販売期間である1996年~2021年までのおよそ25年間に渡り、撮影者を魅了し続けた『Canon EF135mm F2L USM』。デジタルカメラが全盛期となる以前、フィルムカメラが主流だった頃に発売されたレンズではありますが、その描写力は古さを感じさせることはなく、寧ろ鮮やかな色乗りは思わず呼吸を止めて見とれてしまう程であり「紛れもない銘玉」との評価を今日まで獲得するに至ります。根強い愛好者も多くこのレンズに対する熱い思いを耳にしたのは一度や二度ではありません。その中でも特に記憶に残っている言葉は、曰く「時のフラッグシップ機『Canon EOS-1V』との組み合わせの写真がその時代の色であった」と。
『Canon EF135mm F2L USM』の使用用途と言えば最初に思い浮かぶのがポートレートですが、外に出て街撮りをするのにもなかなか相性が良いものです。レンズ本体の長さは約112mmと焦点距離が135mmということを考えれば思いの外にコンパクト。IS(レンズ内手ブレ補正)を持たない本レンズですが、ボディ内手ブレ補正機構を搭載した『Canon EOS R5』とマウントアダプターを介して組み合わせることで「ブレ」の心配から解放されて撮影をすることができました。その写りを是非ご覧ください。
日差しも程よく、春の代名詞とも言える桜の優しくもはっきりとした色彩がとても鮮やかです。あくまでも自然でなだらかに写るこのボケ味に触れることができたなら、きっとその両手には甘美たる感触が永劫に記憶されるのではないでしょうか。その様に想像してしまえるくらいに美しいボケ味でした。
壁に寄りかかっている和傘。その内側の骨組みの細かさやまでも写し出します。背景のボケから浮き出てくる写りは強烈な印象を残し、使い込んで行く内に解像度や立体感が桁違いに素晴らしいレンズだと実感せずにはいられません。
F値を絞るとシャープな質感が際立ちます。画面いっぱいに敷き詰められた花々は豊かな色で満ち溢れ何とも華やか。最短撮影距離は0.9mと決して被写体に寄れる訳ではありませんが、自分が写したい場所を主張してくれる画作りとなります。花の中心の細かな箇所まで綺麗に写し出してくれました。
太陽の光に照らされている建物をハイキー寄りにして撮りました。優し気な光は煩わしくなることはありません。本来ならば開放F値で撮るような被写体ではありませんが使い勝手の良さ故に積極的に使用したくなります。隙間を塗りつくす空の色もすっきりと落ち着いた階調に仕上がりました。
陽の落ちる時間帯でも昼間の暖かさが残っている季節になってきました。光が微かに辺りを照らし、背景がぼんやりとシルエット状へ変わるこの時間帯は劇的で、思わず神妙な面で写真を撮り続けます。雲が暮れる夕陽を大切に抱えながら撫でているようにも見える目の前の風景を写真におさめつつ、この場所から離れる名残惜しさを感じていました。
『Canon EF135mm F2L USM』と『Canon EOS R5』の組み合わせは同じCanon同士ということもあり何とも自然に収まるフォルム。装着したあとのバランスも良く、構えた時に何の違和感もなく撮影に集中することができます。レンズの主役がEFマウントからRFマウントへと移り変わって行く中であってもその描写力に不足するところは一切なく、撮影した写真に只々感嘆の声をあげるばかりでした。銘玉は銘玉のままに語り継がれ、これからもその写りに魅了される人が増え続けるのではないでしょうか。決して色褪せることがない『Canon EF135mm F2L USM』。多くの方に本レンズの魅力を是非とも実感していただきたいと思います。