
【Leica】完璧な写りに飽きた人へ ① 6000万画素 SL3で味わう90年前の「収差」

『Leica SL3』
6000万画素裏面照射型CMOSイメージセンサー搭載のミラーレス機。
前モデルSL2で人気を確立したSLシリーズですが、SL3では位相差検出・物体認識AF・コントラストAFの3種の検出方式を組み合わせた革新的なAFシステムを搭載。さらにトリプルレゾリューション技術の採用や8K動画撮影が可能になるなど、着実に進化を遂げたモデルとなっています。
そんな最新技術を盛り込んだカメラに、レンズマウントアダプターを介してオールドレンズを装着することは、せっかくの機能の持ち腐れだと評する方もいます。
また、高精細すぎてレンズのアラばかりが目立ってしまうのではと懸念する方も。
はたしてSL3とオールドレンズの組み合わせは如何なものか、実際に試してみたいと思います。
今回SL3に装着したのは、ライカ(ライツ)がシュナイダー社から供給を受けていた『Xenon L50mm F1.5』。
ライカのオールドレンズの中でも特に人気の高い1本です。

『Leica Xenon L50mm F1.5』
1936年に登場したクセノン L50mm、そのバリエーションは少し複雑です。
元となったのは、イギリスの光学機メーカー テーラーホブソン社によるダブルガウスタイプのレンズ設計。
その設計を利用しシュナイダー社で製造されたクセノン L50mmですが、特許の関係でイギリス・アメリカへ輸出用のレンズには特許番号とテーラーホブソンの社名が刻印された個体が存在し、より希少性の高いモデルとなっています。
また、鏡胴のピントリングに施されたローレットの刻みが2段の前期型と3段の後期型があります。
1949年に新種ガラスが採用されズマリットと名前が変更されるまで、およそ6000本が製造されたと言われています。
今回の撮影で使用したのは、クセノン L50mm F1.5(後期)。
クセノンの中でも比較的目にしやすく、一番お手頃な価格帯のモデルになります。
クセノン L50mm F1.5とズマリット L50mm F1.5に関して、もっと詳しくお知りになりたい方は、こちらを↓。
【Premium Collection】Leica Xenon / Summarit L50mm F1.5 Taylor-Hobson
SL3にMマウントレンズを装着するには、レンズマウントアダプターが必要です。
ライカ純正のほか、いくつかのメーカーから販売されていますが、今回はSHOTENの近接撮影用ヘリコイドが付いたモデルを使用しました。
レンジファインダー用のオールドレンズには、最短撮影距離が1メートルというものも多くあります。かくいうクセノンL50mmもそう。
被写体に少しでも近づきたいならヘリコイド付きのアダプターがおすすめです。
また、今回のクセノンL50mm F1.5およびズマリットL50mm F1.5のフィルター径は41mm。
これはかなり特殊な径で、当時のライカ純正を探すか、フィルターメーカーから特注生産されているものを使うしかありません。
ところが、この41mm径用のライカ純正レンズキャップというものが薄型のタイプで、フィルターを装着するとキャップが緩くなってしまい外れやすくなってしまうということが。
フィルター無しでキャップを付けるか、キャップは諦めフィルターのみでいくか、この選択を余儀なくされていました。
そこでおすすめが、カメラアクセサリーメーカー U.Nから出ている「eins SUPER PROTECT FILTER」。
装着時の厚さ1.2mmと大変薄く、オリジナルのレンズキャップも問題なく装着できます。
(今回は、オリジナルのキャップが手に入らなかった方のために、同じくU.Nの41mm径キャップもご紹介しておきます。)

