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【SONYインタビュー】「Eマウントレンズ」は何故、映像クリエイターからも支持されるのか?今後の展開についても直撃。

【SONYインタビュー】「Eマウントレンズ」は何故、映像クリエイターからも支持されるのか?今後の展開についても直撃。

国内外で多くのクリエイターから支持されているSONYの「Eマウントシステム」。近年では写真だけでなく映像制作に対するニーズの高まりを受け、新たに映像制作向けの商品群「Cinema Line」(シネマライン)を発表したことも記憶に新しい。今回のインタビューでは、シネマカメラからスチルカメラまで幅広いボディを支える「Eマウントレンズ」について、「何故、写真だけでなく映像クリエイターからも支持されるのか」「Eマウントレンズの今後の展望」など、SONYの担当者に詳しくお話をうかがった。

▲今回インタビューに協力していただいた 新本 健太 氏
(ソニーマーケティング株式会社 ソニーマーケティングジャパン プロダクトビジネス本部 デジタルイメージングビジネス部 デジタルイメージングMK2課)

 

動画撮影も想定した設計

――まず、ソニーが動画撮影に配慮したレンズを作るようになったきっかけや転機となったボディなどについてお話ください

新本 氏:
Eマウントが誕生した初期の段階から、静止画だけでなく動画撮影も想定しており、静音設計や動画に対応した製品設計をおこなっています。このことは、最初のEマウント機であるNEX-5/3はαとサイバーショットの間に位置する製品でありながらハンディカムの要素も入っていることや、NEX-VG10がレンズ交換式のハンディカムで あったことからもお分かりいただけるかと思います。

 

▲NEX-VG10は「NEX-5/3」と同じAPS-Cサイズの「“Exmor”APS HD CMOSセンサー」を搭載していた。

 

――動画撮影に配慮した設計にするにあたり、どのような苦労がありましたか。

新本 氏:
静止画と動画では異なる性能が求められますので、そのバランスを取り、双方で高いパフォーマンスを得るため多くの努力が費やされております。例えば、静止画の撮影ではどれだけ速く被写体にフォーカシングできるかが問われますが、動画の撮影では、フォーカス中、狙う被写体に対し細かい往復運動で滑らかにピントを合わせ続けるウォブリングという動きが求められ、それにプラスして自然で違和感のないフォーカシングが求められます。そのため、静止画モードと動画モードではフォーカス駆動は全く別々の制御パラメーターを用意してそれぞれに最適な駆動を行っています。

動画における自然なフォーカシングの実現は非常に難しいフォーカス制御を求められますが、ソニーには長年プロ向けの動画機材開発で培ってきた多くのノウハウがあります。これらのノウハウも生かしつつ、さらに多くのユーザーからのさまざまなご意見をもとに徹底的なチューニングを施しています。

 

――動画撮影時のAF性能を担保するためにメカニカルの部分で工夫した点はありますか。

新本 氏:
未来のカメラボディのAF性能の進化を見据えながら、メカと光学と制御が連携してレンズの内部構造設計を徹底して行う事で、ボディのAF性能を最大限に引き出せるように尽力しています。具体的な例を上げますと、動画撮影に求められる静粛でスムーズなAF駆動を実現するために、多くのレンズに直進型のアクチュエーターを採用しています。また、静止画と動画撮影には異なるフォーカシングが求められるので、静止画モードと動画モードではフォーカス駆動は全く別々の制御パラメーターを用意してそれぞれに最適な駆動を行っています。長年プロ向けの動画機材開発でソニーが培ってきた多くのノウハウを生かすことで、動画における自然なフォーカシングの実現は非常に難しいフォーカス制御を実現しつつ、高速性と静音・低振動の相反する要素をどちらも満たせるような工夫もしています。

 

▲直進型アクチュエーターの解説映像

 

――スチル用レンズはフォーカスブリージングが気になると指摘される方がいらっしゃいます。FEレンズはフォーカスブリージングの抑制などはいかがでしょうか

新本 氏:
αでの動画撮影も考慮して、ソニーのEマウントレンズはフォーカスブリージングを抑制した設計となっています。ソニー純正のEマウントレンズはすべてミラーレス専用設計となっておりますので、αでの動画撮影時におけるフォーカスブリージングの抑制に考慮した設計になっています。フォーカスブリージングだけでなく、軸ズレやフォーカスシフトも抑制するような工夫がされており、長年プロ向けの動画機材の開発を行ってきたソニーならではのこだわりが凝縮されています。その中でも『FE PZ 28-135mm F4 G OSS』(SELP28135G)などの動画撮影に特化して設計されたレンズはプロや中上級の動画ユーザーをターゲットに置いているため、ソニー独自のSMO:Smooth Motion Optics機構を採用し、より高い動画性能を誇っています。

