
【FUJIFILM】「これからカメラを始める方」にずっと大人気のカメラ、X-T30 III。
子供の頃、伯父は少し怖い存在でした。
記憶に残っている事と言えば、ふざけて怒られたこと、そして痛いげんこつ。
無口で、どこか近寄りがたい。
親戚の集まりで目が合うと、自然と背筋が伸びてしまうような独特の緊張感があったのを覚えています。
そんな伯父と、男二人で伊豆大島へ旅をすることになりました。
きっかけは何だったでしょうか。たまたま顔を出した家での軽い約束だった気もしますし、お互いに「今なら話せる」と直感したのかもしれない……そんな不思議な巡り合わせです。
伯父にとって伊豆大島は、40年前に会社の旅行で行って以来とのこと。
これは大島好きでしょっちゅう行っている身として、旅行プランの立てがいがありそうです。
今回旅の相棒に選んだのは、FUJIFILM X-T30 III XC13-33mmレンズキット。
仰々しい機材は、かえって二人の間に壁を作ってしまうような気がして、手のひらに収まるこの小さな一台を鞄に忍ばせました。
でも、もしこれが撮影旅行だったとしてもこのカメラを選んだでしょう。
おしゃれな外観としっかりした基本性能を併せ持ち、初心者やこれからカメラを始める方に選ばれ続ける名機を使ってみたかったのです。

そうして迎えた旅行当日。
往復の乗船券、温かいもてなしの民宿、旅の日程をすべてカバーするレンタカーと、準備は万端です。
しかし現実は非情!
遅延を繰り返して大幅に乱れたダイヤは、私の足を急がせるのに十分でした。
そんな状況下のスナップショットにもかかわらず、なかなかの仕上がりを見せてくれたX-T30 IIIへの好感度は早速上がり始めます。
あれこれ設定を煮詰めたい気もしましたが、船に乗り過ごしては事だと気づいて早歩きで竹芝桟橋を目指しました。
そのかいあって集合時間よりも早く到着でき、少しばかり余裕をもってジェット船に乗り込むことが出来ました。

久しぶりに会った叔父は、子供のころの記憶と比べ、ずいぶんと髪が白くなったように思います。
「今日は楽しみだったんだよ」と笑う姿に、前のように怖いと思うこともなく、一家の大黒柱として大家族を支えてきた力強さや安心感を感じました。
そうして少しばかりの会話の後、ジェット船はテイクオフ。水中翼を展開し、東京湾を疾走し始めます。
きらめく海を眺めていると、あっという間に伊豆大島へ到着しました。
久々の島に大喜びで写真を撮る私の姿を見て、「なるほどなぁ。そうやって撮んのか」と目を丸くする様子が新鮮で、なんだか笑ってしまいます。
歪みの少ないファインダーのおかげで、しっかりと水平を出す事が出来ました。

今回の旅程は午後からスタートなので、翌日の導線を考えて最初に三原山へと向かうことにしました。
三原山は島内屈指の観光スポットであると同時に、1986年に大噴火した活火山でもあります。
その時は全島民が避難を強いられ、1か月近くも帰島できない状況になってしまいました。
自然の力に畏怖を覚えながらシャッターを切っていると、なんと叔父もカメラを構えていました!
「驚いたろ?実は持ってきたんだ」と笑いながら夢中で三原山を撮る姿に嬉しくなり、しばし二人で撮影会。
「こっちの方が良い写真を撮るぞ」と少しばかり眉間に力が入っていたのは内緒です。


下山途中に夕日を見ながら公園で一休み。
心地よい潮風に当てられながら写真を撮っていると、日々の疲れが取れていくのを感じます。
この癒しには機材の軽さも効いている事でしょう。
X-T30 IIIは、キットレンズのフジノン XC13-33mm F3.5-6.3 OISと合わせても503gしか無いのです。
普段はフルサイズミラーレスにバッテリーグリップを付け、24-105㎜ F2.8の超ド級レンズにGPSユニットに・・・とフル装備のカメラを使っている身としては羽のように軽く感じます。
しかもただ軽いだけではなく、カスタマイズ可能なボタンの多さや握りやすいグリップが相まって、撮影は快適そのものでした。
この日の観光はここで切り上げ、夜ご飯にラーメンをすすって民宿へと向かいました。
途中のスーパーでお酒とおつまみを買って伯父はご機嫌、「テレビを見ながらお酒を飲んでのんびりするんだ」と楽しそうです。
いつもお疲れ様です。

