
2026年2月20日にLeica Boutique MapCamera Shinjukuは13周年を迎えます。
1925年、記念すべき「ライカI」の誕生によって写真の世界に革命が起きてから、「101年目」となる今年のテーマは『継承』。
新たな一世紀へと歩み出した今、私たちが改めて見つめ直したいのは、その長い歴史の中で脈々と継承されてきた精神です。
時代が変わり技術が進化しても決して揺らぐことのない『ライカが受け継いだ哲学』とは何か。
本連載では現行モデルそれぞれに宿るその本質を、独自のキーワードとともに紐解いていきます。

撮影に使用した機材は「Leica SL3」と「スーパー・アポ・ズミクロン SL21mm F2 ASPH.」「アポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.」の2本。
Leicaの最新の映像エンジンMaestro IVプロセッサーとアポズミクロンの名を冠する広角と標準の2本であれば間違いなく高精細に写せる。
すりガラスはサンドブラスト加工により表面に微細な凹凸を付けて不透明にしているが、そのディティールを余すところなく記録している。
どちらのレンズもアポクロマート仕様となっておりハイライトに目立ちがちな色収差を良好に補正しているが、こういったモノトーンの写真においても線が太ってしまう事を防いでくれる。
ガラス越しに見える光は何を照らしているのか、ローキーに纏めた露出もあってか向こう側へ誘われてしまいそうな雰囲気に仕上がった。

遮光と斜光、ハイライトとシャドウ。レースのカーテン越しの光がカラフルな絨毯に影という模様を付けている。
窓の向こうの世界には何があるのか、影の奥には何が潜むのか。カーテンの下に集中した光。精細さに富むSL3はそんな想像の世界にすら連れていってくれる。白のレースのカーテンを上から下までじっと眺めていると今にも風に揺られて動き出しそうな錯覚に陥りそうだ。

「スーパー・アポ・ズミクロン SL21mm F2 ASPH.」はレンズの長さが10.2cm、最短撮影距離が21cmでレンズ先端からおおよそ11cm被写体に近づける。限りなく被写体に近付いても歪みが少なく、ピントを合わせた前後のアウトフォーカスになった部分が滑らかに溶けていく。
光を浴びた銀のナイフやスプーン達と反射した天井の照明。流石のアポクロマート補正により画の雰囲気の邪魔をする色収差は皆無だ。
煌びやかな食器を置く使い込まれた台。ところどころ色が褪せたり、スポンジが剥がれているのは長い年月の間、食器を出し入れしてきた中で生まれたストーリーすらも記憶しているようだ。

Leica SL3には魔法のように写真の画作りを様々に演出できるLeica LOOOKSという機能を備えている。写真はEssential Looksの中のLeica Silverを使って撮影した。穏やかなコントラストにより写真にクールな美を宿し、明瞭なハイライトとわずかに持ち上げたシャドウはモダンで控えめな雰囲気を生み出し、被写体に纏う繊細な優雅さを際立たせる。
このLOOKSはシルバーの被写体に当たる光の反射が美しく、今にもランプの先から何か出てきそうなオーラを放っているのが面白く見えた。

ここからは「アポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.」を使って撮影している。
開放から二絞り分絞ったF4で撮っているが、まるで中判センサーで撮ったかのように魅せる描写はカーテンの刺繍やほつれた糸を精細に描ききっていて見事である。触れそうな布の質感描写が素晴らしく、窓ガラスから入る柔らかな光はアポクロマート補正のおかげで色収差が邪魔をすることなく雰囲気が良くカーテンに差し込んでくれた。ライカレンズは描写面において絞り開放でも十分実用的に使用できるという特質を備えており絞りはあくまでも被写界深度等、表現を変えるために調整するだけでよい。

階下へと延びる木の階段。青銅の手すりから冷たさと硬さが感じられ奥へと続く空間の先の温度を想像して思わず身構える。
数多の人の歩みを運んだであろう木の階段は、キズと汚れをありのままに記憶として重ね深みを増していく。
ライカのカメラも数多の職人の手により作られ、多くの人々が日々使う中でキズや汚れを刻みながら思い出という歴史を紡いでゆくだろう。

SL3のダイナミックレンジは15ストップと広く、あらゆる光の状況下においてディテールに至るまで高精細かつ高画質な描写性能を発揮してくれる。
色深度も14bitあり写真のような赤の絨毯のグラデーションも滑らかに描いてくれる。ピントの合焦部を境目に奥へと続く空間が穏やかにアウトフォーカスへ移ろいでゆく。
写真とは二次元の産物ではあるが「アポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.」のように被写体をありままに精緻に描いてくれるレンズを用いると
色や明るさ、ディティールが高次元に記録され、壁面が浮き上がって見えまるで三次元の世界へと連れていってくれそうである。

SL3の持つ6000万画素センサーとMaestro IVプロセッサーは、単に「大きく引き伸ばせる」ためだけにあるのではない。
「空気感」という曖昧なものを、圧倒的な「情報量」で物理的に定着させる。それがSL3における描写の哲学である。
アポズミクロンの名を冠したSLレンズ達は光をありのまま取りこみ、抽象的な記憶を具体的な記録である写真へと変えてくれる頼もしい相棒だ。
それはあまりに精緻がゆえ人の肉眼すら超えることもあるが、それもまた写真の世界ゆえの面白さなのかもしれない。
その手に、「継承」された確かな眼差しを。
ライカを選ぶということ。それは、長きにわたり磨き上げられてきた哲学を、あなた自身の表現の一部として迎え入れることに他なりません。
Leica Boutique Mapcamera Shinjukuは100年の歴史が凝縮された運命の一台との出会いを、お手伝いさせていただきます。



