まとめ
やはり、いいカメラです。
半年レビューでも似たようなことを書いた気がしますがその印象は1年経った今でも変わりません。
「いい」という一言に含蓄する意味合いは、感じ方、季節、撮り方、心境、それらを反映して常に流動的ではありますが
すべて内包したうえで「いい」カメラであり続けているのは言うまでもなく。

発表から購入までの期間はその痺れるコンセプトに心躍りました。
購入後すぐは多彩なカラーモードで日常が無限に変容する驚きに感動を覚えました。
そしてカラーモードをはじめとするそれらの補助機能は深堀すると自分のモノになると実感。
1年が経過する頃には右腕の一部となり、1年前と変わらず日常を作品に変え続けています。

「SIGMA BF」を使う時間は写真を撮る時間というより、私の生活と並行した別視点、その視点を借りている気分。
明日から始まる2年目にも期待を込めて、ぜひお持ちでない方もぜひお求めご検討ください。
▼私の妻は下のセットで購入しました。たまに35mmが羨ましくなります。よくボケるので。▼



