Tour delle Dolomiti -2-
Dolomiti(ドロミテ)での目的は、Tre Cime di Lavaredo(ラヴァレードの三つの頂)の岩峰を満喫すること。
Cima Piccola(2,857m)、Cima Grande(2,999m)、Cima Ovest(2,973m)の三姉妹峰の内、Cima Grandeは登り終えた。
⇒ 「Tour delle Dolomiti -1-」
続いてCima Ovestを目指す。
明るくなった。ルート図を再確認したらスタート。
はじめは傾斜も緩く、多少脆いが簡単。
「Via Cassin 5.12a 24Pitch 630m」
リカルド・カシンとヴィットリオ・ラッティが1935年に引いたラインで、
Cima Ovest北壁の初登ルートである。
リカルド・カシン(1909-2009)といえば、山を齧ったものであれば知らぬ者はいないであろう人物で、欧州アルプス・グランドジョラス北壁ウォーカー稜、アラスカ・デナリのカシンリッジなど世界中の数あまたのルートを拓いている。
何より、短命が当たり前の先鋭的なクライマーでありながら、百という齢まで生涯を謳歌したことが、その偉大さを絶対的に裏付けているだろう。
高度を稼ぐと次は長いトラバース(横移動)が始まる。
下部に圧倒的なハング帯を擁するCima Ovest北壁。
そのハング帯の上を横切る岩の摂理をたどり、歩みを進める。
トラバースを始めると眼下にはただ空間が広がるのみで、下降はできず、退路は絶たれる。
嵐が来ようが、疲れ果てようが、あとは登り切るのみである。
寒さと、ハンギングの体勢で足先の感覚がなくなる。
快適ではないが、高度感を思う存分味わえる、素晴らしいロケーションだ。
残り半分は難易度も下がり、ペースを上げて高度を稼ぐ。日没までにピークに立ちたい。
最初に登ったCima Grande北壁。威厳に満ちている。
頂上の十字架もよく見える。
複雑な下山路をヘッドランプの明かりを頼りに進み、日付が変わる前に停めた車までたどり着く。
順調に行った安堵と、疲労感が心地よい。
残るは一峰のみ。
Cima Piccolaは南西壁。
「Spigolo Giallo(Yellow Edge) 5.10b 13Pitch 380m」
適度な難易度と長さで、ここTre Cimeで一番の人気を博するルートであるとのこと。
最初に登ったCima Grandeのルートと同じで、初登はエミリオ・コミチの手によるものだ。
名前の通り黄色い岩肌。朝日で登るラインが照らされている。
正面やや右に先行パーティーがすでに取付いているのが見える。
中間の緩傾斜帯。
いままで登った北壁と違い、日当たり良好。肩ひじ張らずに行ける。
視界がふさがれる。ガスが出てきた。それでも太陽の温かみがほのかに感じられる。
スムーズにピークへと這い上がる。
か弱い人間の我々は下降。
はるか上空で虚空に投げ出されるのは、それなりに怖いものだ。
本能は失っていないらしい。
Grazie!
⇒「Tour delle Dolomiti -1-」はこちら
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◎使用した機材
「RICOH(リコー) GR II」
「GR」を携行機材に選んだの正解であった。
GRシリーズの内、本格的に使用したのはこのGR IIが初めてであったが、その実力を思い知らされた。
直観的、かつ瞬間的に撮影しなければならない環境でここまで頼れる写真機は稀有であろう。
“自分仕様”にできる細やかなカスタマイズ機能や、
素晴らしいレスポンスは撮影スタイルを問わず満足のいくものだと思う。
↓名機揃いのGR歴代モデル↓