翌日。
「伊豆大島に来たらここは外せない」というスポットをくまなく回るため、早起きして車へ乗り込みました。
過走行のふるぼけたレンタカーはギシギシときしみながら苦しそうに坂を上り、その様子に二人で大笑い。
地層切断面まであっという間に到着した気がします。
ここは島の移動に欠かせない「大島一周道路」沿いにある観光名所で、度重なる火山活動によって堆積した様々な時代の地層が楽しめる圧巻の場所です。
良くバームクーヘンと言われることがありますが、残念ながらこの近くにバームクーヘンが売っているお土産屋さんはありません。
伊豆大島に移住したら、私が一番先に店を出すことに決めています。

そこから海側へと振り返れば、これまた壮観な島々の姿。
手前のすり鉢状の島は利島、その奥には新島が並んでいます。
正面にある枯草は、島内のいたる所で見られるススキです。
溶岩で洗われた地表で2番目に根付くススキは、火山活動の絶えない島にたくましく適応しているようです。

そのまま大島一周道路をひた走り、島の南側にある波浮港へ。
映画「伊豆の踊子」の舞台としても名高いこの場所は、その舞台となる旧港屋旅館をはじめ、おいしい揚げ物屋さんにカフェ・展望台と見どころが尽きません。
名物のコロッケを食べながら、「小さいころ食べたコロッケの味がする」と嬉しそうな伯父の姿に、私もなんだか幸せな気持ちになってハムカツをほおばりました。
いたる所に歴史を感じる素敵な港ですが、最近は古民家をリノベーションしたお店もちらほらと増えており、少しずつ姿を変えていっている様です。
数年後に訪れた時には、きっとまた違う魅力に出会えることでしょう。

波浮港を満喫した後は、坂道で車をこすらないよう注意しながら発進し、北にある筆島へ。
ここは今回の旅行の中で、伯父が最も楽しみにしていた場所でした。
数時間前に火山のことを勉強していた私たちにとっては、ちょっとした復習の場でもあります。
その姿や生い立ちに思いをはせ、思い思いにシャッターを切りました。
願わくば天気がもう少し良ければ、美しい海とのコントラストが楽しめたのですが・・・。

当初の予定よりも、時間が押してきています。
時計とにらめっこをしながらも、筆島が見える展望台から少しばかり下り、ひときわ目を引く十字架の近くにやってきました。
キリシタン禁教令に抗い、この地に流された「ジュリアおたあ」を偲んで建てられた真っ白な十字架は、長年の潮風に錆を付けながらも力強くそびえたっています。
この深い青はFUJIFILM以外には出せないのではないでしょうか。

さて、楽しかった旅行もいよいよ大詰め。
最後の目的地、泉津の切通しへと徒歩で向かいます。
普通のカメラでは画にならない事が多いロケーションですが、フィルムシミュレーションのクラシックネガを使えばこの通り。
古くて新しい、独特な魅力を感じさせてくれる大好きな1枚です。

筆者は10年以上伊豆大島へ通っていますが、泉津の切通しを見たのは初めてです。
真っ二つにされながらも根を張る大木にただただ圧倒されてしまいました。
・・・圧倒と言えば。
この旅を通じて、X-T30 III XC13-33mmレンズキットの使いやすさにも同じ印象を抱きました。
以前のFUJIFILM機よりもAFの精度・速度が高くなっていたからです。
もともとXシリーズの使い勝手や色の良さには定評がありましたが、例えばコントラストが少ない空や植物が込み入った背景などへのAFは苦手な印象がありました。
しかし今回の旅行でその弱点を感じることは無く、ススキや海・空といった難しい被写体へのピント合わせがバシバシと決まっていたのです。
そこに加えてクラシックデザインの可愛らしさと、握りやすいグリップ、フィルムシミュレーションを瞬時に変更できるダイヤルなど、「欲しい」と思うものはおよそ全て付いています。
2日間の試用でも、大人気の理由をバッチリと体験できました。
この後は大島名物の明日葉ざるそばを食べて、お土産を購入しに行きました。
大島の道は走りやすく、帰りの船が出る出帆港まではあっという間。
もっと時間がかかればいいのに、と普段は憎らしい渋滞が少し恋しくなります。
レンタカーを返却して、お土産を選んで・・・。
名残惜しさに振り向いても、残念ながらもう出帆の時間が迫っています。
港には既に帰りの船が入港し、逆光できらめく海に揺られて私たちを待っていました。
伯父とは不器用なままに長い間すれ違ってしまいましたが、今ならわかります。
父親がいなかった私が、一人でしっかり生きていけるように厳しくしてくれていたんだと。
「次はどこへ行く?」との問いにうれしくなるのは、成長の証と言っても許されるでしょうか。
本土へ戻れば、またそれぞれの日常に帰ります。
げんこつの代わりの、楽しかった思い出と一緒に。
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