 

▲FE PZ 28-135mm F4 G OSSフォーカスブリージングテスト映像

 

――外観のデザインや操作性の面でこだわったところがあれば聞かせてください。

新本 氏:
一部のレンズについてはリニア・レスポンスMFやクリック切り換えが可能な絞りリングを搭載するなどして、動画撮影時もスムーズな操作ができるようにこだわった設計がなされております。ソニーのEマウントレンズのラインアップの中でも、『FE PZ 28-135mm F4 G OSS』に関しては、動画設計であることを代表するズーム・フォーカス・絞りの3つの操作リングの搭載により、大判映像制作で求められるスムーズなマニュアル操作を実現しています。加えてズームリングでは、低速から高速まで幅広いズーム速度を制御でき、ズーム方向の反転もカメラ側の設定で可能で、プロの要望に応える操作性を誇っています。また、インナーズームの採用により全長変化がないため、マットボックスの使用が可能で、動画撮影ならではワークフローを徹底的に考慮したデザインとなっています。

 

▲FE PZ 28-135mm F4 G OSSの各部名称

 

――新たに『FE C 16-35mm T3.1 G』が登場しました。従来のサーボズームレンズとは違い “Professional Cinema Lens Series”として発売されますが、どのような違いがありますか?

新本 氏:
Cinema Lens Seriesとして、発売の『SELC1635G』はフォーカス、ズーム、アイリスの3連リングとなっており、フォローフォーカスを始めとする業界の標準的なシネマレンズアクセサリーにも対応するところ、フォーカスリングは終端当たりがあり、フォーカス位置再現性のあるリニア・レスポンスMF機構を搭載するなどシビアな制作現場の要求にも応えうる正確確実なリング操作を可能にしている点、開放F値についても『FE C 16-35mm T3.1 G』と、シネマレンズで多く見られるT値表記を採用している点などに違いがあります。

 

▲FE C 16-35mm T3.1 G

 

――他メーカー製には、電動ズームを搭載しているレンズは多くありませんので、SONY純正ならではの強みだと思います。今後電動ズームを搭載した動画向け重視のフルサイズレンズ・低価格向けのレンズを発売する予定はありますでしょうか。

新本 氏:
ソニーではマニュアルズームでは難しい、滑らかなズーム表現が可能なサーボズームレンズのラインアップを豊富にご用意しております。『FE C 16-35mm T3.1 G』のようなシネマレンズから『FE PZ 28-135mm F4 G OSS』や『E PZ 18-110mm F4 G OSS』 などハイレベルな動画ユーザーの要望に応えられるレンズがございますので、お客様のニーズに合わせて選んでいただけますと幸いです。今後の製品に関しましては申し上げられないのですが、お客様のご要望をうかがいながら検討して参りたいと思います。

 

――サードパーティー製のEマウントレンズも充実する中、純正レンズのアピールポイントをどのようにお考えですか?

新本 氏:
ソニー純正レンズの強みは、大きく言えばAF性能、解像性能、動画性能の3つです。特にソニー純正レンズは、オートフォーカス駆動に徹底的にこだわって設計されていて、高い応答性はもちろん、静粛性や低振動性など、動画撮影時での心地よいフォーカシングも突き詰めています。ここまでオートフォーカスの駆動にこだわる理由は、純正レンズにはボディのAF性能や連写性能を最大限に引き出す能力が求められると同時に、将来のボディの進化も見据えたレンズを開発する責務があると考えているからです。直進駆動のアクチュエーターの開発や、必要に応じて制御アルゴリズムをチューニングするなど、あらゆる角度からボディの性能を最大限に引き出すための取り組みがされています。

 

――御社のレンズラインナップの中で、特に動画撮影におすすめのレンズがあれば教えていただけますか?

新本 氏:
一般の方向けの標準ズームレンズであれば、『FE 24-70mm F2.8 GM』と『FE 24-105mm F4 G OSS』は欠かせません。『FE 24-70mm F2.8 GM』はズーム全域で開放F値2.8を実現しており、高い解像性能と大口径を生かしたG Masterならではの美しいぼけ味を楽しんでいただけます。『FE 24-105mm F4 G OSS』は1本で広角24㎜から中望遠105㎜をカバーし、ヨリからヒキまでのメリハリを出すことができる“優等生”的なレンズですので、こちらもおすすめです。双方ともにもちろん動画撮影に必要な高速・高精度・高追随かつ静粛なAF駆動も実現しています。

 

