WITHIN120K -ライカ旅行記 M-A(Typ127)編-
2025年2月20日にLeica Boutique MapCamera Shinjukuは12周年を迎えます。
今年の連載はテーマ『Journey』と『“12”周年』にちなみ、マップカメラのある新宿から半径120キロ圏内での撮影旅行をスタッフが計画。旅の供にカメラが選ばれるようになってから100年となる今年、「旅」を通してカメラの楽しさ、ライカの面白さをお伝えするべく、マップカメラスタッフ12名が旅に出ました。その名も「WITHIN 120K」
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第一回である今回の旅先は富士河口湖。120Kmギリギリまで攻めた目的地ではありませんが、マップカメラのある新宿からは遠く離れて87キロほど。快晴の天気予報、期待が高まります。
悩んだ末に決定した旅のお供は「Leica M-A(Typ127)」というフィルムカメラ。2025年現在でもなおフィルムカメラがラインナップするライカ製品のなかでも、唯一露出計を搭載していない完全機械式モデルです。レンズは「ズミクロン M50mm F2 1st」と「ズミクロン M35mm F2 2nd(通称6枚玉)」の2本。今回は2本のフィルムをちょうど撮りきることができました。約70と数枚分、Kodak Ektar 100でお送りします。
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外国人観光客にも大人気の富士山エリアですが私はまだ訪れたことがありません。つまり探り探りの小旅行になるということ。私は初めての旅行先はあえてあまり調べず、かつ荷物は最小限にして「自分が見る初めての世界」をただカメラとともに歩くことを心がけています。ラーメンの味変は替え玉から理論、とでも言うべきでしょうか、まずはその土地をまっさらな気持ちで楽しむ。そして2回目3回目以降への期待と「遊び足りなさ」を胸に秘めてようやく本旅行を行うのです。とはいえただの下見ではありません。フィルムカメラとともに軽快に楽しんできました。
新宿からは中央線富士回遊号でまっしぐら。全席指定の特急のはずですが、途中からたくさんの観光客が座席未指定で溢れていました。何を隠そう私も指定席取れなかった組、慌てて駅で未指定券を買っての旅路です。下調べなしの影響が早速出てきました。良くも悪くも想定外を楽しむのが流儀。
終着付近の河口湖駅に近づくにつれぎゅうぎゅうのデッキからなんとか外にカメラを向ける人がちらほら、これからいくらでも見れるのは分かっているのですがその光景には抗えません。快晴の青空の下、真っ白な雪を湛えた富士山がいよいよお出ましです。
途中富士山駅で列車はスイッチバック。乗降のついでに慌てて写した写真もこれはこれで趣深いもの。
駅からの眺望も素晴らしいと言わざるを得ません。山梨県南都留郡富士河口湖町に位置するこの駅の周辺からは、いえ、この地域全域からは毎日この山が見えると言うことになります。当たり前だと笑われてしまいそうですが絶対ここに立てば思うことです。世界が、誰もが、憧れる景色ですから。
このままでは持っていったエクターが全て富士山に消えてしまいそうなので後ろ髪を引かれながら散策へ。
直前でああ言ったもののフィルムであれデジタルであれ感動している限りはひたすら好きなだけシャッターを切るべきです。と言うのも現像を終えてみれば思っていたより富士山の写真が少なかったから。フィルムならではの枚数マネジメントも大事ですが、同じものまみれの36枚も未来の自分からすれば素敵な思い出です。
駅に降り立って初めて歩く先を決めます。先々で気の赴くままにに変えるのでとりあえずのもの。
歩いているとすぐ目に入った看板を頼りに霜山の西端に取り付き、天上山護国神社という神社を通ってビュースポットと書かれた場所を目指します。
思い返せばこの選択が功を奏しました。まずは河口湖畔に降りて水辺を楽しんだあと眺望を探しに行こうと思っていたのですが。
よく整備された参道、もとい山道をつかつかと進むとこれまたよく整備された景観。これは来た甲斐がありました。思わず道すがらの中国からであろう観光客に「ここは見ておいた方がいい」とオススメしたほど。
