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【Leica】完璧な写りに飽きた人へ ⑤  6000万画素 SL3で味わう90年前の「光の戯れ」

【Leica】完璧な写りに飽きた人へ ⑤  6000万画素 SL3で味わう90年前の「光の戯れ」

『Leica Summar L50mm F2』
1933年に登場した、ライツ社初のF2という大口径を実現した標準レンズ。
それまで主流だった「Elmar L50mm F3.5」の明るさを大きく上回り、暗所での撮影の可能性を飛躍的に広げた歴史的1本です。
名称の「ズマール〈Summar〉」は、「ズマレックス〈Summarex〉」同様、ラテン語の「Summa(最高)」に由来します。

オールドライカレンズのファンの間でも特に名の知れたレンズですが、1933年から1940年にかけて製造される中で幾度もの改良やマイナーチェンジが行われ、多岐にわたるバリエーションが存在しています。

写真左 : 固定鏡胴(ヒョットコ)
1933年のごく初期におよそ2000本程度作られたと言われる固定鏡胴タイプのズマールです。
沈胴せずレンズ部分が突き出たままの形状をしており、正面から見た絞り環のフォルムからファンの間では「ひょっとこズマール」の愛称で親しまれています。
後半の沈胴式とは異なり、12枚ほどの絞り羽根を採用している個体が多く、円形に近い絞りを実現。 ボケ味の美しさからコレクターズアイテムとして非常に高い人気を誇ります。

写真中央左 : 先黒
固定鏡胴から沈胴式へ移行する過渡期にごく少量のみ生産されたモデル。
鏡胴先端のリム(枠)部分のみがブラックペイント仕上げで、ボディ側はクロームメッキまたはニッケルメッキになっています。

写真中央右 : 標準的な沈胴タイプ
1933年中頃から1940年の製造終了まで最も多く生産されました。
絞り羽根は6枚の六角形に変更され、生産性が高められました。

これら3タイプには、それぞれにクロームとニッケルの鏡胴が存在します。 ライツ社がメッキ技術をニッケルからクロームへと切り替える時期を跨いで制作されていました。

写真右 : トロッペン ズマール
熱帯地域や湿度の高い環境での使用を想定して設計された特殊モデルです。
鏡筒が通常のズマールよりも長く、4群6枚構成の通常モデルから、前玉にもう1枚レンズを追加した4群7枚構成となっており、通常モデルとは異なる性質を持っています。

と、様々なバリエーションの存在するズマール。 特にひょっとこズマールやトロッペン ズマールは希少性も高く、コレクションアイテムとして価格も高騰しています。
対して、標準的な沈胴タイプは生産数も非常に多く、ライカレンズの中でも比較的安価に手に入れられる標準レンズ。
「ライカ最初の1本」として、ここからスタートした方も多いはず。 かく言う私もその一人で、M3にズマール L50mmが私のファーストライカでした。

今回は、その思い出深い、オーソドックスな沈胴タイプを6000万画素機SL3に装着して、街へと繰り出しました。

 

  ……

 

・光を捉え、幻想を纏う、その繊細な描写

F4 1/1250秒 ISO100 BW+HC

ガラス越しに強烈な太陽光を受けると、現代レンズでは徹底的に排除される同心円状の巨大なフレアが出現しました。
光の回り込みと拡散。 最新のマルチコーティングでは絶対に味わえない、光そのものを捉えたような画になりました。


F2 1/80秒 ISO100 BRS

ピント合焦面は静かに立ち上がりつつも、光が輪郭を柔らかく包み込み、淡い膜を纏ったような描写に。
その場の空気まで閉じ込めるような繊細な写りが楽しめます。


F2.8 1/640秒 ISO1600 ETN

背景のイルミネーションを大きくぼかすと、画面周辺に向かって点光源がそろばん玉状に歪み、渦を巻くようなグルグルボケが現れます。
主役である花束の質感を浮き立たせつつ、背景は油絵のような絵画的な印象へ。

 

 