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F2.8 1/800秒 ISO100 BLE
陽光差し込む街路樹を撮影。画面全体にオールドレンズらしいフレアとゴーストが出ました。
Leica Looksの「Leica Bleach」を選択したことで彩度が抑えられ、より柔らかな印象に。
しかし、その中でピント合焦面のプレートは1930年代の設計とは思えないほど芯があり、硬質な金属の質感をしっかりと捉えています。
F1.5 1/200秒 ISO100 BLE
ショーウィンドウ越しの撮影。ガラス面の反射がソフト効果を演出し、被写体を優しく包み込みました。
クセノン・ズマリットというとすぐに渦を巻くようなぐるぐるボケを思い浮かべますが、常にそうなるわけではありません。
滲むような絵画的なボケになりました。
SL3が誇る圧倒的に高精細なファインダーのおかげで、絞り開放の極めて薄いピントの山も、拡大表示を使うことで完璧に捉えることが可能です。
特にオールドレンズでは、ピントが合っていてもそれと認識しにくいことも。 今回ファインダーの見やすさに何度も救われました。
F2.8 1/60秒 ISO100 ETN
「Leica Eternal」により色味とコントラストが強調され、バックの人物もほどよいボケ感になりました。
絞り開放に近いと合焦面に滲みが生じやすくなりますが、Leica Looksの選択によっても度合いを調整できます。
F1.4 1/2000秒 ISO100 CLS
街路樹のザワザワしたボケと光源のそろばん玉状のボケ、いかにもオールドレンズらしい描写になりました。
陽炎のような揺らめきが、ピント合焦面の僅かな滲みと相まって、真夏の空気感を感じさせます。 まだ5月末でしたが…
F4 1/10秒 ISO100 BW+NAT
ガード下の情景を「Leica Monochrom Natural」で撮影。
リベットが並ぶ硬質な鉄柱は、ガチガチにシャープでない分どこか滑らかさも感じられ、画面上で浮き上がって見えます。
SL3の高画素センサーが捉えるモノクロームの階調は非常に豊かで、鉄骨の質感や隙間から差し込む光の筋まで肉眼で認識できる以上の情報を画面に定着させています。
F2.8 1/1600秒 ISO100 STD
バックのボケの流れ方はクセノン・ズマリット特有のぐるぐるボケ。また木漏れ日がそろばん玉状になるなど収差が出まくった1枚。
現代のレンズでは徹底的に排除される収差。 フィルムカメラの解像力ではただただうるさいだけのボケとなったかと。
SL3の高精細でクリアな描写は、爽快な空気感を感じさせます。緑の階調の豊かさも瑞々しさを印象付けいています。
F2.8 1/2000秒 ISO100 BLE
ピント合焦面を含め全体が滲むような感じに。 彩度を抑えた「Leica Bleach」により全てがミニチュアのように描写され、非現実的な1コマになりました。
F4 1/200秒 ISO100 CHR
明暗差のある情景でしたが、SL3は暗部を潰すことなく描写してくれました。
またクセノンの柔らかな表現により床面に反射する強い光をマイルドにほぐし、コントラストが強くなりすぎない絶妙なトーンの室内に仕上がりました。
F1.5 1/1000秒 ISO100 CLS
露出をアンダー目にしてハイライトを強調しました。
前の写真と同じく明暗差の激しいシーンですが、車の白いルーフが白飛びすることなく質感やエッジを滑らかに残しています。
また暗部も、よく見るとビルの窓のラインや木々の重なりがわずかに視認できる絶妙なローキーでコントロールされています。
SL3の圧倒的なダイナミックレンジと、クセノンの持つウェットな空気感がうまく噛み合いました。
F4.8 1/320秒 ISO100 CNT
マネキンの足元とガラスに反射した通行人の足元。2つの場面がクセノンの柔らかなボケによって融けあい、1つのフレームの中で不思議に調和しました。
ここではマネキンの足先にピントを合わせたのですが、M型カメラのファインダーでは中央部の二重像でピントを合わせてから構図を取らないといけなくなります。 このようにタイミングをはかってレリーズするようなシーンには不向き。
その点、SL3のファインダーなら構図を決定してからピント合わせが可能。 いい位置に通行人が来るまで待ちの姿勢でカメラを構えていました。
F1.5 1/160秒 ISO100 CLS
クセノンの織りなす黒のトーンの美しさととろけるようなボケ味がアンティーク感を引き立ててくれました。
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クセノンが見せるぐるぐるボケ、光の滲みといった「オールドレンズの癖」は、低画素のセンサーや不安定なファインダーでは、単なるピントの甘い写真になってしまいがちです。
しかし、SL3の6000万画素というレンズの性能を余すことなく受け止めるセンサーと、簡潔にそして正確にピント合わせができるファインダーを介すことで、その癖は「意図的な表現」へと昇華されます。
SL3は、オールドレンズの個性を最も贅沢に味わえるカメラと言えます。
最新のテクノロジーを使って、あえて90年も昔のレンズが紡ぎ出す光の美しさに浸る。 完璧すぎる写りに少し飽きてしまった方にこそ、ぜひ試していただきたい、これ以上ない極上のひと時がここにあります。