人生でここまでちゃんと富士山を「望む」のは初めてです。眼前を埋める迫力もそうですが、地図が好きな自分からすれば大地が一点を目掛けて強く傾斜をしているその事実に圧倒されます。言うなれば巨大な坂道であり、頂上まで続くのはここからも地続きの大地なのです。
すっかり興奮して上へ上へ歩みを進めます。ちなみに荷物は少なめですが足元から頭の先までしっかり歩ける装備、何があるか分からない下見旅行の鉄則。
もうしばらく歩くと富士山の反対側に河口湖が覗きます。ついでにさっきから聞こえていたロープウェイの発信ベルの音が近づいてきました。どうやら「富士山パノラマロープウェイ」の山頂側の駅に続く道、正確に言えば本来ロープウェイで登った人が歩いて下ってみたい時に専ら使われるハイキングコースを登ってきたようです。良い景色が見られるのも納得。
富士見台駅というそうで、まさにその通りの眺望。しかし広大すぎる風景は思っているような感動を記録するのは難しく、林間を額縁にした写真を撮ることができたのはよい偶然でした。35mmと50mmは一見標準レンズの2台巨頭なので使いやすいと思われがちですが、その実使い分けにやや足りないような画角同士の組み合わせ。今回であれば35mmの代わりに28mmがあればもう少し広く撮ることが叶うでしょうし、逆に50mmの代わりに90mmや135mmがあれば富士山の山頂付近に寄った画作りをできたはずです。
ただこの35mmと50mmが肌に馴染んでいる人が多いのも事実。私の場合はこの2本であれば重くもなく標準域のバリエーションが広がるので重宝しています。
また次来るときは別のレンズも検討すればよいのです。
手荷物はこれだけ。
当店でも取り扱いのある「Leica ラムレザーポーチ」のMサイズに交換レンズとフィルムを2本。露出計はお守りとして首から提げて上着の内ポケットに入れていました。
このラムレザーポーチ、手触り、柔らかさ、質感が極上です。Mサイズは小さめのレンズを付けたM型カメラであればちょうど入る大きさ。LサイズであればミラーレスカメラのSLシリーズも入ってしまうほどの容量を誇ります。ご案内の際に一度本品に触れてから一目ぼれ。今回のように旅行にもおススメできる逸品なのです。
来た道を戻ってもいいのですが、せっかくなのでロープウェイで下ることに。
下山後、ようやく湖畔を散策して遅めの昼食をいただいたところで本旅行の目的は終了。行程だけ聞けば短いですが、これから何度も訪れることになるであろう河口湖旅行の第一陣として得られた感動は大きいものになりました。私にとってのこの下見旅行は具体的に何か情報を得たうえで次回を完成させることよりも、楽しかった記憶をもとに「また行きたい」というモチベーションを生むことに重きを置いています。フィルムカメラを選んだのもそのため。現地で撮れた写真を眺めて一喜一憂するよりは、現像するまで分からないまでも当日は気にせず歩き、楽しみ、その土地への興味を優先する事が出来るのです。
結果的に今回の写真のできも概ね納得がいくものでした。これでまた足を運びたくなるわけです。
帰路、ずっと気になっていた名所へ少しだけ寄ってみました。富士山駅からタクシーで15分ほど、雲がかかりつつある富士山を尻目に向かったのは「忍野八海」。関西の実家に住んでいたころから一度は行ってみたい憧れの地でしたが、上京してからなかなかタイミングや気候に恵まれず今まで先延ばしにしてしまっていたのでした。雲が増えつつありますがまだまだ日差しは健在。
ただこの一枚が撮りたくて。
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今度こそ本当に全行程を終えました。急ぎ足ではあったもののカメラを携えた旅の楽しさ、あとはフィルムの魅力もお伝えできていれば幸いです。
これからまだまだたくさんの「WITHIN 120K」が掲載されます。ライカと共に歩む旅、お楽しみください!
現在マップカメラでは「Leica Boutique MAPCAMERA Shinjuku」12周年を記念してフォトコンテストを実施しています。
ライカ製品以外のカメラで撮影した写真でも参加可能!ぜひみなさまの「旅」の写真をお待ちしております。