・解像と収差が同居する、二面性の質感描写

F2 1/200秒 ISO100 CNT

ピントが合っている中心部のエッジは驚くほど鋭く解像していますが、背景の人波は大きく崩れていきます。
中心部の緻密さと周辺の緩さのコントラストが際立つ結果になりました。


F4 1/200秒 ISO100 CLS

少し絞ったことで、合焦面の金属プレートから奥の道路や車へとなだらかにボケていきました。
SL3の高精細なファインダーのおかげで、被写界深度も意図通りにコントロール可能。
アンバー寄りのシックな発色が、Leica Looks設定通りのクラシック感を出してくれました。

  

・モノクロームで際立つ、SL3の階調とズマールの粘り

F4 1/4000秒 ISO100 BW+HC

ビルの谷間から覗く雲と空を「Leica Monochrom High Contrast」で捉えました。
戦前のモノクロ時代に設計されたズマールと、SL3の圧倒的なダイナミックレンジの相性の良さは抜群。
ハイライトの雲の立体感を残しつつ、ビルの漆黒まで階調を途切れさせることなく描き切ります。


F8 1/13秒 ISO1600 BW+HC

建設現場の複雑に入り組んだ鉄骨や重機を上から撮影。
およそ90年前のレンズでありながら、絞り込むことでSL3の6000万画素センサーに負けない緻密な線を描き出します。 濡れた路面の反射や光条まで鮮明に捉えています。


F2.8 1/1000秒 ISO100 BW+HC

高架下に差し込む強烈な斜光。
白飛びしやすいハイライトと暗く沈むシャドウ部ですが、SL3のセンサー性能が暗部のディテールを粘り強く残し、ズマールの持つトーンが画面全体の硬さを絶妙にほぐしてくれました。


F4 1/13秒 ISO1600 BW+HC

SL3の強力なボディ内手ブレ補正を活かすことで、暗い所でもオールドレンズを使った意図的なスローシャッター表現が可能になります。
機材の新旧が補い合い、街の一瞬をシネマティックに切り取れました。

  

・Leica Looksで味わうズマールの新たな魅力

このブログでオールドレンズにM型ライカでなく、SL3を組み合わせる理由の一つに、Leica Looksの存在があります。
日本メーカーのルックとは一味も二味も違うライカならではの色味が、オールドレンズ特有の柔らかな描写に新しい味付けを施してくれます。

F2.8 1/400秒 ISO100 BLE

銀残し(ブリーチバイパス)効果により、全体的に彩度が抑えられ、金属感や硬質感が強調されています。
フロントガラスへの反射や車体の質感がクールに引き立ち、都会的で少し静けさを感じさせる描写です。


F2.8 1/400秒 ISO100 BRS

全体に暖かみのあるアンバーのトーンが乗っており、ノスタルジックで温かみのあるレトロな雰囲気が演出されています。
ズマール特有のやわらかいボケ味と相まって、ヴィンテージ感が強調された写りです。


F2.8 1/400秒 ISO100 CLS

落ち着いたシックな発色と、やや深みのある落ち着いたコントラストが特徴です。
どこか往年のカラーフィルム(AgfaやKodakなど)を思わせる、クラシックで味わい深い上品なトーンを見せています。

 

 ……

 

現代のレンズはあまりにも優秀で、誰が撮っても破綻のない完璧な像を結んでくれます。 しかし、時にその完璧さに物足りなさを感じてしまうのも、写真を愛する人間の性かもしれません。

Leica SL3とSummar L50mm F2の組み合わせは、最新のファインダーとセンサー技術によって、オールドレンズの持つ「暴れ馬のような収差やフレア」を正確かつ意図的にコントロールできる贅沢な環境を提供してくれます。
単なるピントの甘い写真に終わらせず、表現としての「味」へと昇華させる。
完璧すぎる写りに少し飽きてしまった方にこそ、ぜひ体験していただきたい、極上のひと時がここにあります。

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【Leica】完璧な写りに飽きた人へ ④  6000万画素 SL3で味わう庶民派の名玉

[ Category:Leica | 掲載日時:26年09月27日 18時30分 ]

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