
メーカーブランドのイメージ刷新を伴う鮮烈なデビューを遂げた『SIGMA BF』、既に手にされた方も多くいらっしゃると思います。2025年2月の発表当時はメインシステムがライカ一色だった私もその衝撃を画面越しに浴びたとともに、「このカメラを知らずして人生は歩めまい」と漠然とした決意をその心に燃やしたのでありました。
見た目、佇まい、在り方。
存在そのものが新鮮であり受け入れるのに精いっぱいでありながら、やはりカメラ好きそしてライカ好きとして抱く期待はMマウントレンズとの相性。幸いなことにLマウントアライアンスに参画するカメラメーカーとしてSIGMA BFはfpシリーズ同様ライカSLマウントで登場します。つまりマウントアダプターも既にこの世に多く出回っており選び放題ということ。今回は悩みに悩んだブラックカラーの『SIGMA BF』に『URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310』を介して『Leica Summicron C40mmF2』を装着して撮影してきました。このレンズが好きであることももちろん選定理由の一つですが、やはり今回に関しては見た目を気にして決めた装備。限りなくシンプルかつ色の近いアダプターと、コンパクトなボディに違和感のないコンパクトなレンズを選びました。選び抜いた自慢の黒が右手で踊ります。
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード FOV B.
『SIGMA BF』の第一と言っても過言ではない魅力である「カラーモード」の数々。特に私の好みに合っていたのは【SUN R.(サンセットレッド)】で、明るい部分はやや暖色に傾き、影が強く緑色になります。暗いところで撮影すると全体的な印象は暗くなりがちですが、その名の通り夕日などの明るい環境下ではシャドウの青味がネガフィルムのような味わい。シチュエーションによってコロコロと小気味よいダイヤルを回しながらその環境に合ったカラーモードを選択できるのは非常に強みであると言えるでしょう。【FOV B.(フォビオンクラシックブルー)】はSIGMAの代名詞ともいえるFOVEONX3センサー独特の色味を再現したものです。Merrill(メリル)シリーズをかつて使用することが多かった私としてはこのカラーモードがBFに採用されることに大きな喜びを感じるとともに、使ってみていよいよ実感する“フォビオンらしさ”に安心感を覚えています。
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード CALM
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード MONO
【MONO(モノクローム)】も大変良い仕上がり。カメラによっては彩度の設定項目でモノクロを選ばなければいけなかったり、モノクロモードだけでいくつか種類があって迷ってしまうこともありますがBFはカラーモード選択の一番最後の項目がこの【MONO】です。
このおかげで直感的かつほしい時にさっとモノクロ写真が撮れるということも実は見落としがちな良さ。カメラノールックでダイヤルを回しきるだけでモノクロに変えられるカメラ、実はとても珍しいのです。
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード SUN R.
夏至に近い早朝の強烈な朝日で意地悪な逆光撮影。
『Leica Summicron C40mmF2』はライカCL用に販売されたコンパクトかつ珍しい40mmのMマウントレンズです。極端に逆光に弱かったり、コーティングが効かないイメージのレンズではありませんが流石にこの環境では盛大なレンズフレアが。
敢えてピントを外して「フレアを見る」もとい「レンズを見る」とも言えるような表現に仕上げました。オールドレンズならではの特色とカラーモードが掛け合わさるだけでも無限に楽しめるというのに見た目もいい。
この贅沢を知ってしまうと『SIGMA BF』×オールドレンズの虜になること間違いなし。
同時期に販売された『MINOLTA Rokkor 40mmF2』というレンズも同じくMマウントの同スペックレンズです。
『Leica Summicron C40mmF2』がLeica CL用であるのに対してMINOLTA CLE用に発売されました。見た目はほとんど同じなので同じく『SIGMA BF』に合うこと間違いなし。お値段も比較的リーズナブルであることがほとんどなのでオールドレンズデビューにもおすすめです。
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード RICH
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード RICH
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード RICH
fp世代から続くもう一つの魅力が横長「21:9」のアスペクト比。
カラーモード【RICH(リッチ)】と組み合わせて夕方の瀬戸内海を組写真風に鑑賞します。
3:2フルサイズとは違った整理された画をいくつか眺めると瞬きのようにも感じ、情報量は減っているにもかかわらずその情景を脳が強く補完することによって土地の雰囲気に引き込まれる錯覚。
あえてフルサイズから上下を切ったことで没入感のある効果が生まれます。かつてフィルムカメラで上下をクロップして疑似パノラマ、なんて言っていたのが懐かしいですが「疑似」と言うような偽物感はここにはありません。
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード SUN R.
物撮りも十分にこなします。
自分のカメラを撮ることは多いですがここまで快適かつ直感的に撮影できたのは初めてかもしれません。それもデザイン重視で選んだマウントアダプターを使用したため、クローズフォーカス機構のない状態、つまり『Leica Summicron C40mmF2』本来の最短焦点距離である80cmで撮影したのに、です。
裏を返せばマウントアダプター選び次第でもっと近接撮影ができるということ。デザインも大事ですがそういったアダプターの採用も今後視野に入れたいと思います。
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード SUN R.
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード SUN R.
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード SUN R.
これだけ味の濃いカラーモードで撮影しても当然RAWに戻せば通常の色に戻すこともできます。
写真を撮るうえで大切なのは何よりモチベーション。かっこよくて持ち出したくなるフォルムと、カラーモードのおかげでなんだって画にしてしまう力があれば目に映る景色全てを作品にする準備が出来ました。忘れたころに思い出してほかのカラーモードを当てることもできれば、RAWから自分好みのプロファイルを当ててもう一度解釈を変えることだって思いのままに。何よりも撮っていなければ始まらないこの写真たち。ぜひこのカメラで、オールドレンズと共に築いてみてください。撮る衝動を掻き立てる感動が、未来の自分を育てます。

絞り:F2 / シャッタースピード:1/25600秒 / ISO:320
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード MONO
使用機材:SIGMA BF + URTH マウントアダプター ライカMレンズ/ライカSL・TLボディ用 UR-6310 + Leica ズミクロン C40mm F2 カラーモード MONO
シャッターを切るたびにすごいものがこの手の中にあると感じさせる作りの良さ。
撮影体験に特化したコンセプトを持つカメラですが、オールドレンズと組み合わせて使うことによりスペックには表れない化学反応を強く感じました。
偶然所有しているレンズが取り付け指標を欠損しており外観はほぼ黒一色。
シルバーのアイコニックな見た目も素敵で大変迷いましたが、これから多くのレンズを装着するにあたりブラックボディのレンズ汎用性には期待をよせています。
機能を大胆に削ぎ落しどこか浮世離れしたカメラと、マニュアルフォーカスのライカオールドレンズ。カラーモードやアスペクト比で自由自在に表現を楽しみながら、滲みを伴った柔らかな描写と40mmという50にも35にもとらわれない写りを味わうことができる良い組み合わせでした。仮に同じ機材を使っても写る世界は十人十色。ぜひあなた自身の作品を見つけてみてください。
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