
皆さまにも、きっと「相棒」と呼べるカメラがあるかと思います。
自分のフィーリングに合致したもの。自分の作品撮りには必要不可欠なもの。はたまたカメラを始めた時から使っている最初の1台など。
例を挙げるとキリがありませんが、相棒と呼べるカメラとの出会いはそれまでの価値観を大きく変えてくれるものでしょう。
筆者も写真を始めて10年以上経ちますが、これまでデジタル・フィルム含め様々なカメラとの出会いと別れを繰り返してきました。
その中でも最も自分の価値観を変えてくれたカメラを挙げるとするなら、「FUJIFILM X-Pro3」でしょうか。
今回はそんな私の相棒を紹介する機会を頂きましたので、X-Pro3との出会いや、どう写真が変わったのかについて書き記していこうと思います。
どうぞお付き合いください。

X-Pro3との出会いは2024年の1月ごろ。
ちょうどこのカメラが生産終了になった頃合いでした。
それまではX-T3をメイン機としてスナップ撮影を主に撮っていましたが、以前からずっと頭の片隅にX-Pro3への憧れ、もしくは興味を持っていました。
生産終了の知らせを聞いた時には、ついぞ縁が無かったなぁと心の中で後悔の念が渦巻いたものです。
そんな中ふらっと立ち寄ったカメラ店で、見つけてしまったX-Pro3 DR シルバーの新品在庫。
今持っているカメラとレンズを下取りに出せば買えてしまう。本当はブラックが欲しかったけど、これを逃したら一生手に取るか分からない。
一度喫茶店に入って、コーヒー片手に1時間ほどでしょうか。悩みに悩みました。
帰り道。
気が付けば私の手には、新品のX-Pro3が迎え入れられていたのでした。

筆者にとって初めてのレンジファインダー機。
細かく言えば、Leicaの様に距離計が搭載されてはいないため、レンジファインダー機と言っていいのか微妙なところではありますが、それでも筆者にとっては初めての経験です。
フラットな軍幹部。綾目ローレットの切られたダイヤル類。ひんやりとしたチタンボディ。
少しゴールドが混ざったような独特なDRシルバーの色味。
素通しのガラスを覗くと見える、普段より少し広く感じる世界。
所々丸みを帯びたボディと、DRの少しざらついたような表面の質感。
シャキッと小気味いいシャッター音。
手に響くシャッターフィーリング。
五感で感じ取ることができるカメラというのは、フィルムからデジタルに移行した現代では少なくなってしまったのかもしれません。
こうした“モノ”としての魅力が、このカメラを選んでよかったと思わせてくれる要因のひとつです。
もちろんそれまでもカメラを買い替えた時には、新しい機能やデザインを気に入って愛でることは大いにありました。
しかし、最初に感じた魅力が、数年たった今でも色褪せないのはX-Pro3が初めてです。

余談ですが今回の紹介に当たって、3色全てのX-Pro3を撮影してみました。
隣の芝生は青く見える、ではないですが、やはり後ろ髪を引かれる思いが再燃してきてしまいます。


こちらはブラックカラー。
天面と底面はチタン製ですが、その上から光沢のあるブラックの塗装がされています。
DRバージョンにはない、使い込むことによる塗装剥げなどのエイジングが魅力の一つです。


こちらはDRブラック。
よくお客様に紹介する時は、ガンメタリックのような色という事が多いのですが、言い得て妙と思う様な佇まいです。
マウントアダプターを使ってTAKUMAR 55mm F1.8を付けてみましたが、どうでしょうか。
フィルム時代のレンズがここまで似合うデジタルカメラ、というのも珍しいものです。
話しを戻すと、筆者がX-Pro3を迎えてから2年弱が経ちました。
ここからは撮り貯めていた写真たちとともに、X-Pro3との歩みを振り返っていきます。

X-Pro3を手に入れて真っ先にハマったこと。それはOVFでのスナップでした。
手持ちのXF35mm F1.4 Rをボディに着けて、とにかく色々な所に出向き、シャッターを切る。
これまで通りの撮影なのに、なぜだかシャッターを押す指が軽く感じたのです。
なぜだろうと理由を考えていると、購入当時に思い悩んでいた「あること」の存在を思い出しました。