▲FE 24-70mm F2.8 GM(左) | FE 24-105mm F4 G OSS(右)

 

より高い操作性を求められるお客様には、3連リングやパワーズームを搭載している『FE PZ 28-135mm F4 G OSS』や『E PZ 18-110mm F4 G OSS』も是非お勧めしたいです。

 

▲FE PZ 28-135mm F4 G OSS(左) | E PZ 18-110mm F4 G OSS(右)

 

自撮りVlogのような撮影をしたい方には『FE 20mm F1.8 G』がオススメです。大口径の超広角単焦点レンズながらも小型・軽量なので、ジンバルやグリップを用いた動画撮影にオススメです。他にも『FE 12-24mm F2.8 GM』や『FE 135mm F1.8 GM』など、挙げたらきりがないのですが、個性的なレンズを幅広く揃えておりますので、撮りたい表現を考えながらご検討いただけますと幸いです。

 

▲FE 20mm F1.8 G(約373g)

 

最新レンズと今後について

――4月23日に『FE 24mm F2.8G』『FE 40mm F2.5 G』『FE 50mm F2.5G』が発売されました。従来のレンズと比べて小型・軽量なのが特徴ですが、こうしたレンズが登場した背景として、レンズの小型化を望む声が多かったのでしょうか。

新本 氏:
ボディだけでなくレンズにも小型・軽量設計を求めるお客様はやはり多いです。また、その一方で、静止画だけでなく動画も撮影したいお客様も着実に増えてきています。コンパクトさと、解像やぼけ味などの描写力やボディの性能を引き出すAF性能を両立するのは簡単なことではございません。しかし、ソニーのレンズはカメラの進化を見据え、妥協なく設計されております。

先日発表された『FE 24mm F2.8G』『FE 40mm F2.5 G』『FE 50mm F2.5G』は非常に小型・軽量設計ながらも、Gレンズならではの高い解像性能を有しています。加えて、直進式のリニアモーターを2基搭載することで、高速・高精度・高追随かつ静粛なAFを実現しており、静止画・動画を問わず、最新のEマウントボディのAF性能を生かした撮影が可能です。さらに、クリック切り換えも可能な絞りリングや精緻なマニュアルフォーカスがリニア・レスポンスMFも採用しており、直感的な操作性も兼ね備えています。また、3本のGレンズの外形寸法も統一されているため、ボディをジンバルに装着した状態でもレンズの交換が容易というのも動画撮影に配慮されているポイントです。

 

▲「SEL50F25G」「SEL40F25G」「SEL24F28G」のサンプル動画

 

――同じく発売された「FE 50mm F1.2 GM」も他社の同スペックレンズと比較して小型・軽量ですね。

『FE 50mm F1.2 GM』も、開放F値1.2という大口径ながら、約778gという非常に小型・軽量設計となっています。この小型・軽量化の背景には、ミラーレスのショートフランジバックを生かす最新の光学設計などがございます。小型・軽量設計でありながら、G Masterならではの優れた解像力や美しいぼけ味はもちろんのこと、『FE 50mm F1.2 GM』では開放F値1.2の浅い被写界深度の中でも、ボディのスピード性能を引き出した撮影が可能です。『FE 50mm F1.2 GM』は静止画・動画のどちらにおいてもお客様の撮影体験を一変する、ソニーの技術力の高さを象徴するレンズだと考えております。

 

▲FE 50mm F1.2 GMのサンプル動画

 

――最後に今後の展望などを聞かせてください。

新本 氏:
近年、デジタル一眼カメラでの動画撮影の需要が急速に広がってきており、私達もお客様のニーズの変化を肌に感じとっています。ソニーのレンズは、映像制作や動画機材の開発で培われたノウハウが凝縮されており、高まるデジタル一眼カメラでの動画撮影のニーズにも応えられると考えております。“シネマレンズシリーズ”の皮切りとして発表された『FE C 16-35mm T3.1 G』を筆頭に、プロフェッショナルや中上級者の動画ユーザーの高い要望に応えられるラインアップも揃ってきております。

今後も、α7シリーズなどのミラーレス一眼カメラからVENICEやFX6などの動画専用機、イメージセンサー、そしてレンズなど、カメラのキーデバイスを全て内製しているメーカーとして、静止画・動画を問わず、お客様のご期待に応えられるようなレンズを世に出し続けていきたいと考えております。

 

この度は貴重なお話をお聞かせいただき誠にありがとうございました。
今後もマップカメラでは各メーカーやクリエイターの方に独自の取材を続けていきます。マップカメラ・StockShotをよろしくお願いいたします。

 


[ Category:SONY | 掲載日時:21年05月03日 12時10分 ]

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