私がX-Pro3を手に入れた理由のひとつが、「写真を撮ることが億劫になってしまっていた自分を変えたかった」というものでした。
それまで使っていたX-T3に不満を抱いたことは無く、むしろ被写体をより魅力的に再現してくれる色表現が気に入っていました。
EVFを覗いた際に見える景色を、そのまま写真として切り取ることができる。
不便を感じることはありませんでした。
ただ、そのままを表現してくれるという事は、すなわち“自分の写真の腕を偽りなく写し返してくる”という事。
ある一時を境に、自分の撮った写真がとてもつまらなく思えてしまう、そんなスランプに陥ってしまったのです。

撮っても撮っても納得のいく写真が撮れない。
構図や色味、はたまた新しいレンズを試したり。
色々試行錯誤をしてみても、結局は撮る前に結果が見えてしまい、出来上がった写真に自分自身が驚きや感動を感じることができない。
贅沢な悩みです。
便利すぎるが故に、それに慣れてしまった私の眼は、出てくる画以上の「何か」を求めていました。

そんな時、ふと大学時代に撮ったフィルム写真のことを思い出します。
使っていたのはNikon FE2と50mm F1.4の単焦点レンズ。
当時は大学に暗室があったこともあり、日夜モノクロフィルムでの撮影にいそしんでいました。
露出をもっと上げてみようか、同じ被写体でも色々アプローチを変えてみようか、など。
毎日カメラを鞄に忍ばせて、撮影を終えたフィルムを手に、暗室での現像を楽しみにしていました。
あの頃感じていた自分の写真への期待や興奮は、デジタルになって久しく感じることは無かったと気付きます。

もっと不確実に、言ってしまえばよりアバウトに写真を楽しみたい。
いっそのこと、またフィルムカメラを買い戻そうかとも考えましたが、デジタルの利便性を手放すのも惜しく感じる。
そんな私に、X-Pro3というカメラはかつての期待や興奮をよみがえらせてくれました。
OVFでの撮影は、ブライトフレームで写る範囲に被写体を入れたとしても、視差が影響して完全なイメージ通りに撮れるわけではない。
AFや露出も、EVFで追い込むよりは幾分外してしまう事も多い。
そんな不確実性の溢れた撮影方法で、自分の思ってもみなかった写真が出てきた時の喜びはひとしおです。
ピントの外れた失敗写真でさえも、良いかもと思ってしまう。思わせてくれる。
自然と撮影に出たくなる。このカメラをもっと使っていたい。
こうしてスランプという長いトンネルから、X-Pro3が光ある場所へ連れ出してくれました。



長いトンネルから抜け出した私を待っていたのは、レンズ沼というぬかるみでした。
嬉しいことにX-Pro3はAF・MF問わず大小さまざまなレンズを着けても似合ってしまうルックスを持ち合わせています。
これまでもXマウントレンズを色々試してきた筆者でしたが、まだまだ浅瀬であったことを実感するのでした。



様々なレンズを試しながら、気付けば23mm(フルサイズ換算35mm)の画角で撮ることが多くなっていました。
X-Pro3のOVFは0.52倍の固定倍率。
それまでのX-Pro2では約0.6倍/0.36倍の可変倍率でしたが、ファインダーの見えの良さを重視した結果、固定倍率の採用が成されたそうです。
23mmのブライトフレームがちょうどすっぽりと収まるサイズ。
ファインダーを覗いて感じる心地よさは、そのまま撮影体験へとフィードバックされます。
もともと18mm(フルサイズ換算28mm)の画角を使用することが多かったのですが、ことX-Pro3に関しては23mmが私のスタンダードとして定着するのでした。


もちろん標準や中望遠のレンズも活躍します。
夜のスナップなどの場面ではAFレンズが、ボケの欲しい場面では大口径レンズが、X-Pro3を介して素晴らしい画を作り上げてくれます。
よくレンジファインダー機で大口径レンズや中望遠レンズを使用する際に、ピント合わせが難しいというデメリットを耳にすることがあります。
撮りたい画・使いたい画角とボディのミスマッチが、レンジファインダー機から一眼レフへ移り変わっていった理由の一つなのかもしれません。
ただし、X-Pro3にはこのミスマッチは当てはまりません。
OVFが不向きなレンズに対しては、EVFという第二の眼があるからです。
大口径レンズの繊細なピント合わせも、中望遠を使ったスナップショットも、一瞬しかないシャッターチャンスをみすみす逃したりはしません。
上で書いたことと矛盾しているように思えますが、筆者の感覚的にこの二つは同居し得ると感じています。
まるでフィルムとデジタル、2台のカメラを使い分けているような、そんな感覚です。



筆者は街角のスナップが主ですが、たまにお声をかけさせていただいてポートレートも撮影することがあります。
いきなり初対面の方にカメラを向けるわけにはいかないので、お相手と軽く談笑したり、興味を持ってもらった方にどんなものを撮っているのか見て頂いたり。
コミニュケーションを取るうえで、よく「それはフィルムカメラなの?」「かっこいいカメラだね」と声をかけて頂く事があります。
X-Pro3を含め、レンジファインダー機には親しみを覚えてくれる方が多い気がします。
それは写真を撮るうえでも効果的で、カメラを向けた時に威圧感を与えづらいのか、皆さん自然体で写ってくれるように感じています。
話の“タネ”になってくれるカメラ。それがX-Pro3というカメラの持つ不思議な魅力です。



このカメラを長く使い込んできて、気づいた魅力がもう一つ。
X-Pro3は意外と軽量であるという事です。
ボディのみで447g、バッテリー・カードを含んでも497gという軽さです。
海外旅行をする際に、リチウムイオンバッテリーを含む製品は手荷物10kgの中に含めなければいけません。
他にも荷物がある中で、カメラは文字通りかなりのウェイトを占めてしまいます。
出来るだけ軽くパッキングしなければならないときに、この軽さが活きてくるわけです。
筆者の場合、レンズを欲張って数本持って行ってしまったので差し引きマイナスでしたが、何度も訪れたことのある場所や、使うレンズが限られている方はその軽量さの恩恵を受けられる事でしょう。


旅行に行ったのは地中海の広がるヨーロッパの島国。
港の近くでは日が暮れるとレストランやバーの光で街が彩られます。
お洒落な街並み、異国の情緒あふれる雰囲気に、X-Pro3のスタイルは良く似合ってくれました。



旅行最終日、ちょっとしたハプニングに巻き込まれてしまいます。
観光地から空港に向かうはずのバスが、バッテリーが上がってしまったのです。
乗り込んだバスから降車し、帰れるかわからないと不安を募らせていたところ、他のバスの運転手の方が総出でエンジンのリスタートを手伝ってくれることになりました。
「押しがけ」と呼ばれるこの手法は、MT車が主流だった80年代の日本でも見られた光景であり、それが令和の時代になって見れることは貴重な体験だったのかもしれません。
とっさの出来事でもこうして写真に収めることができたのは、旅行中ずっと首から提げていても疲れることが無かったX-Pro3ならではの写真かと思います。

ここまでX-Pro3をスナップ機として使ってきましたが、実はこのカメラ、動体も撮影できてしまうのです。
レンジファインダー機なのに、スポーツファインダーモードまで搭載されています。
皆さんもメインの撮影とは別に、年に数回望遠レンズの出番がある方もいらっしゃるかと思います。
1台で何役もこなしてくれるカメラとなると、無骨なデザインやカメラ然としたものが多いところです。
こんなにクラシックな佇まいなのに、動体まで撮影できる。
なるべく1台でまとめたい私にとっては、願ったりかなったりでした。



X-Pro3と出会って、私の写真は確かに変わりました。
それは、技術的に上達したというわけではなく、また写真を楽しむことが出来るようになって、それが写真の中に感じられるようになったのです。
写真の楽しさを再認識させてくれる。
それだけでも、このカメラを使う理由になります。

今回はX-Pro3を実際に使用してきた筆者の生の声をお届けさせていただきました。
今もなお根強い人気を誇る本機種、私の様に前々から気になっていた方もいらっしゃるかと思います。
その背中を後押しできるような記事になっていたなら、筆者として嬉しいことはありません。
悩み抜いて辿り着いた先で、お待ちしております。
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